文様のふ・し・ぎ 12 瓢

 瓢ともふくべとも呼ばれる夏の風物詩、ひょうたん。「ひょうたん」と声に出してみるとなんとも面白い響きがある。形そのものもユーモラスで、手のひらにのる小さなものから大きなものまでさまざま。目に涼やかな淡い緑がひょうたん棚からゆらりとぶら下がる様子に思わず笑みがこぼれる。その昔には中をくりぬき、

乾燥させたものを水やお酒を運ぶための容器、またお椀わんなどの器、そのほかにも装飾品として利用していた。 末広がりのおめでたい形から、古来お守りや魔よけとしても広く用いられたひょうたんは、文様の世界でも吉祥文とされ、三つ揃えば三拍(瓢)子揃って縁起が良く、六つ揃えば無病(六瓢)息災と、語呂を合わせて験を担いでいた。また、つるが伸びて実が鈴なりになることから子孫繁栄の願いも込められている。「千成りひょうたん」は豊臣秀吉の馬印としてあまりにも有名。多くの福を呼び込みそうなその文様を見ながら、高らかに笑う秀吉の姿を想像してみる。

 

【瓢(ひさご)】ひょうたんとは、ウリ科の植物でユウガオの変種。和語では、瓢。つる性で夏に白い花を咲かせる。その実の形の面白さから、着物や帯のモチーフとしても広く愛されてきた。中身をくりぬき乾燥させたものと区別するために、竹垣や葉、つるなどと一緒に描かれたものは「成り瓢」とも呼ばれる。

文=長谷川ちえ
エッセイスト、エッセイスト、器と生活道具の店「in-kyo」店主。移転先の福島県三春町は歴史のある寺院も多く町歩きが楽しい。http://in-kyo.net/


イラスト=山本祐布子

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