人に教えたくない店 [441]

趣味は料理! チャーハンなんかは
玄人はだしと自惚れてますよ

張本邦雄さん

 
 

TOTO社長
張本邦雄
Kunio Harimoto
1951年、東京・両国生まれ。73年に早稲田大学商学部を卒業して、東陶機器(現TOTO)に入社。以後、営業畑を歩む。2009年4月に社長に就任。国内のリモデル(リフォーム)事業や海外住設事業、オンリーワン技術の開発を強化する「Vプラン 2017」を実施している。朝が弱く、新入社員ながらタクシー通勤をしていた。料理は食べるのも作るのも大好きで、弊社発行の食雑誌「dancyu(ダンチュウ)」の愛読者。今もカバンの中に、行ってみたい店の資料が4軒分ほど入っている。

構成・文/樺島弘文
撮影/武井メグミ、依田佳子(P119)

 
 

 齢58にして、単身赴任するとは思わなかった。昨年4月にTOTOの社長に就任したので、月の半分は本社のある北九州市小倉で過ごしている。それまで、東京、千葉ばかりに暮らしていたので、少々勝手が違う。

 小倉はいい町で、人情に厚く住みやすいし、食べ物も美味しい。が、如何せん、町が小さい。TOTOの社長として顔が知られてしまうと、どこにいてもよく声をかけられる。
 スーパーで3割引きの商品を買ったりすると、翌日には噂になっている。肉料理が好きで、洋食屋を探して出かけたが、小さな店なので周りの視線が気になった。しかも、夜は洋食居酒屋に変わるので、「デミグラスソースのかかったオムライスは昼だけです」という具合だ。
 飲み屋街も、東京あたりに比べるとこぢんまりとしていて、私くらいの年齢の者が行く店もほとんど決まってしまう。もちろん、行けば地元の人と会うので、プライベートでゆったりと過ごせるわけではない。間違っても、きれいなお姐さんと歩くことなどできない。
 気の休まる場所といえば、やはり家の中だ。若い頃から料理が趣味で、自分でもよく作っていた。単身赴任中の今も、平日こそ会食が多いが、週末にはキッチンに向かう。

 中華の炒め物には、ちょっと自信があって、チャーハンなんかは玄人はだしではないかと自惚れている。というのも、女房と中華料理店に出掛けたときに「普段、家で食べている(つまり私の作っている)チャーハンと同じね」と言っていたからだ。
 チャーハンのご飯をパラパラにするために「強い火力で鍋に押し付けるように炒めるのがコツ」などと言われるが、私のやり方は違う。炒めるときに、酒(できれば紹興酒)をかけるのだ。水分が多くなり、ベトベトになると思われがちだが、そんなことはない。焼きそばの麺をほぐすときに、水を差すのと同じ要領である。
 味付けは、調味料をひと通り揃えて、自分の舌を頼りに調える。30代の頃はレシピどおり作っていたが、今は計量スプーンも使わない。醤油、酢、みりんなどの基本調味料のほか、一味唐辛子、豆板醤、甜麺醤、タバスコなんかをよく使う。

 数年前、今家族が住む東京のマンションに引っ越す折に、使い込んだ北京鍋を「汚くて、大きくて、邪魔だ」と女房に捨てられた。ならばと、チタン製の北京鍋を新調した。これなら軽いし、きれいだ。むしろ軽すぎて振りにくかったのだが我慢した。
 ところが、そのチタン鍋も、単身赴任の最中に捨てられてしまった。これはショックだった。なんてことをしてくれるんだ。今度マンションを改装するので、それが成った暁には、絶対に新しい北京鍋を買おうと、心に決めている。

 
 
割烹
以志井 いしい


鯛の兜がどかんと入る、 名物の鯛めしは迫力の美味

●社用族が大半を占めるが、10年ほど通っている張本社長はプライベートで使うことが多い。「ここの鯛めしは絶品。冷めても美味しいので、残りをおにぎりにして持ち帰ります」。
●東京都港区新橋3-5-11
TEL.03-3508-9458
営業時間/平日17:00~23:00、土曜16:30~21:00(時間外の営業も応相談) 日祝休 カウンター10席・個室(2~10人)5室 喫煙可カード各種可


魚介類はほとんどが天然物。
  • 1.羽田沖で獲れる穴子は6~7月が旬。ぷるぷるの煮こごりがのった「煮穴子」1260円。
  • 2.看板料理のひとつである「鯛めし」1人前2100円で2人前~。鯛の兜を用いているため、コラーゲンたっぷり。しっかりめの味付けが張本氏好み。1人前1合とたっぷり炊き、残ったらおにぎりにしてくれる。
  • 3.黒あわびを2時間半じっくり蒸し上げた「あわびの酒蒸し」4725円。軟らかさのなかに適度な歯ごたえを残した独特の食感が絶妙。
  • 4.淡路から取り寄せた鱧を使った「鱧の照り焼き」1575円。コリコリとした骨が香ばしい。
  • 5.生きたおこぜをそのまま揚げる「おこぜの唐揚げ」、大きさにより1575 ~ 2625円。
単品料理のほか、コース(8925円~)もある。冬には名物のふぐ料理も登場する。

とんかつ
すぎ田


名店のロースかつは、 甘い脂がジュワッと弾け、後味すっきり

●「実は、すぎ田には女房と一緒に1回行っただけ。でもここのロースかつの旨さには舌を巻いた。それ以来、とんかつを食べるならこの店だ、と思い込んでいます」。味がくどくないので、年配のファンも多い。
●東京都台東区寿3-8-3
TEL.03-3844-5529
営業時間/11:30~14:00、17:00~20:30 木曜休 カウンター12席・小上がり12席 禁煙 カード不可


下町の名店「すぎ田」のとんかつは、分厚い肉と薄い衣が特徴。オランダ産のカメリアブランドの最高級ラードを使い、高温と低温で2度揚げする。力強い豚肉の旨さがしっかり感じられるが、後味はすっきりとして上品。豚肉は、産地は特定しないが、東京・芝浦の問屋に「わがままを言って」、厳選されたものを使用している。
  • 1.脂の甘い味わいがたまらない「ロースかつ」2000円。ご飯(漬物付き)300円。豚汁200円。
  • 2.きちんと火が通っているのにジューシーで軟らか。絶妙な揚げ加減の「ヒレかつ」2300円。
  • 3.大正海老など大きくて鮮度のいい海老を揚げた「海老フライ」2000円前後(大きさにより100円きざみで変動)。
  • 4.卵を3個分使い、表面にバターを塗って風味よく仕上げた「オムレツ」1200円。
 
 

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