大きな変化をチャンスに変える!勝ち組になるための資産運用術 人生はピンチの連続だ。しかしそのピンチとどう対峙するかで一転、好機に化けることもある。金融マーケットの動きもまたしかり。さて、あなたはこのピンチをどう捉えるか。Special Interview 蟹瀬誠一 国際ジャーナリスト キャスター
100年に幾度とないマーケットの混迷。いまこの時こそが、チャンスをつかむためのチャンスかもしれない。
会社や国にも頼らない積極的な資産形成こそが人生を幸福で豊かなものにする。「資産運用は永遠の素人」という蟹瀬氏が、体験的資産形成法と資産運用のエッセンスを語る。

 
 

「コア ・ サテライト投資」 でポートフォリオを組め

 僕は20代の早い時期から、50歳が人生の大きな区切りになる、と考えていました。セカンドライフという言葉は、自分が一度死んでしまうイメージであまり好きではありませんが、50歳をひと区切りとすれば、それからの10年は今までの蓄積を豊かな人生の実現のために使う、自分が幸せだと思えることを見つけて実現していくことへと少しずつシフトしていく。そして六十代は何よりも健康に生きる。セカンドライフとは、そういう意味だと理解しています。
 個人が保有する資産は四つに分けられると言います。①隠れ資産(公的年金・個人年金保険など) 、 ②金融資産(預貯金 ・ 株式 ・債券・投資信託など) 、③住居資産(住居・家具など) 、④個人資産(教育・知的資産・健康など)ですが、年金、特に公的年金については今後ほとんど期待できません。
 かつての日本の企業経営は、人中心の終身雇用制度であり、定年まで勤め上げればまとまった退職金を手にすることができ、これに公的年金をプラスすれば退職以後は悠々自適、という絵を描くことができましたが、今ではそれはほとんど不可能に近い。これからの人生プランを描く上で、残り三つの資産をどう殖やし、生かしていくかがカギになります。
 僕の場合、米国AP通信、フランスAFP通信の記者時代にいや応なしに培われた「自分の生活は自分で守る」という考えによって、精神的に楽な部分が大きいですね。何しろ給料は個別交渉で決められ、おまけに年1回の更改交渉がありました。 「お前はもういらない」と言われれば次の日からは収入の道が絶たれるドライな世界です。1年間何もしないで生きていけるだけのお金をどうやって手元に持とうかと考えた僕は、300万円を稼ぎ出すことを想定して株式投資を始めました。気持ちは楽観的ですが「どうにかなる」ためにも根拠を持つこと、すなわち資産形成が必要でした。根拠のない「どうにかなる」イコール破綻ですからね。株式投資とはもう30年以上の付き合いになります。
 僕は資産運用については永遠の素人だと思っています。どちらかと言うとリスク ・ テイカーなので、主体は株式投資。大きなトレンドを見極め、業界トップの企業の株式に投資するというシンプルな手法を中心に実践しています。2年をスパンに考え、業界トップ企業なら2年後には2倍になることを期待して、株価のアップダウンがあっても売りには出しません。 楽観的すぎるかもしれませんが、僕は雑駁な性格なので、これくらいのイメージがちょうどいい。一時は多数の銘柄を保有していましたが、現在は銘柄を四つまでと決めています。4つ以上だとウオッチしきれませんからね。
 一般的には「コア・サテライト投資」といって、元本保証の預貯金や債券など安全な金融資産をコアとして8、株式などリスクはあるものの高い収益が期待できる金融商品を2という比率で投資するのがいいと言われています。自分の性格を分析すればこの比率も変わってくるでしょう。僕はこの「コア・サテライト投資」の考え方を株式投資のポートフォリオに応用し、 コア銘柄を5として、 ローリスク・ローリターンの国際優良銘柄を長期保有し、残り5をサテライト銘柄としてハイリスク・ハイリターンの銘柄を短期保有しています。万が一サテライト銘柄が紙屑同然となっても、コア銘柄が値上がり益を出せば、長期で見ればリカバーできると考えたからです。
 人口が減少し、今後日本経済が縮小して貧しくなっていくことを見越せば、資産を外貨で持つというオプションも考えられます。僕は自分で使うことを前提にして、外国通信社の記者時代に住んでいたオランダ、娘の海外留学先であるイギリスの現地金融機関に、それぞれユーロ、ポンドを預けています。現地で使うのなら為替変動は関係ありませんからね。現金でヘッジすることも大切。僕はフリーランスなので退職金がありません。中小企業経営者のための退職金積立を利用して、60歳になった時、まとまった現金が手にできるよう月7万円を積み立てています。やはり流動性の高い現金を保有することは心強いですからね。

