2021年は日経平均株価がおよそ30年ぶりに3万円を突破するなど、好調に推移しました。ところが、2022年は下落が続き、一時は2万5000円を割り込むなど軟調な展開になっています。ただ、株価が下落したことで日本株に割安感が台頭し、買いのチャンスとの声も。物価の上昇や電力不足が懸念されるところですが、これから新たに株を購入したり、あるいは株式投資を始めたりするのに適切なタイミングなのでしょうか。これらの疑問を解決すべく、テレビや雑誌、新聞などあらゆるメディアで人気沸騰中の美人経済アナリスト馬渕磨理子さんにお話をうかがいました。

ポイントは「自分が理解できる銘柄に投資する」こと!少額から始められて利益を大きく伸ばせる投資法とは?

馬渕 磨理子
Mariko Mabuchi
日本金融経済研究所代表理事 / 経済アナリスト

京都大学公共政策大学院の修士課程修了を経て、法人の資産運用を担当。その後、金融メディアのシニアアナリスト、FUNDINNOで日本初のECFアナリストとして政策提言に関わる。2022年に一般社団法人日本金融経済研究所を設立し、代表理事に就任。フジテレビ(LiveNEWSαレギュラー出演)、テレビ東京、日本テレビ、BS朝日、読売テレビ、日経CNBC、プレジデント、ダイヤモンド、Forbes JAPAN、SPA!ほか、ラジオでもレギュラー番組3本を持つなど各方面で活躍中。プレジデントオンラインの執筆記事は、2020年の半年間で累計6,000万PVを突破し、「日本一バズるアナリスト」と呼ばれる。著書に『5万円からでも始められる! 黒字転換2倍株で勝つ投資術』(ダイヤモンド社)、『株・投資ギガトレンド10』(プレジデント社)。大学時代は国際政治学を専攻し、ミス同志社を受賞している。

円安効果で日本株は浮上?

——2021年の日本の株式相場は、バブル後の最高値を更新するなど好調でした。しかし、2022年は年初から下落が続き、なかなか浮上できないでいます。今後の日本株についてどう見ていますか?

馬渕: 2022年に入ってからの株安局面は、米国相場の下落に大きく影響を受けています。もともと、米国の相場は世界中の株式市場に大きく影響するのですが、米国では金融当局によって金融引き締め(利上げ)が行われています。本来、利上げは過熱した景気を冷ますために行われることが多いのですが、現在の利上げはインフレを抑えるのが主な目的。景気が過熱しているわけではないのに利上げを行っているので、景気が減速したり、もしくは景気後退(経済成長率がマイナス)に陥ったりする可能性が指摘されています。その景気後退に対する不安が株安につながっているわけです。

ただ、過去を振り返ってみると、金融緩和(利下げ)から金融引き締め(利上げ)への転換をきっかけに株価が下落トレンドに突入したとしても、おおよそ2年以内に相場が反発に転じるケースが多く見られます。まだ相場が下落に転じてから1年も経っていませんが、すでに米国の代表的な株価指数であるS&P500種指数は高値の4818ポイントから安値の3636ポイントまで24.5%、IT関連やハイテク関連が多く上場しているナスダック総合株価指数に至っては34.8%も下落しています。かなり調整が進んでいると言えますから、ここからさらに暴落するリスクは小さいですし、そのうち反発に転じると考えています。

——米国相場が反転すれば、日本株も上昇に転じる可能性が高いということでしょうか。

馬渕: 米国では着々と利上げが行われているのに対し、日銀は金融緩和状態を続けています。日米間の金利差が拡大して、それが円安につながっているのですが、現在は円安によって資源・エネルギーなどの輸入コストが増え、それが日本の景気を押し下げるという“悪い円安”のほうに投資家の意識が向いているように思えます。

以前、「1円の円安が進むとトヨタ自動車の営業利益が400億円増える」と言われたように、円安は輸出企業の業績を押し上げます。日本の株式相場には、まだそれが十分に織り込まれていませんから、徐々に「円安効果」が意識され、株価が上昇に転じる可能性があるでしょう。

——現在は円安の悪い部分だけがフォーカスされているわけですね。

馬渕: 円安になればなるほど外国人にとっては日本のサービスや商品が安くなるので、今後は訪日外国人客による経済効果、いわゆるインバウンドの拡大にも期待が持てます。また、商品だけではなく、株や不動産などの資産も安くなりますから、海外の投資家による日本株買いの増加にもつながるでしょう。もっとも、円安で痛手を受ける企業も少なくありません。そう考えると、「いい銘柄はいい、悪い銘柄は悪い」という二極的な動きがはっきり出てくると思います。

「クロテン2倍株投資」で少額資金を大きく増やす!

