
いつの時代もどんな土地でも、絞りには
人をはっとさせる美しさがある。
江戸時代からずっと愛される有松鳴海絞のゆかたは今、
4000kmを越えて職人たちが手仕事のバトンをつなぐことで、
私たちに届けられている。
藍をはじめとする染め地に、シャンと映える白がなんとも涼やか。近づいてよく見れば白が描き出すのはごくごく小さな文様で、ツブツブしていたりシワシワしていたり。そのひとつひとつがシボと呼ばれる凸凹をつくり出していて、汗ばむ夏の肌にふわりと、得もいわれぬ心地よさを与えてくれる。
この美しさと着心地のよさこそ、有松鳴海絞が江戸時代から400年もの長きにたって人々を魅了し続ける理由だろう。
70通り以上あるともいわれる絞りの技法を巧みに使い、文様を生み出す。美しい布をつくるのは、人間の手だ。ところが、昭和の最盛期には1万人ほどいたという職人の数は、人件費の高騰や人手不足により減少著しい。
「きものやまと」では今、カンボジアの女性たちの手も借りて、絞りゆかたの美しさと着心地のよさを、私たちに届けてくれている。
有松鳴海の染め工場。3日に一度のペースで、カンボジアから絞りの工程を終えた反物が、100~150反もの単位で大量に届く。
「きものやまと」延山直子さんの「こんなものがつくりたい」という熱い思いを、「早恒染色」の増田 薫さんをはじめとする工房メンバーたちが「じゃあ、こんなふうにやってみましょう」と受け止める。
「木綿の白生地は、オーガニックの糸を使い愛知県知多郡で織ったもの。その後、国内もしくはカンボジアでの絵刷り・くくり(絞り)の工程を経て、再び愛知県に戻り、今度は有松鳴海の豊かな地下水で染めます。さらに糸解きを行ない、ようやく、絞りのゆかた地が染め上がります」
産地のものづくりと品質の高さ、その両方を大切にしたいというビジョンを語るのは「きものやまと」デザイン部チーフデザイナーの延山直子さん。
「首都・プノンペンから車で1時間ほどの農村に工場があります。それ以外に、そこからさらに3時間ほど離れた村に、約20カ所、内職を請け負うチームもいます。風が通り抜ける高床式の家屋で、女性たちが繊細な絞りを仕上げてくださるんです」
国境を越え、職人から職人へと1枚の布が受け渡されて、ようやく一つの染めが完成する。決して当たり前ではない、地球規模の新しいものづくりの在り方とその尊さに、改めて心が動かされる。
【第2回】これからの民藝 「きものやまと」の絞り 2 を読む
絞りのゆかたも、クリーニングも。
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「きものやまと」お客様サポートセンター
☎0120-18-8880
https://www.kimono-yamato.co.jp/
文=高橋マキ 撮影=原 祥子(有松鳴海)イラスト=小林マキ