昭和初期の人に比べ、現代人の食事にかける時間は半分(11分)に減った。東京慈恵会医科大学附属病院栄養部管理栄養士の赤石定典さんは「肥満の成人男性のうち約6割に早食い傾向があります。糖尿病など生活習慣病のリスクも高まります」と警鐘を鳴らす――。

※本稿は、『プレジデントFamily2021秋号』の記事の一部を再編集したものです。

カレーライス
写真=iStock.com/Hanasaki
※写真はイメージです

「10分で早食い」絶対NGの理由4

戦前(昭和初期)は約22分、現代は約11分。これ、何の比較かわかりますか?

答えは1回の食事にかける時間。家庭によって差はあると思いますが、現代の日本人は総じて早食い傾向にあると言えるのです。

もちろん、子供も同様です。夕食を10分程度で食べ終えているようなら要注意。今のうちにゆっくり食べるよう習慣づけることが大切です。

では、なぜゆっくり食べたほうがよいのでしょうか。理由の一つは肥満防止です。脳の満腹中枢は食べ始めて20分ほどで働き始めるため、早食いの場合、つい食べ過ぎてしまいがち。

子供のうちは運動量が多いので肥満に直結することは少ないのですが、そのまま早食いを続けて大人になると影響大。実際、肥満の成人男性のうち約6割に早食い傾向があるという報告があります。糖尿病など生活習慣病のリスクも高まるというわけです。

さらに、ゆっくり食べるとかむ回数も増え、消化がスムーズになります。食べた物が小腸に送られるときには3mmほどの小ささになっている必要があり、よくかむと、その分、胃で細かくする必要がなくなり、胃の負担が軽くなるのです。

しかも、そしゃくによって脳の働きを活性化することもできます。居眠り運転の予防にガムが効果的なのはそのため。よくかんで食事を取れば、勉強に集中できるでしょう。

また、意外に思うかもしれませんが、そしゃくはむし歯予防にもつながります。むし歯菌が増殖するのは、口の中が乾燥しているとき。よくかむと唾液がしっかり分泌されるのでむし歯菌が増えにくくなるのです。かむ回数を増やす秘策は“箸置き”

こうした利点から「1口30回、かむべし」というのが通説ですが、一口頬張っては「1、2、3……」と数えているとせっかくの食事が楽しめないですよね。

そこで、私がお薦めしているのは、一口ごとに箸を置く方法です。自然とかむ回数が増え、和食の作法も身につきます。子供用のかわいい箸置きを用意してやるのもよいでしょう。

献立を工夫することも欠かせません。現代の食事は昔より柔らかい食べ物が多く、そのためにそしゃく回数も少なくなっています。顎が細い子供が増えているのは、かまなくて済む食事の影響といわれているのです。

かむ回数が増えるのは、野菜、きのこ、海藻、こんにゃくなどの食物繊維が多い食材。毎日の食事に意識して加えてみてください。

逆に、早食いになりやすいのは、牛丼や親子丼などの丼物やカレーライスです。特にカレーはほぼかまずにするっと食べられるうえ、スプーンを使うことで早食いが助長されやすいのです。

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