「世界を変える人、日本を変える人」 第2回
「CSRをきちんとやっていかないと、これからの企業は"もたない"」
小柴英子さん(ユニクロCSR部)
ユニクロは、3月と9月の年に2回、「全商品リサイクル」活動を行っている。年間4億着の衣服を販売する会社としての社会的責任とはなにか。全商品リサイクルは、そのひとつの答えでもある。何十万着もの服を、アジアやアフリカの難民キャンプまで無事に届けるためのパートナー探しから、受け渡しまでのすべてにかかわる小柴英子さんに、「仕事としてのCSR」について語ってもらった。
――いま、CSR部というところにいらっしゃいますが、以前からそういう仕事に興味があったのですか?
この会社に入るまで、CSRとか社会貢献の経験はまったくありませんでした。私はもともとGAPにいて、原宿店の売り場に立っていたんですよ。当時、同じ明治通り沿いにユニクロができて、毎日長蛇の列ができていた。ユニクロが原宿に出店した翌年、GAPでフリースが全然売れなくなりました。なんだ、あの化け物みたいなお店は!? と思って行ってみたら、接客がちょっと……。そこをもっときっちりやったらもっと売れるのに、と思い、ファーストリテイリングという会社に興味を持ちました。ちょうどユニクロ大学を立ち上げていた時期で、最初はその担当者として入ったんです。実際に入社してみると、同時期にできた社会貢献室に人が足りないからそっちにいってくれといわれて。私が行くまでは担当者が一人しかいなかったんですよ。私は大学時代にボランティアをやっていたわけでもないですし、想定外でした。でも違和感はありませんでした。祖母の実家がお寺なんですが、子供の頃から、世の中のためになることをしたい、という思いはどこかにありました。大学時代の友だちからも、今の仕事、あなたらしいね、ってよく言われます。
――どんな仕事をしてきたのですか?
最初は社会貢献室といってもいったい何をやる部署なのか、というくらいゼロから始めました。まず、とっかかりとしてやったのが瀬戸内オリーブ基金の活動です。店頭に募金箱を置き、従業員のボランティアによる植樹を行いました。そしていまやっている「全商品リサイクル」の前身となるフリースのリサイクルと、スペシャルオリンピック大会でのユニフォーム提供などを通じた支援、この三つから始めました。2004年にCSR部が起ち上がって、いまはユニクロのチームにCSR担当は5名います。社会貢献や環境対策以外にも、工場での労働環境監査とか、従業員のコンプライアンスなど、ステークホルダーごとに担当を決めています。私は社会と環境の担当です。
――ユニクロ「ならでは」のCSRのあり方についてどう思いますか?
ユニクロとしての社会への責任とか貢献ということで考えると、洋服を通じたかたちでの責任や貢献だと思うんです。ファーストリテイリンググループのミッションは、「衣料を通じて世界を変えていくこと」。社会的な課題に「年間で4億着」もの衣料を販売している企業として、何ができるかを考えたときに出てきたのが「全商品リサイクル」でした。「古着」を援助物資として送ることに対しては、抵抗感もありました。協力を求めたNPOやNGOの方からは、「古着なんて必要ない」と言われることもあり……。回収した衣服を全部エネルギー化したほうがいいんじゃないかというシミュレーションもやりましたが、しっかり選別したら90%くらいはまだ衣服として十分使えるんじゃないかと。あとは集めたものの送り先をどうやってみつけるか。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)さんと出会って、古着のニーズがある場所がたくさんあるということを知ることができました。現在、UNHCRと組んで、彼らの優先順位に基づいて、送り先を決めています。
――CSRの仕事で一番「燃える」のはどの部分ですか?
どの仕事もやりがいを感じていますが、ゼロの段階からイメージし、シミュレーションし、下調べをして実際の活動に落とし込んでいく部分が面白いです。たとえば、2006年から始めた「全商品リサイクル」。この活動をするにあたって、リサイクル関係の専門家や業者の方、ボランティア団体などを100人くらいたずねて、お話を聞いてまわりました。ネットで調べて直接電話をして行ったのですが、ときには間違えてちょっと怪しい会社に行ってしまい、「女一人で来てふざけるんじゃない!」なんて言われたことも……。そういうことが苦労といえば苦労だったんですが、いろんな人がいて面白いなぁと、結構楽しんでもいました。
――その「全商品リサイクル」は、今回で4回目ですが、感触は?
