2002年5月1日

第149回 歴史は繰り返す?

 
 
中田英明 = 文
 
 
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歴史は繰り返す?

 今回の事故からとっさに30年前に起きたことを思い浮かべた人物がいる。1971年、旧第一銀行と旧日本勧業銀行の合併である。

「どちらのシステムにするかで第一銀行側と勧業銀行側の主導権争いが熾烈でした。双方のシステム担当者が大いにもめてまとまらず、システム統合作業もいまくいきませんでした。今回の(システム)事故の原因もそこにあると思いますね」

 こう語るのはある富士通グループ企業のシステム担当者。果たして歴史は繰り返されたのか。

 少々長いが引用する。《「会長や頭取はもとより本部のほうはタスキがけで交代していくのがいいと思います」(中略)

 西川の話を村本が引き取った。

「当然のことながら、合併銀行の人事は公平、平等を旨とすべきですが、公平な人事といってもD側の人が見るのと、K側の人が見るのでは違うでしょうから、井上頭取のいうタスキでいくしかないでしょうねえ」“DKB”の行章が決まってから“D”と“K”とうい言い方がされるようになっていた。

 横田がコーヒーをひと口すすってから言った。

「事務部門でコンピュータシステムの取り扱いに苦労しているようだが、合併までに一本化することは難しいでしょう。とりあえずは(富士通)FACOMとIBMの並立でいくしかないですかな。ただ、ゆくゆくはFACOMが中心にならざるを得んでしょう。DとFACOM、KとIBMのつきあいの濃淡を考えれば、そうなるのは当然です」

 井上も村本も、横田に向かって低頭するほかはない。

 西川もにこやかにうなずいている。

 コンピュータシステムがFACOMに統一されるのは合併二年後のことだが、井上が横田の発言にこのときほど感謝したことはない。

 後年、井上は「コンピュータ問題も合併の基本的要件の一つである。横田さん、八十島さんとの三者会談で話し合う必要があったかもしれない」と語っている。》(高杉良著『大合併 小説第一勧業銀行』より)

 みずほグループは4月30日、公共料金の引き落としなど、予定していた1200万件の処理をほぼ完了したと発表した。経営統合と同時に大規模なシステム障害に見舞われたが、ようやく沈静化しつつある。

 しかし、一度失った信用・信頼を回復するには気の遠くなるような時間か必要だろう。

 合併に「対等の精神」はありえても、「対等」などありえない。企業合併の難しさをまざまざと見せつけた。

 
 
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