

俳優の永作博美さん、「きものやまと」デザイナーの延山直子さんは、
実はともに茨城県出身。着物好きの2人が、故郷の布づくりを訪ね、対談。
そこから見えてきた、ものづくりと生き方の意外な共通点とは?
延山 私の実家には残念ながら結城紬はなかったのですが、永作さんのおうちはどうでしたか。
永作 ひいおばあちゃんはいつも着物姿でしたね。着物姿以外を見たことがないくらい。それがいつも本当にやわらかい感じで、ふにゃっと(笑)着ていました。もしかしたら、あれは結城紬だったのかもしれませんね。
――制作工程を見ていただく中で、永作さんが実際に手で触れてみたり、手作業を体験される部分も何カ所かありましたが、いかがでしたか?
永作 細い糸を筬に通すような細かな作業も好きでしたし、糊付けした糸をパシッと伸ばしたりするのは気持ちよかったですね。すごい技術ですから自分がやるには畏れ多いですけど、でも、こういうことは好きだなと思いました。
延山 現場の職人さんからもすごく褒められていましたよね。
永作 そういえば昔、芝居を一緒にやっている人から「職人みたいですよね」と、芝居なのに言われたことがあって。芝居なのに職人ってどういう意味だろうと思ったんですけど。でも、もしかしたら、自分の中に職人気質みたいなものはあるのかもしれないですね。ただそれが芝居に関係しているかどうかは、わからないです。いつか、その人に会ったときに、どうしてそう思われたのか聞いてみたいですね。
――職人気質の方は、表に見えていないところから丁寧に準備しますから、そういうお仕事の仕方でしょうか。
延山 結城紬の職人さんたちも、まずは織る以前の糸の整経や括りなどの準備が大変です。絣をつくる人、織る人、さまざまな人の手仕事が重なっていて、結城紬は時間の結晶みたいな布ですね。
永作 お湯の中で反物の糊を落とす湯通し。あれも、手を入れてゆっくり、ゆっくりやってらして、素敵だなって。
延山 湯通しもほかの土地とは違う方法で、「きものやまと」が大切にしている工程のひとつなんです。40℃のお湯は、気持ちいいですけど、ずっと作業をしていたら手が荒れてきてしまうでしょう。でも、職人さんは絶対に手袋はしないで、素手のままです。素手じゃないと感触がわからないから。それで、ちょうどいい塩梅まで糊を落とすことで、結城紬の味になっていくんですね。だから、仕立てる際の湯通しや洗い張りなどのお手入れも、「きものやまと」では結城に里帰りさせることをおすすめしているんです。


――延山さんは、結城にも石下にも長く通われていますが、最近の変化や新しい面は感じていますか?
延山 最初に産地を訪れたのは、もう20年前になります。新入社員の研修で伺ったのですが、地元にこんなにも丁寧な手仕事でつくられる紬があるのかと、心から感動したことを今でも覚えています。その後、水害や震災、職人の高齢化など、産地を取り巻く環境は大きく変わりました。それでも技術を絶やすまいと、知恵を絞り、新しい工夫を重ねながらものづくりに向き合うつくり手の皆さんの姿には、いつも刺激をいただいています。
永作 すごくクリエーティブですね。伝統を守る中で新しいことをされるのは。
延山 そうなんです。今回私たちがお願いしたのは、「間差し込み」による、片側からなだらかに色が移ろうデザインです。間差し込みによる表現はこれまでもありましたが、今回のようなグラデーションを実現するには、従来とは違う工夫が必要でした。ご一緒した職人の小野さんは、ご自身を「実験屋なんです」とおっしゃるくらい、既成概念にとらわれず、「もっとこういう表現ができるんじゃないか」と挑戦を続けている方で、とても信頼しています。
永作 ああ、私も「生きることは実験だ!」って思っていたことがありました。
延山 素敵です。“伝統とは革新”と、よく言われることですが、結城紬の産地では、伝統の中の実験が連続しているんですよね。


左:永作博美(ながさく・ひろみ) 俳優として映画、ドラマ、演劇で幅広く活躍中。主な出演作品に映画『八日目の蟬』『さいはてにて』『朝が来る』など。2026年春のドラマ『時すでにおスシ!?』では、50代女性の美しさ、かわいらしさで話題に。着物歴は30代から。自分であつらえた着物も多数。
右:延山直子(のぶやま・なおこ) 茨城・筑西市出身。「やまと」取締役、「きものやまと」チーフデザイナー。現代のライフスタイルに合う着物を提案するため、国内外の工房へ。産地のつくり手たちとのディスカッションを重ねる日々。今回、伝統を受け継ぎながら新たな表現に挑戦し続ける、産地のものづくりの可能性に触れた。
着用着物(永作さん) 結城紬「柿つらね」36万1900円(手仕上げミシン単衣仕立て付き、産地湯通し代+6050円)、染め九寸名古屋帯「五彩まめ皿」11万円(仕立て上がり品)、ちりめん銀散らし帯揚1万3200円、畝(うね)源氏帯締1万3200円、りんぐ草履2万7500円/以上、きものやまと
着用着物(延山さん) 結城紬「もくの道」30万6900円(手仕上げミシン単衣仕立て付き、産地湯通し代+6050円)、米沢織半幅帯「なぎさ・碧空(あおぞら)」3万8500円、赤珊瑚(さんご)帯留 14万3000円(「きものやまと」表参道店限定)、二分紐8800円、刺繍半衿「扇銀杏(いちょう)」1万1000円、草履1万8590円/以上、きものやまと
【第1回】これからの民藝 「きものやまと」の結城紬1 を読む

季節とともに、装いを楽しむ
「きものやまと」は、季節の移ろいを感じる装いを、一年を通して提案しています。本誌でご紹介した結城紬をはじめ、さんちとともに育んだものづくりから生まれる、着物や帯、小物をお届けしています。今年も、「秋支度フェア」を随時開催。ぜひ、「着物やまと」店舗およびオンラインストアで、その魅力に触れてみてください。
https://store.kimono-yamato.com/Page/kimonoyamato-official.aspx
「きものやまと」お客様サポートセンター

0120-18-8880
文=藤田千恵子 撮影=豊田 都 着つけ=薬真寺 香(永作さん) ヘアメイク=石川智恵(永作さん)
※価格は消費税を含む総額となります。