第24回 環境フォト・コンテスト2018に寄せて

地球温暖化に立ち向かう世界に 祈りを込めた写真でエールを

環境フォト・コンテスト審査委員長
環境文明研究所所長

加藤三郎

かとう・さぶろう
1966年厚生省入省。90年環境庁地球環境部初代部長に就任、地球温暖化防止行動計画の策定などに携わる。93年退官、環境文明研究所を設立。現在、同研究所所長、NPO法人環境文明21共同代表など。著書に『環境の思想』(プレジデント社)『福を呼びこむ環境力』(ごま書房)ほか多数。

今から、55年も前のこと。アメリカの海洋生物学者で文筆家のレイチェル・カーソン女史が、『沈黙の春』を出版しました。殺虫剤などの農薬が無造作に使われることが環境に悪影響を与え、鳥や昆虫などを死に至らしめるという問題について警告するために書かれたもので、当時のケネディ大統領をはじめアメリカ社会に大きな衝撃を与えただけでなく、日本でも読み継がれてきました。

それから半世紀以上が経過した今、世界も日本も自然界には大きな異変が起きています。それは、カーソンさんが心配した農薬などの化学物質の影響によるものだけではありません。当時、彼女が想像もしなかったであろうオゾン層の破壊や気候変動、さらには、人間の数が増えて経済活動が拡大するにつれ、動植物の生息域が狭まり、絶滅する生物が増えているといった異変です。国際自然保護連合(IUCN)の最新の情報では、世界の動植物や菌類など約8万5000種の生息域や生息数を調べたところ、約2万4000種が絶滅危惧種として認定されています。

一方、日本では、今年3月に発表された環境省の絶滅に瀕した陸域の生物種を調べたレッドリストによると、調査対象の5674種のうち、なんと6割強の3634種を絶滅危惧種として分類しています。

また、海域で絶滅が危惧されているものの中には、サンゴがあります。サンゴは水産資源のゆりかごとして、資源保護に極めて重要な役割を果たしていますが、近年の海水温の上昇などによって、日本近海はもとより世界の熱帯・亜熱帯の海で急速に白化したり、死滅に至るものが多く出ています。

このような状況に人類社会は手をこまねいているわけではありません。特に地球温暖化に対しては京都議定書、そして昨年発効したパリ協定により、対応しようとしています。パリ協定について言えば、アメリカのトランプ大統領こそ極めて消極的な姿勢を示していますが、それ以外のほとんどの国の政府や首脳は協定を支持し、なんとかこの破滅から人間の社会と生態系を守ろうと決意しています。また、たくさんの地方自治体や先見性のある企業なども、競って温暖化対策に取り組んでいるのです。

このような時代の流れの中で、プレジデント社主催の環境フォト・コンテストは、今回で24回目を迎えます。本コンテストでは、各協賛企業が自社の理念や文化をにじませた「募集テーマ」を設定し、寄せられた作品の中から、そのテーマを巧みに表現した写真を優秀賞に選びます。さらに、その中から特に優れた一点を「環境大臣賞/環境フォト大賞」として選出するのも、環境フォトコンならではの特徴となっています。

プレジデント社および協賛企業の関係者がこのコンテストに込めた願いは、協賛企業と作品を応募される写真愛好家、作品を見る一般市民の三者が、自然の美しさや逞しさを知り、そして、そこで生きる人々の暮らしの平安を祈り、共感する場を提供することにあります。

そのような思いをくみ取り、作品に反映した素晴らしい写真を今回も奮ってご応募くださいますよう、関係者一同心よりお待ちしています。