

資産運用の基本は、財産を有利なところに置いておくこと。預金が有利な時があれば、株式投資が有利な時もあります。よく「投資はギャンブルじゃないか」と言われますが、儲かったり損をしたり、という側面を見れば確かにギャンブルと同じです。例えば株式投資も、見方によっては100のものが1年後平均的に105くらいになって返ってくることを期待する賭けだと思えばいい。企業の生産活動に上手にお金を預け、企業が順調に利益を上げることができればそのリターンが返ってきます。この有利さを活用して、自分の財産をどこに置くべきかをドライに判断することが重要だと思いますね。
資産運用は生活の基礎技術です。毎日食事をするなら、体に良いものを食べたほうがいいのと同じで、お金を持っているなら、その時において有利な形、自分にとって最適な形にしておくことが大切です。お金の運用は仕事でも趣味でもありません。投資を楽しむという世界もありますが、自分のお金をどこに置くべきかを理解していたほうが得。これを知らないで済ますことは、危険であり損なことだと言わざるを得ません。
投資に対して疑念を抱く人がいますが、果たしてその疑念はどこから生まれているのかを考えてみるといいでしょう。もし「銀行が潰れるかもしれないし、インフレになれば目減りするかもしれない。しかし自分にはその判断材料がない」というのであれば、自分で判断できる知識を持つべきです。
一方、投資に介在してそれをビジネスとしている者に疑いを持つ人もいます。銀行や証券会社などの人間を信用できないケースです。このような人は「自分は客だから正しく扱われるべきだ」とか、「相手は正しいことを教えるべきだ」と考えてはだめです。まずはお客様意識を捨てること。銀行でも証券会社でも自分にとって有利で最適な商品を勧めてくれるとは限りません。「納得できるまで相談すればいい」と安心することは、赤ずきんちゃんがオオカミに相談しているようなもの。投資において他人を頼ることは、自ら付け込まれる種を蒔いていることと同じと考えるべきでしょう。
資産運用を始めるにあたっては、株式投資とはどういうものか、投資信託とは、外貨預金とはどういう仕組みなのか、などベーシックな部分を知っておけばいい。投資テクニックをつぶさに知る必要はないのです。日本には万の桁に乗るほど金融商品があふれていますが、その99%は検討に値しないものと私は考えています。私たちはこれまでほとんど金融教育を受けてこなかったことを考えると、「自分は資産運用について基本的なことは知らないのだ」という謙虚さからスタートするのがいいでしょう。
投資の世界は初心者向き、上級者向きという区別ができない厳しい世界です。お金の世界で働いているロジックをよく理解してハンドリングすることが重要で、自分の価値判断や付け焼き刃の金融リテラシーを拠り所にするのではなく、お金の使い方として合理的なのか、極めてドライな判断が必要。利食いだ、損切りだといっても、そもそも自分の売値、買値は市場には無関係です。
2009年の経済動向全体としては悪いですが、年後半には投資のチャンスがやってくると私は見ます。いま世の中で起こっていることは、90年代終わりの早回しのようです。1997年11月の山一證券破綻は2008年9月の米リーマン・ブラザーズの破綻にオーバーラップします。それ以降、経済の先行き警戒感から消費が低迷したことでは同じです。98年は年度ベースで見ると経済成長率マイナス1.5%とひどい状況でしたが、株価は前年比4%しか下がりませんでした。99年は一転して株価が28%上昇、不動産も買い場になりました。2008年10月以降、アメリカでは大手銀行に公的資金が注入され、米政府によるビッグスリー救済の議論もオバマ政権下で最終段階に入っています。いま日本でも一般企業への公的資金の注入が議論されていますが、なりふり構わず資金をばらまいて経済を立ち直らせようとしているのが現状。資産価格のリバウンドは必ず起こり、否応なしに投資のチャンスが巡ってくるでしょう。
株価や不動産価格は、まだ経済は悪化する、と見られる時こそ底。経済悪化が限界に辿り着いた、と見られる時はもう資産価格の上昇は始まっています。発射台が低いほど資産を長期で運用する場合は利回りが高いのです。
株式投資の長所は売買が公明正大であり、手数料も透明性が高い点です。投資の原理原則は3つ。分散投資するほうが合理的であること、なるべく分かりやすいものに投資すること、できるだけ手数料のかからないものを買うことです。
外国為替相場は専門家が見ても先行きは読めませんが、マーケットはフェアです。マーケットとはインターネットでつながっているので「自宅をカジノにして楽しむ」程度に考えたほうがいい。スワップポイントに期待するあまりレバレッジをかけすぎるのは、多額の借金をして外貨預金をしているのと同じ。金利差に目を奪われるのではなく、元本の為替変動に注意すべきでしょう。
私が注目する金融商品としては、リスクを取らず安全な資産運用を考えるのならMRF(マネー・リザーブ・ファンド=追加型公社債投資信託)や個人向け国債の10年もの。リスクを取ってもいいのであれば、ETF(上場投資信託)のひとつである日本株のTOPIX(東証株価指数)連動型ファンド、同じくETFで外国株の日本を除く先進22カ国の株価指数に連動するMSCI KOKUSAIなどが候補です。リスクを小さく抑える組み合わせとしては、日本株4、外国株6の割合が妥当だと考えられますね。
新興国投資に対する視線には相変わらず熱いものがあります。世界経済回復の道筋を考えると、遠からずアメリカ主導から中国をはじめとする新興国主導になることは明らかです。ただし、新興国市場は米国株式市場の値動きを2~3倍にしたイメージととらえたほうがよく、「主食」というよりは「スパイス」程度と考えたほうがいい。ポートフォリオを組む際も、日本株、主要先進国の株の割合を少し落として、新興国株を全体の5%程度に抑えるくらいをお勧めします。
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山崎 元●やまざき はじめ 1958年生まれ。東京都出身。経済評論家。東京大学卒業後、三菱商事に就職。以後12回の転職を経て現在は楽天証券経済研究所客員研究員にして、株式会社マイベンチマーク代表。テレビコメンテーターから週刊誌の連載執筆まで多忙な毎日をおくる。主な著書に「年金運用の実際知識」(東洋経済新潮社)、「超簡単 お金の運用術」(朝日新書)がある |
僕は40代に入って間もなく、自分を投資対象=ヒューマン・キャピタルと考え、その内容の組み替えを始めました。いずれ高齢になれば仕事量は減ってくる。しかしその時に働けるような仕事の場を用意しておこうと、何割かをサラリーマン、何割かをフリーランスにし、ヘッジをかけるウエイトを徐々に後者へと移しているのが今の僕の姿です。社会と関わりを持つには仕事がいちばんですし、張り合いもありますからね。
ヒューマン・キャピタルの組み替え準備は早いほうがいいと思います。定年間際になって蕎麦打ち教室に通ったからといって、いきなり蕎麦屋を始められるわけではありませんからね。年を取ったなら取ったなりの働き方はできます。人や社会に貢献することでお金も入ってきます。お金に余裕があることで、生き方の自由度は増し、お金があることで避けられる不幸もあります。自己責任で資産運用をすることと、働き方を組み替えること。お金の備えと生き方の備えは、セカンドライフを考える上で不可分だと思いますね。(談)▲▲











