本来、子育ては楽しいものだ。しかし子育て中の母親の多くは、いつも怒っている。なぜなのか。受験カウンセラーの鳥居りんこ氏は「日本は『子育ては母親の責任』という空気が支配的。このため母親たちは子育てがうまくいかないことにいつも悩まされている。こうした状態は母にも子にもよくない」という。子育てストレスをうまく解消する方法とは――。

わが子の「3大ないない」に途方に暮れる母

世の子育てをしている母親たちの多くは、息子・娘の存在に悩んでいます。「やる気がない」「勉強しない」「言うこときかない」。筆者はこれらを子育てにおける「3大ないない」と命名し、母が途方に暮れるこの時期を「ないない期」と呼んでいます。

『プレジデントFamily2018秋号』の「子育てにみんな悩んでいます! 小学生母505人アンケート」より

『プレジデントFamily2018年秋号』では小学校高学年の子を持つ母親505人の悩みをリサーチしています。この結果を見ても、母たちは一斉に「ないない」と言っています。例えば「学習習慣の悩み」に関する結果は次の通り。

「言われないと勉強しない」46%
「わからないことがあっても、自分で調べない」41%
「読書習慣がない」38%
「基礎学習が習慣になっていない」22%
「興味を持って夢中になっていることがない」21%
「辞書や百科事典、地図などを使えない」13%

多くの母親たちはまるで「子どもが○○しない」病にかかっているかのようです。「○○しない」ことは重罪で“正しい大人”にはなれないと猛烈に焦っているのです。

しかしです。思春期や受験期のわが子に手を焼く親から、大量の相談を受けてきた筆者に言わせれば、子どもは「○○しない」ことが当たり前の存在です。「○○できる」というような「ないない期」の反対の症例を持つ子供、つまり“できる・やれる”の「るる期」を快調に歩み続ける子供も稀にいます。この方々を筆者は「雲上人」と呼んでいますが、今回は除外します。

母親自身も「ないない」尽くしで嘆き悲しむ

「ないない」と母親が叫ぶのは子供に対してだけではありません。自分自身にも言っているのです。

今回の『プレジデントFamily2018年秋号』の調査でも、それは明らかでした。「欲しいものはなんですか?」との質問に母たちはこう答えたからです。

「お金」60%
「健康」18%
「時間」13%

子育てが始まると多くの母親は万年「睡眠不足」となり、また万年「時間不足」、そして万年「金欠」となるケースが増えます。さらに、子供を成人させるまでの期間は、年齢的に更年期にさしかかることが多く、子育ては「更年期VS.反抗期」の戦いともなるのです。

自宅の狭い空間の中で、子供も自分も「ないない」状態で角を突き合わせているようなものなので、バトルは避けられないでしょう。