文様のふ・し・ぎ 10 南天

南天

 南天が「難を転ずる」語呂から縁起のいいものとされていることはご存じの方
も多いだろう。
 縁起ものや厄よけとして松などとともにお正月の生け花として玄関や床の間に飾ったり、庭木として植栽しているお宅もよく見かける。
 果実、葉、茎、根はいずれも薬用として使われ、特に果実には咳を鎮める作用があることから、南天を成分に含んだのど飴も多くある。またお赤飯に南天の葉を添える習わしは、単に彩りや縁起ものとしてだけではなく、葉に解毒や殺菌、防腐作用があることから採り入れた先人の知恵。
 語呂だけではなく、その薬効にちなんで文様の世界でも吉祥文として採り入れられるようになった南天。一年の中でもちょうど寒さが厳しくなるころ、色彩の少ない季節に鮮やかな赤い実がポッと色づくように、着物や帯にも彩りと華やかさを添えてくれる。

 

 

 【南天文様】

赤い実が、竹や松のお正月飾りにひときわ映える、南天。古くから「難転」の縁起木とされ、江戸時代には、「火災よけ」「魔よけ」として、多くの家の庭に植えられていたとか。着物や帯のモチーフに使われることも多く、新春はもちろん、お祝いの席にも。

 

 

文=長谷川ちえ
エッセイスト、エッセイスト、器と生活道具の店「in-kyo」店主。移転先の福島県三春町は歴史のある寺院も多く町歩きが楽しい。http://in-kyo.net/


イラスト=山本祐布子

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