【第二回】魚屋の息子は、なぜ「ひきこもり」にならないのか
『日本溶解論 この国の若者たち』の著者・三浦展さんは、1985年から92年に生まれた世代を「ジェネレーションZ」と名付けた。現在の高校生、大学生であるZ世代は、小学生のころにバブル崩壊。その後、阪神・淡路大震災、オウム真理教の地下鉄サリン事件、酒鬼薔薇聖斗による神戸連続児童殺傷事件、9.11テロなどが立て続けに起きた。
そんな時代に育ったZ世代とは、どんな若者たちなのか。広告代理店からの依頼を受けた三浦さんは、Z世代へアンケート調査やインタビューを行った。その結果「戦後の経済発展を支えた価値観」が、Z世代には通用しないことが明らかになったという。
Z世代の若者たちは、三浦さんにこんなふうに語っている。
「死んだら終わり、と思いたくない」「笑顔でいたい」「キャバクラ嬢になりたい」「前世を知りたい」「目に見えるものだけがすべてではないと思う」「日本のお祭りって、いいなって思う」……。
これから社会に登場するZ世代について、三浦さんに話を聞いた。
地方の郊外にパワーセンターが建ち、文化や風土が溶解したせいで、昔ながらの商店街がシャッター通りになってしまいました。かつて商店街には世間があった。商店街の威勢のいい魚屋の息子が引きこもりになるなんて、聞いたことがない。店には、常に客がやってくる。目の前に世間があるから、引きこもりようがなかったんです。
この15年ほどで、地方でも世間がなくなって、大人が仕事する姿が見えなくなってしまった。地方の生活は大きく変わりました。しかし、東京で生まれ育った人たちは、いまだに地方に幻想を持っているようです。東京都出身の評論家・東浩紀が、横浜市の青葉台を事例にして郊外を考察しています。彼は、ジャスコやツタヤが日本中に波及していくのは、文化の再配分だと肯定的に捉えている。しかし、それは違う。パワーセンターができた代わりに、地方の文化や生活が破壊されてしまった。首都圏だけに目を向けていても、現在の日本の地方や地域、そして、若者を論ずることはできないと思うんです。
アカデミズムの内側にいる学者は、専門分野を掘り進めていきますが、ぼくは、アカデミズムの外にいるフリーの人間だから、世代論や家族論、都市計画論など、さまざまなジャンルを横に繋いでいける。それが、ぼくの役割だと思っているんです。社会学とは、本来、そういう学問のはずです。だから『日本溶解論』は、若者論としてだけではなく、都市論や郊外論、そして、現代日本論として読んで欲しい。
ぼくが若かったころ、まだ世間はありました。ぼく自身、サラリーマンになりたいと思った瞬間は一度もありませんが、大学卒業後、働かないという選択肢はなかった。就職するのが当たり前だったんです。ぼくも地方に暮らすZ世代の若者が福祉施設に就職するように、職場を探しました。そして、18年間のサラリーマン生活を送った後、独立してフリーになったんです。
好きなことをしたい、自分に向いた仕事をしたいと話す若者は多いけど、好きなことだけをして生きるのは、本当に難しい。能力と意欲、そして、運が必要です。意欲があっても、能力と運がない人が好きなことやるのは、サラリーマン経験を積んでからでも遅くない。大学を卒業したのに親のスネを囓りながらフリーターをしても、自分に合った仕事が見つかるわけがない。仕事をしなければ、自分は見つからないんです。
自分の食い扶持は自分で稼ぐ。そして、親元を離れて自立して生きる。これが、ひとりの人間としての約束なのではないか、と思うんです。
とはいえ、今、職を探している若者は大変だろうなとも思います。昔はどんなヤツでも正社員にしてくれた。でも、今は、求人も少ない。同じ会社でずっと働きたいと希望しても、その会社がいつまで持つのか分からない。
「自分に合った仕事でなくても、目の前の仕事をきちんとするから、40年間は安定した賃金が欲しい」と考えている若者も多いはずです。そんな人たちは、今、不安を覚えているのではないでしょうか。会社の将来が危ぶまれている状況では、いくら真面目に働いても長期的に自分の人生設計を立てるのは難しいわけですから。
それなのに若者に対して、一概に正社員として働くべきだという大人は多い。若者に働けと促すなら、現状を理解してあげるべきです。そうしないと、フリーターたちが生きる現代社会が抱える問題が見えなくなってしまうんです。
《第3回・「お湯を沸かした経験もないネットカフェ難民」に続く》
おすすめコンテンツ
-
- プレジデント
- 座間聖季さん&鶴田浩之さん(社会起業家支援委員会)
- 日本初!「社会起業支援サミット」開催します!
-
- 書籍
- つぶれない会社を簡単に作る方法
- 新会社法対応! 勝ち組になる起業術

三浦 展








