企業の「デジタルマーケティング」最前線

フェイスブックやツイッター、mixiなどのソーシャルメディア、スマートフォン、
iPadなどのタブレット端末……。コミュニケーション環境のデジタル化が進む中で、
企業のマーケティングのあり方も変化してきています。
この連載では、企業の最新事例を交えながら、「デジタル領域でのマーケティング」
(=デジタルマーケティング)がもたらす、新しいマーケティング戦略を紹介します。

 
 
2011年11月28日
 
 

第5回/「スマートフォンアプリ」で若年層に接近!
老舗ブリヂストンのイメージ戦略

 
 

 

いかにブランド名を
思い出してもらえるかが勝負


 連載の最終回である今回は、今注目が集まっているスマートフォンを活用したデジタルマーケティングの事例として、弊社がお手伝いした株式会社ブリヂストン「ヴァーバル×ブリヂストン 『ドライブDJ』(VERBAL×BRIDGESTONE 『DRIVE DJ』)の事例をご紹介します。このプロジェクトは、若年層への接点強化及び同ターゲットへの先進的イメージの訴求を目的として実施されました。

 まずは、どのようにブランディングの方向性が導かれたのかを、同社を取り巻く環境からご説明します。
 同社は、言わずと知れた世界最大のタイヤメーカーです。しかし日本国内だけ見るとタイヤ業界は若年層を中心とした「クルマ離れ」の問題もあり、将来的には市場縮小の脅威に悩まされています。
 またタイヤは購入頻度が一般に3~5年に1度、メーカー各社による機能的な差別性も見えにくいこともあり、低関与商材(ブランドに対する消費者のこだわりの度合いが低い商材)であるといえます。そのため、消費者がタイヤを購買する際にブランドを思い出してくれるか否か(純粋想起)が、売上に直結するのです。




 ブランディングが重要なカギを握る中で、タイヤメーカー各社は「安全」「安心」「エコ」を打ち出したイメージ戦略を図っています。このような状況下で、同社は他社と差別化を図ることの出来る新しいイメージを必要としていました。


「先進性」をキーワードに、
保守的なイメージを刷新


 おりしも今年、同社は創立80周年を機に企業理念とロゴをリファインしました。
 このタイミングで、ブランドの本質的価値を改めて外部に発信する必要性が生じていました。そこで、近年保守的なイメージが先行していた同社のイメージを刷新するため、新しい企業理念の要素の一つである「進取独創」に基づき、情報感度の高い若年層に向けて先進的なイメージを訴求する方向でブランディングを強化することになったのです。



  先進的なブランドを創造するうえで重視したのが、「メッセージの一貫性を持ち」ながら、「新しい手段に取り組み続ける」ということです。具体的には、ブランドのコア事業と密接な「ドライブ」をテーマに、「世界初」や「業界初」と呼ばれるような施策を行うことで、 先進的なイメージ醸成に繋げようという戦略が組まれました。

 まず2010年に、iPadアプリ「DRIVE to... by BRIDGESTONE」を配信しました。このアプリは、著名人が、おすすめのドライブルート・スポットを紹介するドライブガイドアプリです。当時、発売間もないiPadという革新的なデバイスを活用して、いち早く消費者とコミュニケーションを図る試みを行ったのです。
 結果、App Store無料App部門第3位を獲得。またアプリをダウンロードしたユーザーを対象にしたアンケートでは、回答者の約9割が同社の企業イメージを”革新的だ“と評価するという結果に繋がりました。

 そして2011年に、スマートフォン専用アプリ「ヴァーバル×ブリヂストン 『ドライブDJ』(「VERBAL×BRIDGESTONE 『DRIVE DJ』」)の無料配信を開始しました。これは、ドライブシーンと音楽の親和性を意識した「タイヤ業界初」の無料音楽アプリです。

 本コンテンツのポイントは3つあります。

[1] ユーザーの日常に何度も入り込む(利用シーンの明確化)
 ドライブと関連性の高い「音楽」をコンテンツの核に据えました。
 利用シーンが曖昧なアプリは、一度ダウンロードされたとしても継続使用は見込めません。今回は、ドライブ中に音楽を聞くという生活習慣に合わせた音楽ツールという手法で、ユーザーの日常に何度も入り込むことを狙いました。

[2] 「特別感」をフックにメディア掲載を狙う(PR視点の盛り込み)
 このアプリでは、人気アーティストであるVERBAL氏がプロデュースした未公開のドライブミュージックを無料で提供しました。この「特別感」をフックに、音楽系メディアやアプリ紹介サイトなどでの掲載を狙い、アプリのダウンロードにつなげました。

[3] ブランドの“本質的価値”を体感してもらう仕掛け(コンテンツの装置化)
 装置化とは、生活者の課題を解決してくれる「仕組み」や「サービス」を通して、ブランドの本質的価値を体感してもらうコンテンツを用意することです。
 今回は、ドライブ中に音楽を聴くことが多いという生活者の導線に合わせて、アプリを設計しました。ブリヂストンブランドと密接な「ドライブ」という生活シーンで、アプリを通して定期的にユーザーと接触することで、同社の企業理念に基づいた「先進的」なブランドイメージを繰り返し訴求することができるのです。

 結果、無料アプリランキングでは最高で第3位にランクインし、これまでに10万以上のダウンロードを獲得しました。ユーザーからも、ブリヂストンのブランドの先進性を評価するコメントが多く、同社のブランディングに寄与する結果となりました。


* * *


 5回にわたりお届けしてきたこの連載では、デジタルマーケティングの最新事情を、事例を交えてご紹介してきました。
 お伝えしてきたように、メディアのデジタル化に伴って、スマートフォンやタブレット端末からソーシャルメディアに至る多様な手法で、企業は消費者とのコミュニケーションを図ることが出来るようになりました。デジタル上では顧客とのコミュニケーション資産がデータとして蓄積されるため、今後は、よりユーザーと継続的な関係を構築していくことが求められていくでしょう。
 デジタルはあくまでも手法のひとつですが、その可能性は日々無限に広がっています。顧客との新しい関係を創造する手段として、是非積極的に新しいコミュニケーション手法を取りいれて頂けたらと思います。
 最後になりましたが、ここまで連載をご覧頂きまして本当にありがとうございました。

 
 

ビルコム
Digital Marketing Div. Director

早川 くらら

2005年 ビルコム株式会社入社。新規事業担当、採用担当、アライアンス担当、営業担当を経て、現在はデジタルマーケティング・ディビジョン・ディレクター。協和発酵キリン、クラシエフーズ、ブリヂストンなど国内外大手クライアントを持つ部署全体を統括し、課題設定・戦略プランニングなどに携わる。

 
 
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