文様のふ・し・ぎ 38 玩具づくし

文様のふ・し・ぎ  玩具づくし

  私が暮らしている福島県三春町では、毎年小正月の頃になると三春だるま市が開かれ、町の冬の風物詩ともなっている。だるま市では、だるまをはじめ、縁起物の干支の張り子人形や小正月飾り、三春駒と呼ばれる木製の郷土玩具の作り手の露店がズラリと軒を連ね、賑わいを見せる。

 一見同じように見えるだるまでも、店によって表情や色合い、仕上がりに違いがあり、客は作り手と会話を交わすことを楽しみながら、それぞれ好みや贔屓にしている店から「これぞ」というひとつを選び出す。その傍らでは屋台のたこ焼きや綿菓子をせがむ子どもたち。その風景も微笑ましい。縁起物を手に、福福とした表情で町を歩く人々の姿は、見ているこちらまで幸せな気持ちにさせてくれる。ささやかなお礼に、子どもたちの健やかな成長を心から祈りたい。

文=長谷川ちえ エッセイスト、器と生活道具の店「in-kyo」店主。2023年12月8日(金) ~17日(日)には漆作家・宮下智吉さんの個展「家族の漆」を開催。詳細はInstagram@miharuno.inkyoにて。


イラスト=山本祐布子

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