2008年4月15日
第372回 格差とプライド
「正社員と非正社員の給与を一緒に計算すると平均給与が下がり、求人活動に支障が出てしまう」という声を、ここ数年取材先で何度も聞いた。各々を別個に算出する企業も目立っている。数少ない正社員のみで算出した平均給与だけ公表しているところもある。世間は「格差」に慣れてきたのだろうか。
職場を何度か替え、正社員と非正社員を交互に経験した筆者は、そうした「社内格差」の上と下を行ったり来たりしてきた。正社員だった期間は短かったが、ビジネスの作法やしきたり、組織内の人間関係など、フリーランスではできない貴重な体験を得ることができた。
ただ、そんなことがどうでもよくなる「格差」の世界があることも知った。中途で入ったとある会社では、内定直前だったか直後だったか、猫なで声の総務担当者に「契約社員は能力給だから、正社員より貰える可能性がある。夢があるよお~」と再三勧められた。アヤシい迫力にたじろぎつつ、「いやー正社員でいいですわ」と笑顔で突っ張り、押し切った。
しかし「オレは騙されない」と胸を張るのは早計だった。その年の暮れに渡された給与明細の小さな一欄に、2万円少々の金額が印字してあった。愚妻とともに、はて何を天引きされたのかと首を傾げた。どうやらボーナスの金額らしいと判明したときは、しばらく笑いが止まらなかった。
同社は社員の高い回転率を誇り、当時話題となった「年収300万時代」のはるか先を疾駆していた。同僚の半数が健康診断の「要再検査」をゲットするなど労働環境も抜群だった。正直、ここより「格下」は考えられなかった。プライドという単語が脳裏で明滅した。運よくここを脱出できた筆者だが、同僚たちとの仲間意識は消えず、しばらくは頻繁に連絡を取り合ったり、一緒に飲んだりしていた。
今年、同社は吸収合併され、相手先の一事業部門と化した。そのニュースを耳にしたとき、元同僚たちの顔がいくつか浮かんだ。同時に湧いてきた複雑な感情を、筆者はまだうまく説明できない。
「自分は社会のどの辺か」は、ビジネスマンのプライドに直結する。給与金額は、その「どの辺か」を端的に測るモノサシだ。最新号の特集「給料格差 新・図鑑」では、あなたの会社、気になるあの会社の給与データががっちり押さえてある。「最も格下」だったことのある筆者からも、ぜひお勧めしたい自信作である。










