まるで「ミクロの決死圏」!3Dで体内ツアーができるアプリ

小学生のママに知ってほしいiPad勉強アプリ【第10回】 神戸大学 杉本 真樹 先生

VRの技術を使って人体の内部を巡るツアーを擬似体験
選択できるモデルは2種類。頭部と胴体のツアーが用意されている
加速度センサーで360度自由に視点を変更。VRモードなら没入感に浸れる
VRゴーグル(写真はGoogle Cardboard)をつけて見ると大迫力。 「お~すごい!」と子供も驚く。

「ウチにiPadはあるのだけど、ゲームとYouTubeにしか使ってくれなくて……」そんな悩みはありませんか?  せっかく買ったiPad、遊びだけでなく勉強にも使ってほしい!そんなママたちのために、家庭でも使えるイチオシのiPadアプリをご紹介。紹介してくれるのは、学校や塾、専門スクールなど、教育現場でiPadを活用した学びに取り組んでいる9人の先生(iTeachers)たち。お子さんが自分から学ぶ姿が見られるようになるかもしれません。 

「VR(バーチャルリアリティ)」という言葉、聞いたことありますか。日本語にすると「仮想現実」。コンピューターの中に作られた世界を擬似体験できる技術のこと。「ああ、大きなゴーグルみたいなのを付けてやるアトラクションゲームのことでしょ?」なんて反応が返ってきそうですが、医療や教育などさまざまな分野での活用が注目されています。ということで、今回はそんな話題の「VR(仮想現実)」の技術を使って、人体の神秘に触れられるアプリをご紹介します。

VR Body Guide(無料)

このアプリを推薦してくれたのは神戸大学の杉本真樹医学博士。外科医として手術でiPadやプロジェクションマッピング、VRや3Dプリンターなどを先駆的に利用する研究開発に取り組んでいます。Appleのウェブサイトに紹介されたこともあり、最新のテクノロジーを医療現場で積極的に活用しています。

実は、杉本先生はこの「VR Body Guide」を企画・開発したメンバーの1人。「感受性豊かな若いうちに、最も身近な科学である『人体』の神秘に触れることで、人の命を考えるきっかけになれば」という思いからこのアプリを開発したそうです。「実際の人の体をCT撮影した本物の医療用データが、立体的に体験できます。なかなか見られない貴重なものなのでぜひ親子で一緒に体感して楽しんでください」(杉本先生)。それでは実際にアプリの中身を覗いてみましょう。

アプリを起動すると、まず「Mono(一眼)」モードと「VR(仮想現実)」モードを選択する画面が表示されます。VRモードを体験するためにはVR用のゴーグルが必要になります。ゴーグルを持っていない場合「Mono」モードを選択しましょう。

鑑賞することができるモデルは「頭部」と「胴体」の2種類。頭部は脳、頭蓋骨、皮膚を、胴体は、心臓、骨、皮膚をそれぞれの表示がON/OFFできるようになっています。例えば、頭部を見るなら脳と頭蓋骨など好きな組み合わせを選んだら、右上の「view」ボタンをタップ。これから体内ツアーのスタートです。ツアーが始まると、ゆっくりと頭部や胴体に近づいてきます。目の前に迫ってきたかと思うと、やがて頭部や胴体の中に自分自身が入り込み、視点がゆっくり上がり、次に下っていきます。その間、iPadを上下左右にかざすと、画面も連動して360度自由自在に眺める方向を変えることができます。心臓の細部、背骨や肋骨の間などリアリティのある画像がはっきりと見えます。

このアプリをより楽しむためには、VR用のゴーグルを用意して「VR(仮想現実)」モードで見てみることをオススメします。iPhoneを固定したゴーグルを装着して「view」ボタンをタップすれば、目の前に体が迫ってきます。「ミクロの決死圏」というSF映画がありましたが、まるでその映画のように、小さくなった自分が体内に入り込んで浮遊しているような感覚です。VRゴーグルは市販されている汎用品でOK。「Google Cardboard」(段ボール製VR用ゴーグル)のなどの簡易的なものであれば1,000~2,000円で購入できます。100円ショップで買える材料で作る方法もあるので、親子で一緒にゴーグル作りから始めてみてもおもしろいかもしれませんね。

■ VRゴーグルのつくり方の例

なお、このアプリには臓器の名称など文字情報は入っていません。「あそんでまなべる 人体模型パズル」のような人体模型アプリも一緒に遊ぶと、さらに子供の興味関心を学習へとつなげることができます。

さて、これまで10回に渡り、子供たちの学びにつながるiPadアプリをご紹介してきました本連載もこれが最終回。ご家庭で使えそうなアプリは見つかりましたでしょうか。

スマホやタブレットにPC、デジタルネイティブと呼ばれる子供たちは、上手に使いこなしているように見えますが、安全かつ有効に使えるかというと決してそんなことはありません。自転車の乗り方を覚えるのと同様、親がサポートしながら少しずつ練習を積んでいく必要があります。「危険だから使わせない」ではなく、「好きなように使わせる」でもない。親子で一緒に、子供にあった安全な使い方を探していくことが大切なのではないでしょうか。ぜひ、本連載でご紹介したアプリやその活用法を実践する中で、iPadをはじめとするICTとのうまい付き合い方を親子で見つけていっていただけたらと思います。

 

【iTeachersプロフィール】

杉本 真樹 先生

医師、医学博士。帝京大学病院外科、国立病院東京医療センター外科、帝京大学大学院医学研究科、米国退役軍人局パロアルト病院を経て、現在神戸大学大学院医学研究科特務准教授。日本外科学会専門医。Team 医療3.0 共同発起人。iTeachers共同発起人。著書に『医療現場 iPad 実践ガイド』『OsiriX画像処理パーフェクトガイド 最新版』『医療者•研究者を動かすインセンティブプレゼンテーション』『医用画像3Dモデリング・3Dプリンター活用実践ガイド』など。

【筆者プロフィール】

小池  幸司 (教育ICTコンサルタント / 学習塾 俊英館)

2011年3月、他の学習塾に先駆けてiPad導入を実現。教育現場におけるICTの導入・活用を推進すべく、講演や執筆活動を通じて自社のiPad導入事例やノウハウを発信。2013年3月にはiPad×教育をテーマにした初の実践的書籍「iPad教育活用 7つの秘訣」をプロデュース。iTeachers発起人。

タブレットや電子黒板といったICT機器をうまく活用することで、学校をはじめとする教育機関でも“新しい学び”が広まりつつあります。iTeachers TVはそんな教育現場のいまをお届けする教育ICT情報番組。先生や生徒、教育関係者をゲストに招き、その実践や取り組みをプレゼンテーション形式でご紹介します。番組は毎週水曜日の夜にYouTubeで配信。ぜひチャンネル登録をしてご覧ください。