
繊細な糸目友禅の付下げには、職人の丁寧な手仕事が重ねられている。
ハレの日に袖を通す1枚には、特別な日の記憶が少しずつ重なっていく。
作家・藤野可織さんが訪れた京都の友禅工房で、
気が遠くなるような手仕事の数々のごく一部を覗かせてもらいました。
ハレの日に、もっと着物という選択肢を楽しんでもらえたら。そんな思いから生まれた「きものやまと」の新しい付下げ。オリジナルの糸で織り上げたしなやかなポリエステル素材を採用し、天候を選べない行事の日の不安や、お手入れの悩みを解消。裾に袖に、糸目を生かした繊細な文様が手描き京友禅で染められている。
工房の中には、色とりどりの反物が張り巡らされている。迷いなく動く職人の坂口昌美さんの手元に見入る藤野さん。
宝石をちりばめたような色見本たち。使う色のすべては、絹布に記録される。工房の長い歴史がそのまま色の記録に重なっていて、およそ10万色あるのだとか。
布をぴんと張るための竹ひごの伸子(しんし)に、藤野さんは興味津々。色合わせは工房の心臓部。絵皿で染料を繊細に合わせて、色をひとつひとつつくっていく。色を決める作業は、専門の職人が担う。
実寸大の草稿に絹地を重ねて下絵を写し、友禅独特の白い線を生む“糸目”を糊で置いた後、色挿しへと続く。糊は小さな先金が付いた小筒で絞る。子供用のふっくらした文様には太めの先金を、大人用の繊細な柄には細い先金を使い、糸目の表情にも気を配る。京友禅の華やぎの秘密は、片羽ぼかしという独特の手法にある。片羽刷毛(はけ)に染料と水を含ませ、そっと色を重ねると、自然なグラデーションが生まれた。
整然と保管される図案の草稿。反物は左から、ハレノヒ小袖付下げ訪問着 四季のしおり鉄紺、同更紗(さらさ)花冠 石色、同小さな星 翡翠(ひすい)各14万3000円(仕立て代込み)|レンタル価格 各7万7000円(袋帯、帯締め、帯揚、草履、バッグなどの10点セット)/きものやまと
壁一面の引き出しには、創業時からの図案が収められ、バーコードで整然と管理されている。この図案から、どれだけの美しい着物が生まれたのだろう。3つの反物は、「きものやまと」の新作の反物。手挿し友禅を終えた後、蒸しや地染めの工程を重ねて、ようやく色が染め上がる。さらに金銀箔(きんぎんぱく)や砂子をあしらい、時に刺繍をほどこし、仕立てを経て、1枚の着物となる。
工房を案内してくださった「岡山工芸」代表取締役の岡山摩紀さんと、商品プロデューサーの山下貴之さん。完全分業制だった京友禅の伝統を尊重しつつ、複数の技能をマスターし、工程全体を俯瞰(ふかん)できる職人を育成する新しいチームづくりにも挑戦している。
トップページ着物)ハレノヒ小袖付下げ訪問着 小さな星 翡翠(ひすい)14万3000円(仕立て代込み)│レンタル価格7 万7000円(袋帯、帯締め、帯揚、草履、バッグなどの10点セット)/きものやまと
【第1回】これからの民藝 「きものやまと」の新しい付下げ1 を読む
秋の彩りをまとう ─秋支度フェア
2025年9月4日(木)より、全国の「きものやまと」およびやまとオンラインストアで「秋支度フェア」を随時開催。久留米絣(くるめがすり)や尾州ウール、帯留めなど、これからの季節に楽しめる新作が揃います。また、着物の困りごとを相談できる「きもの何でもご相談会」も実施。季節の移ろいとともに、着物で秋の彩りを描いてみませんか。
「きものやまと」お客様サポートセンター
☎0120-18-8880
https://www.kimono-yamato.co.jp/
文・着る人=藤野可織 撮影=三浦咲恵 着つけ、ヘアメイク=薬真寺 香 デザイン=狩野聡子(tri)
※価格は消費税を含む総額となります。