「麻布は中・高を飛ばして大学生になる感じです」

「中高一貫校に入学後の学校の様子が知りたい!」という読者の声に答えて、有名中高一貫校の卒業生に中高の話を聞くコーナーを作りました。第2回は、東京・広尾にある麻布。中学受験において、開成、武蔵と合わせて男子御三家と言われ、超難関の中学の1つです。 

現在、東大の2年生のBくん(2012年卒業)は音楽関係のサークルに所属しており、東大生らしからぬいまどきの若者の雰囲気。彼に自由な校風と言われる麻布の“自由”の中身について聞きました。

 

――麻布といえば、とにかく自由な校風と聞きますが、同級生にはどんな子が多かったですか?

「麻布は茶髪の先輩が入学式に入ってきたり、すごく自由というイメージを持たれますが6割の生徒はわりと真面目で、オタクっぽい人が多いです。そして3割が目立っていてやんちゃな感じで、いわゆる麻布らしさを作っている生徒です。このグループが、文化祭とか運動会とか行事に積極的に参加しています。残り1割は、変わっているというか、数学とか物理とかの数式を一日中考えているような天才タイプ。いろいろな人がいますが、全体的には精神年齢が高いというか、自分の意見を持っていてそれを表現できるような人が多いですね」

 

――制服も校則もないって聞きますが、実際の学校の様子は? 入学前後でイメージは違うところはあった? 

「聞いていたイメージそのままでした。校則はほとんどありません。バイク登校とアルバイトに賭け事、ゲタでの登校は禁止とか。麻布に入学すると、中学生や高校生を飛ばしていきなり大学生になっちゃう感じなんですよ。部活も生徒主体だから、大学のサークルみたいな感覚で運営しています。部活や文化祭、運動会などの学校行事は高校2年生が中心になって行われます。高3は行事にも参加しますが、OBという立場で関わる感じなので、高2が中高のメインの世代なんです。一番、自由にやっていた高2のときは、僕もカラオケでオール(一晩中歌う)したり、友達のうちに泊まったりして家に数日帰らなかったり、振り返ると大学生みたいな生活をしていました」

 

――学力面でのサポートは? 通塾率はどのくらい? 

「僕の学年は塾に通い始めるタイミングはだいたい2つあって、中1と高1でした。東大を目指している人は多いので、6割くらいは中1で数学や英語の塾に通っていた気がします。中には中1から鉄緑会(*)に入る人もいます。鉄緑会は定員があるので、埋まってしまうと後から入れないので、早めに入っておこうという人がいるんです。僕は鉄緑会ではない塾に、英語と数学の塾に中1から入っていました。僕のイメージだと、高1から塾に入る人は3割、残りの1割くらいが高2で塾に入ります。実際には部活や文化祭、運動会などの行事が終わる高2の秋から本気で受験勉強をする人が多いです」

 *東京・代々木にある東大や国公立大医学部など超難関大学を目指す中高一貫校生のための塾。

 

――学校の先生は熱心に指導してくれる? 自由な雰囲気なので進学指導もあまりしないかな?

「先生は生徒のよき理解者として精神面で支えてくれる感じでした。大学受験に直結しているという感じではないのですが、例えば、国語なら文学の読み解き方を教えてくれたり、面白い授業をしてくれる先生が多いです。進学相談にはきちんとのってくれます。高1の終わりか高2のはじめに志望校調査があって、『このままの成績だと厳しいな』とか『このまま頑張れば大丈夫』などアドバイスをしてくれます。それから、校内の実力テストがあって、大学合否の結果と相関関係があるんですよ。校内のテストで40位以内にいれば現役で東大に行けるといった具合で。特に皆が受験体制になる、高2の冬以降の実力テストで大学受験での自分の学力が分かる感じです。文系と理系の割合はだいたい3:4でした。浪人する人は多くて、僕らの学年は半数近くが浪人だったと思います。僕も文化祭や運動会からの切り替えがうまく行かなくて、1年間浪人しました。浪人生時代も予備校の帰りに高校の先生に相談しに行ったり、麻布の7年生という感じでしたね。僕も『浪人生活つらいです』みたいな相談をしに行きましたし、浪人時代も麻布の先生に支えられました」

 

――名物行事とか有名な部活はありましたか?

「春の文化祭と秋の運動会です。文化祭はミスター、ミス麻布コンテストが特に盛り上がります。運動会も文化祭も生徒は参加が自由なんです。だから参加しているのは、冒頭の3割のやんちゃなグループがメイン。運動会なんて、オタク系というか運動会にあまり興味のない人たちは参加せずに秋葉原に出かけちゃうんです。運動会はクラス対抗なので、オタク系の人が多いクラスは参加者が少なくて騎馬戦とかでも負けちゃうし、参加者が多いクラスは勝ちます。だからやる前から参加者の人数がわかるので勝敗がわかるんですよ(笑)。合宿とか山登りとか男子校によくある精神を鍛えるイベントはないですね。毎年11月にファミリーコンサートというのがあって、生徒と保護者が参加するイベントがあります。生徒はバンドを組んで演奏したり。お母さん合唱団が歌を歌ったり。男子高校生の気持ちとしては母親が学校で合唱するのは複雑な気持ちでしたよ。部活は、オセロと将棋が強くて有名でした。運動部はあまり強くはないです」

 

学校生活にはほとんど規則はないものの、前回の女子学院に比べ、大学受験を見据えた実力テストがあったり、生徒の進路指導や進路相談にはきちんと対応しているとのこと。麻布の設立は1895年。Bくんは「今の麻布は、僕の中高時代よりは厳しくなって、少し雰囲気が変わっているかもしれない」とはいうものの、100年以上続いてきた自由さはこれからも大きくは変わらないだろうと感じました。

 

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