わが子を自律した人間に育てるにはどうしたらいいのだろうか。プレジデントFamily編集部は、私立横浜創英中学・高校校長の工藤勇一さんと、教育ジャーナリストの中曽根陽子さんに取材。「自分で決めさせる」「失敗を責めない」「比較しない、焦らない」「あれこれさせない」という4つキーワードが出てきた――。

※本稿は『プレジデントFamily 2022 春号』の一部を再編集したものです。

わが子を自律した人間に育てるにはどうしたらいいか

「これからは教育熱心すぎるご家庭こそ要注意です」

どきりとする指摘をしたのは、自分のやりたいことを見つけていった子を数多く取材してきた教育ジャーナリストの中曽根陽子さんだ。中曽根さんのいう教育熱心とは、子供のために、親の視点で「あれもさせないと」「これもさせないと」と先回りしてしまうということだ。

子供時代からテーマを見つけ研究活動をしていたり、起業していたりする子の親の共通点は、子供視点を大切にしていたこと。つまり「子供が得意なこと」に注目していたというのだ。

「子供が好きなことを思い切り探究できる環境を整えてあげるのです。自分から進んで学べば、自信も持てる。だからどんどん深く学び、さらに探究できるんですね」(中曽根さん)

手をかけすぎない。自分で決める訓練を

工藤さんも「手をかけすぎないこと」を強調する。

「子供が自律するためには、あれこれと与えすぎてはいけません。与えられることに慣れてしまった子供は自分の人生に当事者意識がなくなり、うまくいかないことがあると何でも人のせいにするようになります」

日本の若者は当事者意識が低い
出典=日本財団「18歳意識調査」より抜粋

図表1の通り、日本の子供たちの自己肯定感は諸外国に比べてダントツで低い。少子化になり、親が子にいろいろと手出ししてきた結果だと工藤さんは考えている。

これまで学校では、どちらかというとトラブルを避けるような指導をしてきた傾向がある。教育は、困難に対して人の力を上手に借りながらも自分の力で解決できるよう支援することだと工藤さんは言う。

「多様な価値観で育った人たちと一緒に働き暮らす時代は、『思いやりを持ってみんな仲よく』では解決できません。多様性の中では対立は当たり前のことと受け止め、対立したときにどう合意形成をするかが重要です。例えばA案かB案かで対立が起きているケースでは、対話を通してA案では誰が不利益でB案では誰がどんな理由で不利益なのかを全員で確認し、誰一人置き去りにしない共通のC案を見つけ出すことが大事です」(工藤さん)

家庭で意見が割れたときなども、お互いの合意できるゴールを探して話し合う。家族間で決め事をするときも意識するといいだろう。

次からは、子供が自律するための親の心得を掲載。ぜひ子育てに取り入れてほしい。

現在発売中の『プレジデントFamily 2022春号』では、特集<探究! 理系! 国際! 新受験に強い子になる>として、<灘・開成・お茶の水トップインタビュー「今、家庭でやっておいてほしいこと」>、<AI時代に必修となる「算数」の最重要分野><広尾小石川、ドルトン、広島叡智 志望者殺到! 「国際系」中高一貫校の実力><「東大推薦」合格した子の小学生時代>などを紹介。ぜひ、手にとってご覧下さい。