人に教えたくない店 [429]
役を演じることと
サーフィンとはよく似ています
坂口憲二さん
食べ物関係のCMを多くいただいているのはとても嬉しいことで、親父に恩返しができたような気持ちになります。プロレスラーだった親父から「とにかく食え。残すな」と言われ続けて育ちました。うちのテーブルの皿数はすごく多くて、何がメーンだかわからないくらい。なんでも食べます。生きるうえで食べることこそ大事なのだと刷り込まれた感じです。
そのおかげか、背は順調に伸びました。体重がそれほど増えないのは、食べた分以上に走り回っていたことと、母親が痩せているせいかもしれません。プロレスラーは日に5、6回食事をするので、母は料理を作るのに忙しく、料理をゆっくり味わう暇がなかったのでしょう(笑)。
役づくりには入り込むほうで、カメラが回っていないときでも演じる役柄に感情移入します。台本や原作にない部分まで、自分なりに想像して人物像を練り上げる。それが芝居に迷ったときのヒントになるんですね。こいつは本当は几帳面だから、急いで書類をカバンにしまうときにも、きちんと束ねてクリップで止めるだろうな、とか。
それで悩みを抱えた男の役を演じる場合、彼はどんな食事をするかな、などと考えると、いつもよりも食べる量が減ってくることもあります。
仕事が一段落すれば、なにはさておき波乗りです。役を演じることとサーフィンとはよく似ています。どちらも自分をいかに表現するか。波の乗り方に個性が出ます。ハイテクが行き渡っている現代では、多くのことが予測できるわけですが、自然はそうはいかない。自分の力ではどうにもならないことも多い。
ボードに乗って波と対話するようになって、人間としていろいろな部分が鍛えられたと思っています。それが俳優の仕事につながっている。30歳になったとき「いい俳優になるためには、何をどう頑張ればいいのか」とよく考えてみたんです。そうしたら、やっぱり日常が大切かなって。その場だけでカッコをつけても、生き生きとした自分を表現することはできないように思えます。
紹介する2店で食事をすると、日々を突っ走るエネルギーが湧いてきます。まずは焼き肉。大勢で楽しめる炭火焼肉の「An」です。沖縄の「もとぶ牛」がすごく美味しい。さっぱりとした脂で箸が進みますよ。納豆ユッケなどの取り合わせが絶妙なメニューも多くて楽しめます。
「みゆき」は、九十九里に出掛けたときに必ず寄る、大好きなお店です。もともとは寿司屋ですが、地元の人が集う居酒屋みたいな店で、一品料理でも鍋でも、なんでも美味しい。波に乗るのは仕事が一段落したときですから、この店では心ゆくまで料理を堪能できますね。
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