——その点に気を付ければ、日本株は買いのチャンスと言えるかもしれませんね。

馬渕: その通りだと思います。ただ、相場がさらに下落するリスクもあるので、一度に全ての資産をつぎ込むのではなく、何回かに分けて投資するべきでしょう。資金、時間、投資先を分ける「分散投資」が大切です。初心者の方が、個別銘柄の良し悪しを判断するのはハードルが高いかもしれません。その場合は、投資信託やETF(上場投資信託)によるインデックス投資を選択してもOKです。

インデックス投資は「悪い銘柄」も入ってきてしまうためリターンは減りますが、手軽に分散投資ができる有効な手法。運用をプロに委託する「信託報酬」が低めの投信を選ぶほうがいいでしょう。インデックス投資は積み立てNISA(小額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)でも買えるので、こうした税制優遇の制度を活用するのもアリです。

——投信だと安定的なリターンは期待できますが、もっと大きなリターンを狙いたい場合はどうすればいいでしょうか?

馬渕: そうなると、やはり個別銘柄狙いになりますね。なかなか初心者が「どの個別銘柄がいいか」を判断するのは難しいと思いますが、「世界一の投資家」のやり方を参考にするのも一手です。「投資の神様」とも呼ばれ、フォーブスの「世界長者番付」でも常に上位にランクインしている米国の著名投資家ウォーレン・バフェットは、「その企業が何で儲けているのかわからない企業は買わない」と言っています。

私のユーチューブチャンネルでもバフェットの書籍を紹介していますが、バフェットは企業の財務諸表(その会社の資本や業績、お金の流れの詳細が書かれた資料)を徹底的に読み、その企業が何で稼いでいるのかをチェックし、その稼ぎに対して株価が割安かどうかを判断します。株を始めたばかりの人に「財務諸表を読め!」というのは厳しいかもしれませんが、まずは「その企業は何をして稼いでいるのか」くらいは調べてみるといいでしょう。

——その手の情報は、会社のホームページに掲載している「決算説明資料」に載っていますね。業績やビジネスモデルを調べて成長企業を発掘するというのは株式投資の最大の魅力の一つですが、もっと具体的な銘柄の発掘方法はありませんか?

馬渕: それなら、「黒字転換2倍株=クロテン2倍株投資」がおススメです。これは、四半期決算ベースで赤字から黒字に浮上した企業を買って、株価が買い値から2倍になったら売るという手法。赤字企業は株価も低迷していることが多いのですが、黒字に浮上し、さらに収益を伸ばしていく過程で株価は大きく上昇します。その上昇を序盤でつかまえましょうということです。

具体的には、大手ネット証券や株情報サイトのスクリーニングツールを使って、まず四半期ベースで赤字から黒字に転換した企業を選別します。相場動向や時期によっても変わりますが、その段階で100社から200社程度まで絞れるでしょう。次に、「なぜ黒字に浮上できたのか」をチェックして、本業以外の利益だったり、黒字が一時的だったりする銘柄を除いていきます。あとは、バフェットと同じように「何で稼いでいるのか、それは続くのか」について自分が理解できる銘柄に絞って買うという流れです。

——馬渕さんの書籍『5万円からでも始められる!黒字転換2倍株で勝つ投資術』に詳細が書かれていますので、これから株を始めようとする方には読んでもらいたいですね。

馬渕: この手法の優れているところは、「再現性が高い」ことなんですよ。株式投資本の中には、初心者にはなかなか理解できない手法を紹介しているものがありますが、この手法は誰でもマネをすることができます。相場の状態の影響を受けにくいですし、売買のタイミングも「黒字浮上の時点で買い」「2倍に上がったら売り」と迷う必要がありません。少額から始めて大きな利益を狙うのに適した投資手法でしょう。

ただ、「この手法が絶対」などとは全く思っていません。「クロテン2倍株投資」を続けているうちに、「こうしたほうがいいんじゃないか」と思ったらどんどんアレンジして、自分流の投資手法に変えてもらえると嬉しいです。

ポイントは「自分が理解できる銘柄に投資する」こと!少額から始められて利益を大きく伸ばせる投資法とは?
(馬渕氏 書影)