わが子に適した習い事は何だろうか。最近は子供の将来を見据え、感性や美意識を磨くことができる新機軸のアート教室が注目されている。教室には「モノを平気で壊す子」がたくさんいて、そうした子供は「頭のいい子」でもあるという、なぜなのか――。

※本稿は、プレジデントFamilyムック『塾・習い事選び大百科 2019完全保存版』の掲載記事を再編集したものです。

わが子の「アートの感性」を磨けば将来大物になれる

子供の将来を見据え、感性や美意識を磨くことができる新機軸のアート教室が注目されている。その背景のひとつとなっているのが、2018年度ビジネス書大賞で準大賞となった『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社)。コンサルタントの山口周氏は多忙なビジネスエリートほど、足しげくアートスクールや美術館に通って、感性や美意識を磨いている、と書いている。

同書の主張は「ビジネスの勝負はアートで決まる」というもの。企業には、アップルの故スティーブ・ジョブズのように、人を魅了する商品やブランドの世界観をつくることができるアーティスト的な人材が不可欠で、こうした人材が活躍する組織にできるが明暗を分けるというのだ。

いま多くの日本企業が経営に行き詰まっている理由は、重要な意思決定においてデータや論理をベースにする「サイエンス」と、経験をベースにする「クラフト」が重視されすぎているから。これを打開するには感性や美意識をベースにする「アート」の比重を高め、3つのバランスを取ることが大切だと山口氏は訴えている(※)。

サイエンス&クラフトの2つを重視した意思決定の「結論」は、MBAで学んだ人材や経験豊かな人材が担当すればあまり変わらない。MBAホルダーなどが多くの企業に行き渡った今、「正解のコモディティ化(汎用品化して価値が下がること)」が起きているという。今後、経営にAIが導入されるようになれば、この傾向はさらに加速していくだろう。

※「経営にはアート・サイエンス・クラフトの3つのバランスをとることが大事」との考え方は、経営学者ヘンリー・ミンツバーグが『MBAが会社を滅ぼす』のなかで提唱。山口氏は『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』のなかで豊富な事例と照らして、ミンツバーグ説の正しさを支持。

世界のエリートが学んでいる「対話型鑑賞」とは?

豊かな感性と美意識のようなアーティスト的感覚は子供が大人になった時に大いに役立つに違いない。しかし、それらは一朝一夕には身につけることができない。そこで、プレジデントファミリー編集部では、ムック『塾・習い事選び大百科 2019完全保存版』の取材のために小学生などを対象とした2つのアート教室に出向いた。

プレジデントFamilyムック『塾・習い事選び大百科 2019完全保存版』の「ひらめき脳のを刺激するアート教室」より。(撮影=大森大祐)

1つ目は、千葉県佐倉市の佐倉市立美術館だ。同館では2013年よりNPO法人芸術資源開発機構(ARDA※)の協力を得て、地元の小学生などを対象にアートの対話型鑑賞プロジェクト「ミテ・ハナソウ」に取り組んでいる。

※ARDAは、誰もがもつアートという力を開発し、その可能性を社会に活かすことで、心豊かな社会を目指すNPO法人。2002年設立。アーツ×ダイアローグ(対話で美術鑑賞)事業は2011年開始。 美術館や自治体などと協働し、鑑賞コミュニケーターの育成、鑑賞プログラムの企画実施を行うことで、社会にアート・コミュニケーションの場を創出している。

このアートの対話型鑑賞による教育法は、1991年にニューヨーク近代美術館(MoMA)の教育部長だったフィリップ・ヤノウィン氏が開発したもの。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』でも、ビジネスエリートたちの感性の磨き方として、この方法を紹介している。学芸員の永山智子さんは、次のように説明する。

「対話型鑑賞が従来の鑑賞法と違うのは、作品に対する知識は問われないこと。まずは作品をじっくり見て、感じたままを言葉にすることから始めます」

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