文様のふ・し・ぎ 28 傘

文様のふ・し・ぎ

 

 

 

シトシト、 シトシト、窓の向こうは雨模様。部屋の中で雨の気配を感じながらお茶 や読書の時間というのは案外といいものだけれど、用事があっていざ出かけなければならなくなると途端に気が重くなる。雨脚が強くなってくればなおさらの事、着ているものや足元、手にするバッグも濡れないようにと、あれこれ気を使う。でも、そんなどんよりとした私の気持ちを、一本のお気に入りの傘にいつもグンと引き上 げてもらっている。

  その傘は、傘の生地や持ち手を幾つかのサンプルから悩みに悩んで選び、 セミオーダーしたもの。名前まで れてもらい、 うっかり者の私でも置き忘れることなく、 この数年使い続 けている。傘を広 げるとパッと青空が広がるような青い生地。雨降る町を見渡せば、黄色やピンク、様々な色や模様の花が咲いて、鼻歌まじりに心が躍る。

文=長谷川ちえ   エッセイスト、器と生活道具の店「in-kyo」店主。福島・三春町の自然や行事、暮らしの様子を二十四節気の季節の流れに沿って綴(つづ)ったエッセー『三春タイムズ』(信陽堂)が発売中。挿画は素描家・shunshun。


イラスト=山本祐布子

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