靴下の長さ、スカート丈チェック……桜蔭は細かい校則があります

【有名中高一貫校OB・OGインタビュー】桜蔭編

「中高一貫校に入学後の学校の様子が知りたい」という読者の声に答えて、有名中高一貫校の卒業生に中高の話を聞くコーナーです。第7回は東京の水道橋にある桜蔭中学のOGのインタビューです。中学受験における女子校の最難関校。現在、私立大学の4年生で理工系の学部に通うGさんに話を聞きました。

――桜蔭は名物行事とか○○力を入れているとか、積極的に情報を提供している感じがないですね。どんな学校でしたか?

入学するのに難しい学校ということは知られているけれど、学校の雰囲気とか特徴が知られていないですよね。実は私もよく知らないまま入学したんです。周りにも桜蔭のことを深く知らずに入ってきた子が多くて、入学当初はさぐりながら学校生活をしている感じでした。女子御三家の女子学院も雙葉も宗教的な特色がありますよね。私は小学生の頃イエスキリストの十字架にはりつけられた絵がとても怖くて、キリスト教の学校は避けたかったんです。桜蔭を選んだことの大きなポイントは無宗教であることでした。

東大合格者数など大学の合格実績が注目されますが、大学受験ばっかりに熱中せずに勉強以外のことをやりなさいという学校です。学校の定期試験の結果で平均点すら発表しない先生や、「70点台後半」という感じで平均点を隠すようにアバウトに発表する先生もいました。全体の順位なんてもちろん発表しないです。当時は席の近くの子の点数を見て自分が大体平均くらいだなって確認していました。

その分、大学受験は自分たちでやらないといけないから、鉄緑会とか駿台などの塾に行く子は多いです。中学のときは簡単な宿題がたくさん出ましたし、公立中学などに比べたら授業の進度もかなり早かったみたいでしたが、塾に通わず大学受験をする子はあまりいませんでした。中1から塾に行っている子もいて、同じ塾に同級生が何人かきていたりするから、塾が第二の学校って感じで楽しそうでしたよ。

――特徴的な授業はありましたか?

「礼法」という作法を学ぶ授業があって、中高生のときは「意味ない授業ランキング1位」と思っていたのですが(笑)、大学生になって振り返るとやってよかったって思いました。礼にも6種類あるとか、ふすまの開け方とか、一からきっちり教えてもらいました。

あと遠足のことを「自然に親しむ日」と言うんです。文字どおり山とか自然が多い場所に遠足に行くのですが、その日は、制服ではなく白い体操着にジーンズで学校指定の白いスニーカーをはいてリュックを背負うという格好で自宅を出発して、集合場所に集まるんです。その格好で出かけることが当時はすごく恥ずかしかった……。

あと桜蔭には校庭がないので日常的な体育はすべて体育館。ひばりが丘に運動場があって、中2の土曜日は運動場に集まって体育をするんですよ。中2が体力作りの学年と位置付けているみたいで。

――「礼法」や遠足を「自然に親しむ日」ということとか、レトロというか保守的な感じの学校ですね。校則は多いですか?

多いですね。まず、創立以来90年ほど変わっていないジャンバースカートの制服があってかわいくないんです。バッグも「Oin」って書いてあるもので、必ずそのバッグをつかわないといけなくて。制服やバックを変えたいっていう意見が数年に一度、生徒会の議題になるのですが、学校側からの回答は必ずNGがでてしまう……。伝統なんでしょうか。そのほかにもブラウスが丸襟なのですが、第一ボタンを開けてはいけないとか、靴下はハイソックスが禁止でかかとから20センチまでの丈のものを履かないといけないと決まっていました。修学旅行の前には、スカート丈チェックもありました。生徒が壇上に並んでお辞儀をして、先生がチェックするということも。神社の境内でお参りをしたときにも見えないようにというためもあるそうなんですけどね。

ほかにも携帯電話は校内で電源を入れるのは禁止なのですが、電源入れていることが見つかったら没収されて、次の保護者会で親に返されることになっていました。漫画は生徒同士の交換のために持ってきていいことになっていたのですが、校内では漫画を紙袋から出してはいけないことになっていたり。規則が細かいですよね(笑)。

――神社を想定してのスカート丈チェックをするとは、先生方の配慮が行き届いているとも言えますが……。規則が多くて大変ですね

やんちゃな子が多い学年もあって、茶髪の子もいたり、靴下もぐーんと伸ばしてハイソックス風にしたりしていました。誰かが持ってきた携帯電話の着信音が授業中鳴ったときには、その音をかき消すためにみんなで笑い始めて騒いだりしたのもいい思い出です。卒業後に先生と話をしたときに、雑談の中で「厳しい規則の中で、表現するすべを探して欲しいという気持ちが込められているんだよ」と言われて、先生方もいろいろ考えているんだなって改めて知りました。

校則は厳しいですが、先生は生徒を否定することは絶対言わないですね。成績が悪くても否定はしないし、生徒を競わせるようなこともしないです。中学の最後に40ページくらいの卒業論文を書く課題があるのですが、テーマは自由。だから、学術っぽいことをする子もいればお菓子の研究とか軽いテーマの子もいました。どんなテーマでもチャラチャラしているなどとは言われなくて、先生は客観的な評価をしてくれました。

――部活はさかんですか?

部活は全員入ることになっています。運動系の部活はバレーボール部Ⅰ、バレーボール部Ⅱというように2つに分かれていて、Ⅰは週1回で緩く、Ⅱは朝練もあってがつがつ活動するんです。管弦楽もあって管弦楽はがつがつやる部活のほうでしたね。部活をがんばって勉強はあんまりしないという子もいましたし、運動系のⅡの部活に入りながらも勉強も頑張っている、文武両道している子もいて、いろいろなタイプの子がいました。

――同級生はどんな子が多かったですか?

サバサバしていることが多いです。それぞれ自分を持っているので、女子校らしいグループに分かれてけん制しあうみたいなのはないですね。アニメおたくとか漫画おたくみたいな子も多いですが、すごく知識が深くて面白いから、頼られたり。それぞれが認め合うような雰囲気です。まさに「唯我独尊」「他者尊重」という感じです。

先生は、ほとんどが女性で桜蔭OGの方が多いです。企業で働いた経験がある先生もだんだん増えてきているようで、熱心な授業をしてくれる先生の授業は面白いです。単なる受験のための勉強にとどまらない学問的な面白さを教えてくれる先生の授業は面白いですね。教え方がうまくないと思われると、ひとりで勉強したほうが早いと思ってしまう子が多いので、先生も教えるのは大変かもしません。あとOGや社会人の方の講演会もあって、国連機関で働いている人の話を聞いたのは楽しかったです。

大学受験のフォローをがっちりやってくれる塾のようになっている高校もあるようなので、受験ガチガチの学校ではないことを世の中にうまくアピールするといいのにって、OGとして思います。

 

ジャンバースカートのレトロな制服への不満は、同級生で集まったときにも必ず話題になるほど、桜蔭生にとっての共通の話題になっているそうです。

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