 大金を抱えて人生を終えては意味がない

 厄介なのは、自分が何歳で死ぬのか。この想定をどうするかが悩ましい問題です。僕は自分の親父が70歳で亡くなったこともあって75歳を想定していたのですが、とある老年学(Gerontology)の先生に「蟹瀬さん、90歳まで考えなきゃダメだ」と諭されました。となると仮に90歳まで生きた場合、想定外の15年は本当に辛いものになります。収入は無いし健康の不安もある。日本人の平均寿命が延びていることを考えれば、資産を運用して自動的に収入が入ってくる、お金がお金を生む仕組みを収入のあるうちから考え、人生の設計図を真剣に描くことがどうしても必要になってくるのです。
「こんなはずじゃなかった」とならないよう備えるのは、金融知識以前の小学生でも分かる理屈です。
 成功と幸福は似て非なるもので、いつまでも成功を追いかけていると幸せにはなれません。100万円あればもう100万円欲しいと考えるようになり、それが際限なく膨らんでいく。社会的な地位も同じで、もっと高い地位が欲しくなる。これは不幸なことです。自分にとってちょうどいい「こんなもんだよね」という状況。風呂でいうと42度くらいの温度がいいんです。
 世の中の幸せの9割はお金で買えますが、 残りの1割をどうするかが 「幸せ」に深く関わってきます。50代になると、このことが重みを増してきます。しかし、その9割についても経済的に不安を持たない生活ぶりをどうやって基礎として実現していくか。これが資産形成なのです。50歳になって始めたのでは遅いんじゃないか、ということはありません。
 一説によると、日本人は平均して3500万円を棺桶に持っていってしまうといいます。資産を運用し貯蓄に励んでお金を貯めても、1万円と書かれた紙きれをかき集めているだけで、これは実にもったいない話。貯蓄の目的を突き詰めれば消費に行き着きます。今使うのか、将来使うのかの違いはありますが、 お金は使ってこそ意味がある。ヨーロッパでは子供をさっさと自立させ、自身の人生を楽しんで、死ぬ時は資産ゼロ、というのが理想とされます。財産を残したばかりに子供たちの間で争いが起きることも珍しいケースではない。お金という道具の使い方についての考えを、ここで転換する必要があると思いますね。

住まい・人脈・健康も大切な資産形成の要素

蟹瀬 誠一氏

蟹瀬 誠一●かにせ・せいいち

1950年、石川県生まれ。国際ジャーナリスト・キャスター、明治大学国際日本学部教授、学部長。上智大学卒業後、米国 AP通信社記者、『TIME』誌東京特派員を経て、「報道特集」「ステーションEYE」「スーパーモーニング」のキャスターを務める。著書に、『4つの資産―成功の黄金法則・僕の場合』 (講談社)など多数。

 セカンドライフに向けた資産運用を考える前にすべきこと。それは、自分はどのくらいのレベルの生活をしたいか、そのビジョンを描くことではないでしょうか。東京のような都市に住む場合と、地方では生活コストもおのずと違ってきます。またタイなど海外の物価の安い国に半年、日本に半年住むというオプションもあるでしょう。これからどんな人生を送りたいのか、逆算していけば、そんな大金は必要でないはずです。プライベートジェットにハリウッド女優を乗せて世界旅行したい、というのなら話は別ですが。
 ここで大切なのは奥さんとよく話し合うこと。生活スタイルについては奥さんの意見を取り入れることをないがしろにすると、不幸を生みかねませんからね。
 僕は都会の利便性と、自然の恵みを併せ持った環境が理想と考え、軽井沢に家を建てました。56歳の時です。それまで賃貸派だった僕が、50代に豊かさをどのような形で実現するか、自分なりに決断した結果でした。将来収入が無くなれば賃貸住まいのリスクは大きい。収入が無くても雨露がしのげ、落ちつける場所が欲しかった。僕は30代の頃、通信社記者としてヨーロッパを巡った際に「マルチ・ハビテーション」という考え方に触れました。北欧やオランダなどでは、中流の人が普通にウィークエンド・ハウスを持っています。週末はここで家庭菜園の手入れなどにいそしみ、仕事のあるウィークデーは都会の家に住まう。こんな見聞も大いに影響したのでしょう。現在では港区の賃貸マンションはそのままに、週の半分は軽井沢暮らしです。
 人脈を広げることも大切な資産形成です。同じ組織、同じ業界ではない、違う世界の人と話し、輪を広げることが、年をとってから幸せになれるひとつの重要な要素だと考えるからです。僕は正に今、この幸せを実感しています。また、自分の健康に投資することも必要。健康を資産と考えれば、きっとお金も使いやすくなるはずです。
 世界的な金融危機が続いていますが、資産運用にとって今は再スタートのまたとないチャンス。こんなチャンスは100年に3回、4回しかありません。先だって香港の名門ロイヤルゴルフクラブでプレーする機会がありました。ここに来ている人は本当の金持ちばかり。彼らは今回の金融危機で大打撃を受けたはずですが、もう次の投資先をどこにするか考えている。日本に帰ると一億総悲観論。予想はしていましたが、このギャップには正直驚きました。日本のマスコミの論調がそうさせている、と言い切るのは簡単ですが、入ってくる情報量ではなく、その性質の違いが投資に対する考え方に反映しているのだと思いますね。
 情報に振り回されるのではなく、役に立つ情報をセレクトすることが資産運用には欠かせません。僕は投資に生かす情報ソースを限定しています。日本の新聞は一紙で十分。代わりにインターネットで見られるヨーロッパの通信社を1つか2つ、タイムズやエコノミスト、そしてCNNで大きな経済の流れをつかんでいます。
 チャンスはホームに入ってくる電車のようなもの。乗り込むことで先へと進めます。資産運用にローリスク・ハイリターンはないことをしっかりとわきまえて、賢明な選択と、幸せ実現へのステップを着実なものとしてほしいですね。  (談)▲▲


 
 
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