「超具体化」コミュニケーション実践講座/はじめに
2007年8月にサブプライムの問題が露呈しました。それ以前から、金融危機が必ず来る、それがゆくゆくは実態経済に影響を落とすと分かっていたのに、十分な対策をとっていませんでした。企業も個人も、本質を見抜いておらず、鍛えられていないのです。
儲かっている時代、楽な時代は、仕事も勉強も「表面的なこと」だけやっていれば、なんとか上手くまわっていきますが、いまのような「厳しい」時代には、本物しか残りません。本質が分からず、「本当の」実力のない人は早々に淘汰されてしまいます。
「話し方」の本は、毎年山ほど出ています。すぐに使える便利な本もあります。しかし、「すぐに使える便利な」スキルばかり身に付けても、それは本質を知ることにはなりません。ぱっと読んでぱっと使える技術、そんなもので得られることはほとんどありません。ただ、みんな必死だし、楽だからそういう軽い話に乗ってしまう。
学問に王道なし。人生に王道なし。そして、コミュニケーションにも王道はないのです。
本当に環境が厳しいとき、ちょっとした言い回しや丁寧な言葉遣いだけで人が動いてくれるでしょうか。心に余裕があるときならまだしも、「明日から使える便利な一言」では人を動かせる時代ではなくなっています。
私は何かを「覚える」よりも、本質を理解するための「頭を良くすること」のほうが近道だと思っています。ここに、2000ccのエンジンの車と4000ccのエンジンの車があります。100キロを出すだけなら2000ccでも大丈夫ですが、100キロで何十時間も高速道路を走り続けるということになると、4000ccの車のほうが圧倒的に安定している。急な坂道を上るときでも2000ccの車でいけることはいけても、そのあと車がゼーゼーいっているでしょう。
頭も一緒です。2000ccの頭を4000ccにしたら、一生楽なわけです。頭が良くなるというのは論理的思考力を高めるということです。これがあると、コミュニケーション力も格段に上がります。
若いうちはそれほど難しいデシジョンメイクは必要ありません。軽いことを速くたくさんできる人が仕事ができると思われます。でも、ある一定の年齢になり、とくに難しいことを判断する経営にかかわるようになると、論理的に深いことを考えられるかどうかが成否を大きく左右します。
コミュニケーションも同じです。簡単な仕事であれば「あれやっといて」「ああ、あれね」で通じますが、仕事の内容がどんどん複雑化するにつれて、「具体的に」「論理的に」伝えなければ、いくら言葉を重ねても、相手から何のアクションも引き出せなくなります。相手がクライアントなど、社外の人ならもっと厳しい。人を動かせてこそ本当のコミュニケーションなのです。
私は、この本を読む方に、「コミュニケーション」の本質に迫ってほしいと考えています。コミュニケーションは、言葉だけではなく、「意識」を共有しないと始まらない。また、どんなにやさしく促したり、力強く励ましたりしたところで、人は動きません。
では、どうしたらいいのか。
それには、まず「意識」を共有し、相手の心理バリアを下げること。そして、目的を達成するための「次の一歩」を明確に示すことです。
つまり、「意味」を分解し、相手がすぐに行動に移せる内容に落とし込むことです。
それがこの本の中で書いた「超具体化」です。
この本を読んだからといって、たちどころにあなたのコミュニケーション能力が上がって、みんながあなたの言うことを聞いてくれるようになるわけではありません。しかし、こんな厳しいときだからこそ、「本質」を学び、本当の実力を身につけるチャンスです。
私がこの本でお話ししている「心理学」や「具体化」や「バリュー」や「インパクト」といった方法論は、いわば、コミュニケーション力を向上させるための「フレームワーク」です。すぐに実践できるものもあればそうでないものもあります。毎日訓練していくなかで、徐々に磨かれるものです。
あなたがこの本にあるような「具体化コミュニケーション力」を付ければ、それは一生の財産になります。
いまこそ、本質を学ぶチャンスです。







