新　手仕事ニッポン20

あたりまえの中の新しいかたち。

朝起きて、歯を磨いて顔を洗い、やかんを火にかける。たとえばこの日常の１コマには、歯ブラシ、コップ、タオルにやかん、計４つの道具が登場する。これらはすべて、いつか誰かがデザインした〝もの〟。有名無名かかわらず、私たちはデザインに埋もれて暮らしている──。
なぜそんなことを感慨深く思ったかといえば、今回のテーマが、アイスを買ったらもれなく付いてくる、あの、木ベラだから。ゼロ円にして世代を超えて認知されたデザイン。アノニマスの極みにして、よくよく見たらチャーミング！　この愛すべき恒久的デザインに、京の伝統工芸の手技を落としこもうと考えたのが、京都造形芸術大学でデザインを学んでいた学生さんと聞いて驚いた。卒業制作として、職人探しから始まったものづくり。京金網の技術で編んだもの、白樺材の上に漆を施したもの、銅板に神社仏閣の装飾技術・錺（かざり）金具の模様を施し銀メッキで仕上げた３種類は、卒業後にプロジェクトとして後輩へ受け継がれ、３種のうち後の２つが「ＩＣＥ ＣＲＥＡＭ ＧＩＦＴ」という名で販売された。
世の中に、ものがデザインが溢（あふ）れている今。いつのまにかなんとなく集まってきたものに溺れてしまう時代に、単なる伝統、用の美とも一線を画し、しかもクスリと笑える、思いっきり振り切れた道具に出合うと心が弾む。このスプーンでアイスをすくえば間違いなく笑顔になるし、心が豊かになる。それこそがデザイン、手仕事の真骨頂と思うのだ。

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「伝統工芸のICE CREAM GIFT」　京都造形芸術大学、「KYOTO T５（京都伝統文化イノベーション研究センター）」、Made in Kyotoのものづくりをデザインを通して発信する「Whole Love Kyoto®」が連携して生まれた「ICE CREAM GIFT」。アイスクリームスプーンという不変の形に京の手仕事をほどこし、伝統工芸の存在を幅広い年代に伝えていくプロジェクトは現在進行形で、黒紋付き（黒染め）や京友禅の手技など、プロダクトが増えつつある。漆（朱・黒）セット8640円、錺金具（文様２種）セット5940円。「Whole Love Kyoto®」 https://wholelovekyoto.jp//