文様のふ・し・ぎ 29  柿

文様のふ・し・ぎ

 ここ数年、自家製の干柿を作っている。そもそもは義祖母から渋柿をもらったことが始まりで、見よう見まねで作ったものの、素人ながら味の出来が良かったことに気を良くしたのが始まり。自家製などというと大袈裟になってしまうが、なんてことはない。材料となる柿さえあれば、皮を剝むいて渋を抜き、残した枝にヒモを引っ掛けて吊つるせば良いだけのこと。あとは秋の乾いた空気と太陽の恵み、時間が味を育ててくれるのだ。立派な贈答用の干柿とは比べものにならないが、親しみのある顔をした普段のお茶請け。それでもおやつの時間にこのしみじみとした美味しさがあるだけで、たっぷりとした心地がする。

 ご近所の庭先で、ピカピカの柿がたわわに実っているのを見かけるだけで、なんとも言えない豊かな気持ちになるのは、そのためかもしれない。

 

 

 

文=長谷川ちえ   エッセイスト、器と生活道具の店「in-kyo」店主。福島・三春町の自然や行事、暮らしの様子を二十四節気の季節の流れに沿って綴(つづ)ったエッセー『三春タイムズ』(信陽堂)が発売中。挿画は素描家・shunshun。


イラスト=山本祐布子

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