リーフレット、ポスター、ちらし、レシート印字などで告知をしているので、認知度は高まっています。回収ボックスは1週間くらいでいっぱいになります。お客様からは、いつでも持っていけるように通年でやってほしいというご要望もあります。前回は43万枚集まりましたが、今回はもっと集まりそうです。
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| 第1回目(2006.9)の全商品リサイクルで集まった衣料14万点のうち、6万着をネパールの難民キャンプへ。衣料品は最も必要とされている物資のひとつだが、現在、UNHCRによる衣料品配布は、資金不足により困難になっている。 (撮影=上岡伸輔) |
――集めた衣類の届け先は?
今まで、ネパール、タイ、ウガンダ、タンザニアの難民キャンプに届けていました。これらの地域には継続して届けていこうという方針ではあるのですが、今回は、もしかしたら6月あたりにエチオピアで配布をするかもしれないという話があります。衣料支援は手間や人手もかかるので、難民の期間準備がととのったなど、比較的落ち着いてきた段階で送る場合が多い。ただ、ネパールのキャンプが火事になったので、そちらには緊急支援として早急に出す予定です。
――リサイクルにはユニクロとしてどの部分までかかわるのですか?
お客様からお預かりした衣料なので、最後まで届けるところまでやります。難民キャンプの現地まで全部ユニクロがもちますというお約束でやっています。発展途上国の場合、盗難や転売といったいろんな問題が発生しやすいのです。そこがこの活動を始める前にリスクとして最も懸念していた点でもありました。解決方法としては自分たちが現地まで行って見届けるということと、それを一緒にやる信頼できるパートナーを見つけるということでした。私も毎回現地まで行っています。いろんな予防注射を打って……あと10年くらいは効き目があるみたいですよ(笑)。
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| 昨年3月に回収した衣料はウガンダ(写真)とタンザニアへ。ウガンダまでは片道20時間。タンザニアまではさらに飛行機を3度乗り継ぐ。写真中央がユニクロ執行役員の新田幸弘さん、手前が小柴さん。着る人の手に渡るまで責任をもって見届ける。(撮影=上岡伸輔) |
――CSRが会社のためになっているという実感はありますか?
ビジネスは作って、売って、作って、売って、というサイクルがありますが、社会貢献には区切りとか終わりがない。やってもやっても終わりがないし、どれだけの成果が出たのかを計る指標もありません。CSRによって企業価値が高まるといってもそれはどういうふうに高まっているのかが数値にならないんです。そこは悩むところです。全商品リサイクルでは、回収する数量をどんどん増やすことでお客様や世の中に知っていただくことになると考えています。
どれだけ利益が出たのかといわれても答えられる活動ではないところが難しいのですが、それでもCSRをきちんとやっていかないと、企業はこれから「もたない」という実感はあります。いま、UNHCRサポーターの大学生たちと勉強会をやっているんですが、彼らと話していると、彼らのような若い人たちのほうが世の中のことをよほどよく考えているなぁと感じます。こういう人たちがどんどん多くなってくるなかで、われわれみたいな企業も、彼らが「入りたい」と思うような会社になっていかないといけないし、私自身も彼らに恥ずかしくないような人間になっていかないといけないと思います。
――これからのCSRのあり方をどう考えていますか?
実は2年前から、立教大学大学院に通っています。「21世紀の市民社会のあり方」を教えるコースで、コミュニティデザイン学やソーシャルマーケティングを学んでいます。CSRという活動自体、新しい考え方なので、常に勉強していかないと変化についていけない。最新の情報に触れて、その世界でのネットワークを広げておきたいと思っています。今ちょうど論文を書いているのですが、内容は、ファーストトリテイリンググループのなかで全商品リサイクルの次にくるようなCSR事業の提案です。それが会社でできなかったら自分でやるかもしれないですけれども(笑)。将来は、自分でも社会的起業をやってみたいという気持ちもあるんです。そうはいっても、今こういうことができているのはユニクロという会社が儲かっているからであって、自分だけでやろうと思うと相当大変だと思います……。
――社内の他部門の人のCSRに対する理解はありますか?
私たちは、他の部署にいろいろお願いをしなきゃいけない立場でもあるのですが、みんな興味をもって楽しそうにやってくれますよ。売らなきゃ、売上げにつなげなきゃ、という動きとは別に、「いいことやってる」のが嬉しいのかな。やっぱり人はいいことをしたいんだと思います。世の中のためになることとか。
――今後の課題は何ですか?
全商品リサイクルで言うと、フロー自体を改善しなくてはいけないところはまだまだあります。いまは90%を難民キャンプに送っていますが、素材に戻して商品化することも考えていきたいですね。この「繊維のリサイクル」は、商社と組んで実験をすることになっています。
※※2008年3月度の「全商品リサイクル」は31日(月)まで、全国のユニクロ店舗で実施

ユニクロCSR部 










