男3人でもぎとった東大現役合格 その3【高校教師から父親への手紙】

『田舎のキャバクラ店長が息子を東大に入れた。』刊行記念、伝説の記事を復活!

本記事は「プレジデントファミリー2013年9月号」掲載。
『田舎のキャバクラ店長が息子を東大に入れた。』(1404円)。
全国書店、弊社公式通販サイト、アマゾンなどでも発売中。

それは、編集部にかかってきた1本の電話から始まりました――。

両親は夜のお店勤め、塾にも行かず東大に合格した子がいるというのです。

1人の高校生とその父親、高校教師と、3人が一丸となって東大をめざし、合格を勝ち取った物語は、プレジデントファミリー2013年9月号に「男3人でもぎとった東大現役合格」として記事になりました。そして、この記事がきっかけとなり、一冊の本が誕生しました。

田舎のキャバクラ店長が息子を東大に入れた。 たった一つの子育てポリシー』。著者は父親の碇策行さんです。

発売を記念して、当時の記事を公開します。東大に合格した直後、父親から息子へ、息子から父親へ、高校教師から父親へ、それぞれの思いを込めた3通の手紙の形式になっています。

第三回目は、高校教師から父への手紙。

 

碇 策行さま

 33期の卒業式から4カ月が経ちました。

 いつの日からか、碇さんは、私にとって生徒の保護者ではなく、教員とはまた別な立場から動くスタッフという感覚になっていました。

 33期の生徒たちは強い団結力で大学受験を戦いぬきました。あまりにすがすがしい戦いだったので「夢だったのでは」と思うことすらあります。

 そんなとき、私と碇さんがもらった、生徒からの「寄せ書きTシャツ」を見て、夢ではなかったのだと実感します。生徒全員からの寄せ書きをもらった保護者というのは、学校創設以来、碇さんが初めてではないかと思います。

 碇さん。私との最初の出会いを覚えていますか。誠悟さんが中学1年、6年前の授業参観でした。授業を終えた私の目の前に現れ、「教室の蛍光灯が切れている」と怒っておられました。授業参観に参加する父親自体が珍しければ、そんな細かいことをわざわざ言ってこられる方も珍しい。「これは面倒な人がやってきたぞ」と少々警戒しましたが、杞憂に終わりました。

 それから2年ほど経ち、中学3年の授業参観が終わったあと、碇さんは中学職員室に現れ、私を呼び出しました。「今度はなんだ」と思ったものです。初めのうちは、「大学受験の経験がない自分が息子の東大受験をサポートできるだろうか」という不安についての話だったと思います。しかし、2時間ほど話しこんでいるうちに、「どうしたら学年全体をサポートできるのか」という話に変わっていました。このとき私は「本当の意味で、保護者と生徒が中心になった学年運営ができるかもしれない」と感じました。

 当時、世の中はモンスターペアレンツという言葉に象徴されるように、保護者と教師の関係は緊張感のあるものでした。しかし碇さんと話すうち、「保護者と教師が腹をくくれば、生徒が成長するために、ときには社会の厳しさを教え、ときには黙って見守る信頼関係ができるのでは」と期待しました。この年、行われた文化祭での『火垂るの墓』の演劇のために、碇さんは毎日学校を訪ねてきましたね。生徒たちを励まし、叱り、ご指導くださいました。教師でも、顧問でもない碇さんに厳しいことを言われても、それを受け入れる生徒たちの姿を見て、「この子たちは戦う集団になれる」という希望が湧いてきました。

 清真学園の生徒たちは、筑波大学でセンター試験を受けます。当日の移動では何があるかわからないので前泊になります。碇さんと私で、コースを下見するプロゴルファーのようにあらゆる事態を想定し、前泊の宿舎、引率プランを考えました。できあがったプランは、碇さんがブログで発信してくださり、それによって多くの保護者、生徒の不安が薄れ、「みんなで戦うんだ」という意識がどんどん広がっていきました。

 親が教師を信頼し、教師が親を信頼する。子供の挫折と向き合い、じっと見守っていけば子供は必ず成長します。しかし、今の親は急ぎ過ぎ、我慢するのが苦手なようです。また、ほかの子を叱るのを嫌い、自分の子だけを見てしまいます。自分にも、息子にも、ほかの子にも厳しい碇さんのまねは、なかなかできることではありません。

 誠悟さんが卒業したあとの清真学園では、碇さんが同じような活動を続ける機会は減るかもしれませんが、ぜひ碇さんの感じたことを伝え続けてください。

当校の生徒の成長に関わってほしいと思っています。保護者・教師という関係だけでなく、一人の同志として、今後もよろしくお願いします。

 最後にもうひとつ。忘れもしないのは、東日本大震災の日の夜のことです。誠悟さんを自宅に送ったあと、差し入れと最新情報を持って戻ってきてくれましたね。寒空に何の情報もないまま、私はグラウンドで保護者を待つ約300人の生徒たちと夜を迎えていました。碇さんは、鹿嶋までの道が寸断されていること、保護者が迂回路を使って5〜6時間もかけてこちらに向かっていることなどを教えてくれました。親の安否さえわからない生徒が多かったなか、「少しでも」と情報を仕入れるために駆け回ってくださった碇さんの姿に感動しました。本当にありがとうございました。 

清真学園33期 学年主任 押見弘一

 

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