文様のふ・し・ぎ 45 紅葉

文様のふ・し・ぎ  紅葉

自宅は古い平屋を改装して住んでいる。窓の向こうには小さな庭が見渡せて、気に入った植物をちまちまと植えて庭づくりを楽しんでいる。前の住人が育てていたのであろう樹木。いくつか残したそれらは軸のような役目になっていて、そのうちのひとつに紅葉の木がある。いや、ひとつというよりも今やシンボルツリーのように、玄関先でのびのびと枝葉を伸ばしている。

「イロハモミジ」という名前も、その種がプロペラのようなかたちをしていることも、ここで暮らすようになってから知ったこと。一年を通して葉の色は赤い品種だが、その色は秋が深まるにつれ鮮やかさを増していく。澄んだ秋晴れの空とのコントラストは、それはそれは見事なもの。

陽(ひ)に透けた紅葉を見上げながら、先人も同じ景色を見ていたのかと思うと不思議な気持ちになる。そして毎年訪れるこの美しさは、未来へと引き継がれる贈り物なのだろうと思いを巡らしている。

文=長谷川ちえ エッセイスト、福島県三春町にて器と生活用具の店「in-kyo」を営む。2025年9月12~21日には、革作家・曽田 耕さんの個展を開催予定。詳細はInstagram@miharuno.inkyoにて。

イラスト=山本祐布子

構成=雨宮みずほ

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