

「新築優先のままでは、住宅市場に将来はない」
井端さんが、そう考えるようになったのは5年ほど前だという。
「2003~07年は、底を打っていた不動産相場が上昇に転じ、ミニバブルといわれました。しかし、新築住宅の販売件数は意外にも低調でした。新築購入の中心となる30代サラリーマンには、買い場でないと映った。価格的に高く、購入側の給与水準と新築住宅の価格が合致していないと体感したことが、大きな理由だったと思います」
長引く不況で給料は上がらない。いつ会社をリストラされるかわからない。景気の先行きの不透明感が、さまざまな不安を呼び起こしていた時期だ。「実際に日本の名目GDPは、この20年、ほとんど変わっていない」と言う。
30年以上もの長期ローンを組んで、数千万円の高い買い物をするリスクを避けようという心理が働くのは、当然ともいえる成り行き。しかも、無理をして新築住宅を購入したが、ローンが払えないというローン破綻も、その後に問題化した。
「これから間もなく、日本は人口減社会に突入していくわけです。長期的に見れば、住宅需要はいやが応にも減っていきます。もう新築を買って一生住むという時代ではないですよ」
そこで出てくるのが中古住宅という選択肢。国土交通省は、中古住宅・リフォーム市場を20年までに20兆円まで倍増させる計画を打ち出しているが「需要は倍増を上回るのではないか」と井端さんは見ている。
井端さんによれば、日本の全家屋数は08年で5759万戸。そのうち空き家が756万戸もあるという。これは、東京、埼玉、千葉、神奈川、いわゆる東京圏の世帯数を超える数字だ。比率にすると空き家は13%強になる。
「全国で1割以上の住宅が使われずにいる。そんな国は、世界の先進国でも例がありません。長く新築偏重で来た結果、日本は世界に冠たる『空き家大国』になってしまっているのです」
資源の面から見ても、新築住宅に使われる資材・原料の多くは輸入に頼っている。それが使われずに、新築偏重が今後も続くとなれば、日本は大変な「資源の無駄使い国家」ともなる。
「空き家となっている中古住宅には、地球の大切な資源が詰まっているわけです。これを上手に使っていけるかどうかは、まさに国家的な重要課題といえます」
だから、中古住宅をリフォーム・リノベーションしながら住み継いでいくことが、これから大きな流れとなっていくだろうと井端さんはいう。
中古住宅は、とかく品質、住み心地に不安が持たれる。しかし、現在のストック住宅の6割は、1981年に新耐震基準が設けられて以降の物件。築浅のものでは、2000年からの住宅性能表示制度により一定の品質・性能を評価された物件も出てきている。
また、購入後やリフォーム後に不具合が出たときに補修費を補償する、瑕疵保険制度も導入された。信頼のおける中古住宅の流通を促進する体制が整えられつつある。
中古住宅の流通が促進されることのメリットのひとつに「職住近接」がある。一般的なサラリーマンでは、高価な新築だと通勤時間が1時間以上もかかる郊外にしか住まいを求められないのが通常。しかし、中古の価格ならば都心に家を持つことも不可能ではない。
「東日本大震災が起きた日、大量の帰宅難民が発生し、会社に泊まり込んだ人も数多い。その経験から都心の中古住宅に目を向ける人が増えています」と井端さん。
高齢者では、維持管理に手間のかかる郊外の戸建てを手放し、暮らしやすい都心の中古マンションに住み替える例も多いという。
潜在的な需要はある。品質を保証する制度も整ってきた。しかし、中古住宅の市場活性化には、まだ課題がある。ひとつは、多様な消費者ニーズに市場が応えていけるかということ。もうひとつはローンの問題だ。
「中古住宅が他人のお下がりのままでは、魅力薄でしょう。やはり、自分のライフスタイルに合ったリフォーム・リノベーションができるようにしていくことが必要です」
井端さんのホームアドバイザーがこれに対して打ち出した回答のひとつが「建築家オウチーノ」という、リフォーム・リノベーションを望む人と建築家を結びつけるマッチングサイトだ。
「一級建築士の登録者数は全国で約34万人。さらに毎年4000人以上の試験合格者が生まれています。しかし、この優秀な人材が、新築市場の低迷で仕事不足の状態にあるのです」
その企画力、デザイン力が、中古住宅の再生に投入される機会を増やそう。そして、きめ細かく利用者のニーズに対応して、レベルの高いリフォーム・リノベーションが実現されるようにしようというのが、このサイトのねらいだ。
「建築家を使うとお金がかかると思われがちですが、意外に費用の相談にはのってもらえるものですよ。耐震診断も施工監理も第三者的な立場でやってもらえますから、中古住宅の適正な評価にもつながります」
と井端さんは言う。
もうひとつの課題、ローンのほうは解決が少しやっかいだ。
現在、住宅の購入ローンとリフォームローンは、基本的には別立ての金融商品になっている。
そのため、購入ローンは組めても、リフォーム費用の融資が受けられないケースもあり、中古住宅を買ってリフォームしようという人には使いにくいところがある。
「購入とリフォームをセットにした商品は、地銀では千葉銀行、八十二銀行、関西アーバン銀行など数社あるが、メガバンクではみずほ銀行だけ。このあたりが解決しないと、中古住宅市場は伸びない」と井端さん。この点は政府主導で改善してほしいという。
「新築偏重が長く続いてきた弊害は、空き家を増やし、資源を無駄にしてきただけではなく、街の高齢化、空洞化も招きました。たとえば、ある地域が宅地開発されたとします。できたての住宅地には、ほぼ同じ世代の家族が入居しますが、それが30~40年も経つと、その地域の居住者は一様に高齢化します」
しかも、次世代も同じように新築住宅を求め、その地域を離れるから、街は空洞化して活気を失い、住みにくくなる。そうやって街の中にできた「高齢者村」がたくさんある。
「街というのはダイバーシティ(多様)であるべきです。多様な世代が住み、多彩な暮らし方があるから、住みやすく、活気も保てるのです。住宅のストックを活用する、中古住宅を再生させながら住むということは、街の荒廃を防ぎ、活性化させることにもつながるのです」
次世代に住みよい街を引き継ぐためにも、中古住宅が求めやすく、リフォーム・リノベーションしやすい環境づくりが急務と考える井端さん。その実現に努める熱いサポート役と自らを任じている。













