文様のふ・し・ぎ 39 つくし

文様のふ・し・ぎ  つくし

 寒さが厳しい土地に暮らすようになってから春の訪れが特別なものとなっている。梅、桃、桜が咲き誇り、どこまでもふわふわと淡くやわらかな景色には、何年経(た)っても初めて目にした時と同じように心奪われている。

 そんな私を「ねぇねぇこっちも見てよ」といわんばかりに呼び止めるのが、つくしの群生。いつの間に育ったのだろうと不思議に思うほど、成長の早さには目覚ましいものがある。漢字で「土筆」と書く通り、土の中から真っすぐに筆のような形をした頭をのぞかせて、はかまはまるで衣裳のよう。その姿はユーモラスでもあり、どこか楽し気。つられて私の口元はつい緩んでしまうのだ。

 真新しい春の光を纏(まと)うつくし。春になってそわそわと浮き足立ってしまうのは、懸命に生きる姿から、生命力溢(あふ)れるエネルギーを与えてもらっているからなのかもしれない。

文=長谷川ちえ エッセイスト、器と生活同具の店、「in-kyo」店主。2024年4月には陶芸家・くまがいのぞみさんの個展を開催予定。詳細や日々の様子はInstagram @miharuno.inkyoにて。


イラスト=山本祐布子

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