文様のふ・し・ぎ 26 松葉

『七緒vol.64』 文様のふ・し・ぎ  松葉

 今の自宅の庭には、松の木がある。 その木は我が家で植えたものではなく、 前の住人が植えたもの。日当たりが良 く、部屋の中からも見える場所にあり、 前の主人が気に入っていたであろうこ とがうかがえる。引き継ぐ心づもりで 松の木はそのまま残すことにした。
寒くなると、山の木々や庭の草木は 冬枯れの景色に包まれる。そんな中、 松の木だけは鮮やかな緑を見せてくれる。うっすらと降り積もった雪をまと しずくった姿、またその雪の解けた雫が松の 葉先できらきらと輝く様子も美しい。
庭先から松の枝先を1〜2本切って、 いさっと花器に活ける。それだけでも簡 単な正月飾りが出来上がる。また友人 へのお年始の包みに松葉を添えれば、 ほんの少し改まったかたちに。
新たな年には、生き生きとした松葉 のように、ぴんと背筋を伸ばして始ま りの一歩を踏み出したい。

文=長谷川ちえ   エッセイスト、器と生活道具の店「in-kyo」店主。情報発信サービス「note」にて福島・三春町の行事や暮らしの様子を二十四節気に沿って執筆中。
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イラスト=山本祐布子

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