人に教えたくない店 [405]

私は「卵かけご飯」を極めた男。
その研究成果をご披露しましょう

長嶋一茂さん

 
 
読売巨人軍球団代表特別補佐
長嶋一茂
Kazushige Nagashima
1966年、東京都生まれ。88年立教大学卒業後、ドラフト1位でヤクルトスワローズに入団。93年読売巨人軍に移籍、96年に現役引退。その後はスポーツキャスターを務めながら俳優としても活動。2002年、映画初出演初主演の『ミスター・ルーキー』で報知映画賞新人賞、日本アカデミー賞新人賞を受賞。05年には読売巨人軍特別補佐に就任。08年3月、初の製作総指揮、主演を務める映画『ポストマン』公開。スポーツ番組やバラエティのコメンテーターをこなすなど、その活躍は多岐にわたっている。


構成・文/須藤靖貴
撮影/椿 孝(長嶋氏)、奥谷 仁(「堀兼」「六本木 竹やぶ」)
 
 


 野球をやめて空手を始めた頃でしょうか。30を過ぎて体が思うように動かなくなってしまった。それまでは、とにかく運動量が多く、エネルギーが欲しくて大食していました。一食に肉2~3kgなんて当たり前。いわゆるエンゲル係数が高い状態です。それを量を節制し、旬の食材を味わうようにシフトしました。魚や野菜を旬のタイミングで食べること。体がずいぶんと動くようになりました。
 エンゲル係数という言葉、最近はあまり聞かれなくなりましたね。私はエンゲル係数は高いほうが絶対にいいと思う。やたらと食事にお金をかける、ということではなく、もっともっと食べ物に気を使おうという意味です。
 量から質に変わる。人間にはそんな時期があると思うんですね。食事に限らず、仕事も人付き合いも。質がなんたるかは、ある程度量をこなさないと見えてきません。人一倍大食してきたことは、とてもいい経験だったと思います。
 そういったわけで、40路にさしかかり、ますます食事にこだわるようになりました。そんな私が自信を持ってお勧めする二店です。
「堀兼」が素晴らしいのは、常に進化しているところ。私には飽きっぽいところがあって、いくら美味しくても続けて同じような料理を出されるとだめ。でもこの店は月に数回のペースで来ても、変化に富んだ季節感豊かな料理を食べさせてくれる。メニューの工夫にしても、若い板前の教育にしても、大将の気合が浸透しています。ここのカウンターで大将と話をしていると清々しい気持ちになります。
 私はたいへんな蕎麦好きで、昼食はほとんど蕎麦でもいいくらい。「六本木 竹やぶ」も若い店主の心意気がいい。ここの田舎蕎麦が目当てなんですが、一品料理がなんでも美味しい。あまり飲めないお酒も、少しいただこうかという気になりますね。豆腐と板わさ以外は全部自家製です。
 たまたまミシュランで星をもらうような店を紹介しましたが、高かろう美味かろう、とは思っていません。値段以上に美味しさと快適さがあります。逆に、値段の安いもの、シンプルな料理も大好きです。「卵かけご飯」は研究を重ね、極めたつもりです。米と卵がよければいいと思ったら大間違い。卵のかき回し方や醤油の垂らし具合など、気の使い方ひとつで味が全然違ってくる。中目黒「糸吉」、代官山「韻」、赤坂「古母里」、ぜひこの三店の卵かけご飯を食べてください。300円の料理だって美味しいものもあれば、美味しくないものもある。質の違いがしっかりとわかる。そんな男になるよう、精進しています。

 
 
和食
堀兼


堀内英弘の鋭い眼差し。直球勝負。ごまかしなし


●主人・堀内英弘さんの気合が漲る和の名店。工夫されたメニューにも「和食は出汁」という哲学が活きる。「一茂さんはシンプルなものが好み。ごまかしのない真剣勝負で料理を味わっていただいています」。
●東京都港区白金台5ー10ー13 メゾンITO 1階
TEL.03ー3280ー4629
営業時間/18:30~23:00 日曜・祝日休 7品の「おまかせコース」(2万1000円~)のみ。カード各種。



 おまかせコースの中から3品を。
  • 1.「河豚の白子とトリュフの粥」の芳醇さ、濃厚さ。塩蒸し、裏ごしした河豚の白子にフランス産トリュフ、たれに漬け込んだ卵黄を合わせる。たっぷりとした食感がたまらない。
  • 2.「大トロの薄づくり」は店主が世界一美味いと推す北海道産本マグロを使用。薬味を混ぜてトロで包み、納豆おろしで食べる。トロの脂の上品な甘味と薬味の香り高さが口中に広がる。
  • 3.自慢の「かぶら蒸し」。下にブリの粕漬けの焼き物が隠れている。深い出汁の旨味を堪能できる。

蕎麦
六本木 竹やぶ


六本木ヒルズの三冠王。蕎麦・つけ汁・酒に喝采を


●32歳と若い店主・苅部政一さん。「竹やぶ」柏本店の天ぷら蕎麦のあまりの美味しさに弟子入りし、8年間修業した。契約農家から仕入れた玄蕎麦を自家製粉。水は厳選の湧水を使用。香り高く腰のある蕎麦を堪能できる。
●東京都港区六本木6-12-2 六本木ヒルズレジデンスB棟3F
TEL.03ー5786ー7500
営業時間/11:30~15:30、18:00~21:30 日・祝は11:30~20:30 無休 カード各種。


  • 1.一茂氏お目当ての「田舎そば」(1260円)。蕎麦粉の産地、水、手挽きにこだわった蕎麦好き垂涎の逸品。つけ汁のバランス(出汁の強弱)が抜群で、蕎麦を引き立てる。
  • 2.蕎麦を手繰る前に「からすみ」(1890円)で一杯。3種(写真左はからすみの粕漬け、右は味噌漬け)ともに自家製。程のいい味加減で選び抜かれた日本酒が進む。
  • 3.温かい「天ぷらそば」(2625円)がまた美味い。店主が揚げる海老かき揚げは椀にのって供される。「かけ」を味わった後に天ぷらをのせるのも楽しい。
  • 4.「ゆりねの吹き合わせ」(特別メニュー)といった季節のつまみも充実。
 
 

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    「よし田」だけは誰にも紹介したくない。 「人に教えたくない店」って矛盾しとる(笑)
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