ハーバード式仕事の道具箱 [167]
ミスばかりする仕事仲間とどうつきあうべきか
あなたの足を引っ張る
同僚の心理分析
締め切りを守れない、
仕事が必要なレベルに達しない、
計算を間違えてばかり……。
困った同僚のミスに巻き込まれたらどうするか。
対等な立場から原因を分析し、
対処する法を伝授しよう。
上司でないあなたは
ダメ同僚のミスにどう対処できるか
職場の建設的な人間関係が職務遂行に不可欠であることは、あらゆる専門家が認めるところだろう。では、同僚が責任を果たさず、あなたの仕事に影響をおよぼしているときは、どうすればよいのだろう。
期限に間に合わない、仕事が必要なレベルに達しない、計算を間違えるなどのミスは、知識や経験が足りないとか、ミスに気づいていないといった他愛ない原因のためかもしれない。
まず、問題が短期的なものか、長期的なものかなどを見きわめよう。バブソン大学のグローバル・リーダーシップ論教授で、『影響力の法則』の著者としても知られるアラン・コーエンは、次のように指摘する。「その同僚は適切な支援を受けていないかもしれないし、私生活で問題が生じているのかもしれない」。
まずは他の同僚から話を聞こう。あなたのとらえ方は彼らのそれと一致しているだろうか。MITスローン・スクール・オブ・マネジメントの経営学教授であるデボラ・アンコーナは、慎重な行動が大切だと言う。「問題に気づいていない人にわざわざ気づかせる必要はない」。
次に、その同僚と直接話をすることだ。あくまで内密に話し、相手を責めたりしてはいけない。
「われわれはうまくいかないことを個人の性格的な問題のせいにするきらいがある」と、ハーバード大学の心理学教授、リチャード・ハックマンは語る。
まずは共通の認識を築くために、互いの目標という文脈の中で問題を話し合うべきだ。「『どうすればわれわれの目標を達成できるだろう』と問いかけることだ」と、ハックマンは言う。
ミスの原因を自分はわかっていると思い込んではならない。ハックマンが言うように、自分の状況認識は間違っているかもしれないという前提で話を聞く必要がある。「どうなっている?」「私のとらえ方は間違っているかな」といった質問を投げかけよう。実際、ミスを本人が自覚していなかったとか、自分の行動が他人の目にどのように映るかに気づいていなかったというのはよくあることだ。
家族の病気のような短期的な問題が原因の場合は、手助けを申し出るべきだ。仕事を肩代わりするとか、ダブルチェックするとか、他の同僚に事情を説明するといったようなことである。
仕事を永続的に引き継ぐべきだということではない。状況が一時的なものであることを双方が了解している場合に、仕事をカバーするだけでよいのである。
原因がスキル不足のような長期的な問題にあるとわかったときは、解決策を考える手助けを申し出ればよい。その同僚はスキルを高める方法を見つけられるかもしれないし、上司の支援を求められるかもしれない。
放置したまま同じミスを繰り返させるのは、決してよい考えではない。「競争の激しい組織では、放っておいて自滅させるという誘惑にかられることがある。だがそんな環境で手助けをすればいっそう感謝してもらえる」とコーエンは言う。貸しをつくり、将来手助けしてもらうのだ。このような互恵関係は、職場での強いつながりの基盤になることが多い。
ミスが故意だと発覚した場合は
あなたの名誉を傷つけたり、手柄を横取りしたりするために、同僚が意図的にミスをしているという場合もある。
「このような状況は非常に厄介で対処しにくい」と、アンコーナは言う。が、幸い、これはきわめて稀なケースだ。「故意だと疑うのは最後の最後にすべきだ」とコーエンは語る。
攻撃を阻止するため、同僚と直接対決してもよい、とアンコーナは言う。うまくいかない場合、次の方法を試してみよう。
自分の仕事を目立たせる。だが、自慢はしない。受動的な表現ではなく能動的な表現を使おう。たとえば会議で「これらの分析は資源をどこに投入するべきかを示しています」ではなく、「私が行ったこれらの分析は、資源をどこに投入するべきかを示しています」と言うのである。
一つの仕事を共同でやっているときは、プレゼンで先頭バッターの役目を引き受ける。人々は往々にして最前列にいる人間をリーダーとみなすからだ。
賞賛されてしかるべきときにはきちんと賞賛を受ける。自分の関与を広く知らせたり、プロジェクトのどの部分が自分の努力の成果なのかを正確に上司に知らせたりする。
同僚の悪口を言うという行動に出てはならない。その同僚だけでなく、それを口にしたあなたの評判にも傷をつけるおそれがあるからだ。
あなたがいくら努力しても、同僚がミスをし続けることもある。こんなときは、自分を守るため積極的に行動すべきだと、専門家たちはアドバイスする。
できることなら、今後この人物と一緒に仕事をするのは避けたほうがよい。不可能な場合は、前述の、同僚が意図的にミスをしている場合と同様に対処する。上司にこれまでどのような策をとってきたかを説明してアドバイスを求めるのもよい。だが、上司の介入を求めているわけではないことははっきり伝えよう。
同僚の上司に話をするのは最後の手段である
同僚の上司に話を持っていくのは、事態がきわめて深刻になった場合に限定するべきだと、専門家たちは口をそろえて言う。同僚の反発を買って、人間関係に永久に修復できないヒビが入る危険性が高いうえ、あなたは「チームプレーヤー」ではないと解釈される可能性がある。
ベリサイン社のソフトウエア技術者、ドリュー・チャットにとって同僚との協力は絶対不可欠だった。コードは一人で書いていたが、必ず誰かが見直し、同僚のコードと合わせて完成品がつくられるのである。
同僚の一人、エディーはドリューと同じくらい優秀な技術者だったが、入社して日が浅く、この会社のやり方に慣れていなかった。彼は自分で勝手に判断して迅速に仕事を仕上げていたが、コードを見直す際、ドリューはしょっちゅうミスを見つけ、そのたびに直しを求めなければならなかった。
同じようなミスの連続についにうんざりしたドリューは、エディーに、コードを書き始める前に、仕事に何が要求されているか理解する手助けをしたいと申し出た。おかげで、エディーはベリサインの仕事のやり方について質問する機会を持てた。
「放っておいたら、どこがわからないのかといった質問すらできると思えなかったんだ」とドリューは語る。そして、エディーはドリューの提案を素直に受け入れた。着手前のやりとりに時間をとられはしたが、おかげでドリューは見直し時間を節約できたし、エディーと強い協力関係を築くこともできた。
アランと同僚との関係が壊れた理由
前述のアラン・コーエンはバブソン大学の学部長でもある。彼は以前勤めていた大学で、よき友人であり、学部の副学部長でもあったカールという人物と仕事をしたことがある。コーエンが提案していた新しいプログラムに、カールの承認を得る必要があったのだ。カールは会計学が専門だったが、その新プログラムにコストを割り振るにあたり計算ミスを連発した。
コーエンはカールを心配して、彼の上司に話をしにいった。が、途中でドアがノックされ、カールが入ってきた。彼の部屋は学部長室のすぐ隣で、コンクリートのヒビのせいでやりとりが聞こえたと、彼は説明した。
「われわれはその件には二度と触れなかったが、彼との関係を修復するには優に1年以上かかった」と、コーエンは振り返る。学部長に話す前に本人に話をしなかったことを悔やんで、彼はこう語る。「まず彼に話をしていたら、関係を壊さずにすんだだろうし、彼を助けることさえできていたかもしれない」。
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