「200年住宅」に探る住まいづくり成功の5ヵ条<br />成熟化社会への移行が住まいのコンセプトを変えた
早稲田大学理工学術院客員教授
五十嵐健
Takeshi Igarashi
1943年生まれ。不動建設(現・不動テトラ)勤務後、九州国際大学次世代システム研究所主任研究員を経て現職。なども務める。著書に『200年住宅のすすめ「長く使える家」の経済学』(日刊建設通信新聞社)がある。
 
 

建物の資産価値を
超長期的に維持

 これまで日本の住まいは30年以下の寿命といわれ、建てては壊すという「スクラップ・アンド・ビルド」型の住宅が中心だった。近年、環境保護・環境貢献が社会・経済の重要な課題となるなか、この従来型の住まいづくりを見直そうという動きが出ている。それが「200年住宅」構想である。「200年住宅とは、耐用年数を意味するのではなく、超長期にわたって資産価値を維持する住宅、という意味を持つ」と話すのは、早稲田大学客員教授の五十嵐健氏だ。200年住宅は、建て主にとっても住まいづくりの成功のポイントとなる、と明かす。「これまでスクラップ・アンド・ビルド型の住宅でよかったのは、日本が高度成長社会だったからです。いま日本は、成熟化社会を迎えました。給料も地価も、以前のように上昇する期待は持てません。住まいに対する考え方も大きく転換しなけばならない。これからは、建物自体に価値を持たせる必要があります」

従来型住宅では
失敗する懸念も

 例えば、新築から20年後、ライフスタイルや家族構成が変わり、住み替えが必要になったとしよう。従来型の住宅では、建物価値はほとんど毀損され地価のみでの売却を余儀なくされかねない。一方、200年住宅なら土地、建物双方の時価を見込めるため、有利に売却できる。また、価値があれば、建て直すことなく、間取りを変更する程度で住み継いでいくこともできるだろう。将来のライフスタイルの変化まで視野に入れて建てるなら、従来型の住まいづくりでは失敗につながりかねない。200年住宅こそ成功者の選択というわけだ。
 では、どうやって200年住宅を手に入れればいいのだろうか。すでに住宅メーカー各社では、200年住宅に対応した商品やサービスを供給し始めている。耐用年数を飛躍的に延ばすとともに、ライフスタイルの変化に応じて間取りや空間の用途を変えられる構造を志向。リフォームをパッケージ提供するサービスもある。五十嵐教授は「住宅関連産業も新たな発展を見せそうだ」と予測する。
 五十嵐教授の話をもとに、住まいづくりの成功の秘訣を下記にまとめた。ぜひ参考にしてもらいたい。

日本の「スクラップ・アンド・ビルド」型の住まいに対し、ヨーロッパでは、100年前の建物であっても、建て直すことなく住み継いでいるという。

 
 

[成功の秘訣・第1条]まず「空間」と「環境」を確保する

 モデルハウスやモデルルームでは、ついつい最新の設備に目が向いてしまう。しかしながら、「住まいを設備で選んでは失敗する」と、五十嵐教授は注意を促す。設備は、後日の取り換えがきくからだ。
 五十嵐教授は、「まずは空間と環境の確保を最優先すべき」と力説する。将来のライフスタイルの変化に対応できるスペースがあるか、リフォーム等に耐えられる躯体・構造を有しているかを重視すべきというのだ。また、家族が長い時間を過ごす場所だけに、周辺環境や景観も重要。「こうした後日の取り換えがきかない要素こそ、住まいづくりの成否を左右する」。

[成功の秘訣・第2条]守るべきは建物の資産価値

 高度成長期、地価は上がり続けると考えられていた。このため、当初は小規模な住宅を購入し、年月を経たら地価の値上がり益を活用して広い住まいを手に入れるといった計画を立てる人が多かった。ところが経済が成熟化しているいま「不動産の資産価値を土地だけに求めるのは失敗のもと」と、五十嵐教授はいう。
 継続的な地価上昇を見込むことが困難ななかで、将来の住み替えなどに備えるには、建物の資産価値維持が不可欠なのだ。「中古住宅市場が整備されつつあり、リフォームローン等の開発・提供も進む。建物の資産価値を維持できれば、住み替え、リフォームなどの費用確保が容易になる」。

[成功の秘訣・第3条]設備は更新を前提に

 従来の日本の住まいでは、たとえ狭くとも高機能を目指す意識が強かった。とはいえ、キッチンや洗面台、バス・トイレといった水回り設備の耐用年数は15~30年。しかも、設備は新しいほど機能・性能に優れる。更新を前提としなければ、住まいづくりは失敗しかねない。
 五十嵐教授は「配管・配線もメンテナンスしやすい配置が必要」と指摘する。メンテナンスしやすい構造は、間取り変更に柔軟に対応できるメリットもある。「将来ゆとりが出たところで新たな機能を付加したり、少しずつ設備を充実させていく考え方もある。家族とともに成長する住まいを志向することが、成功のポイントだ」。

[成功の秘訣・第4条]提案力があるパートナーを選ぶ

 住まい手が、住まいへのこだわりを明らかにするのは大切なこと。しかし、プロの意見を無視しては、住まいを台無しにしてしまう。細部の使い勝手やデザインにとらわれるあまり、全体の動線や効率などに配慮できないケースが少なくないからだ。
 自分らしく、住み心地のいい住まいを実現するには、ともにこだわりの家を目指すことのできるよきパートナーを得ることが必要である。長期的な視野を持ち、住まい手の立場で提案する力のあるパートナーを選びたい。もちろん、提案を実現する多様なメニューを用意しているかも吟味したいところ。まずは、じっくりと話し合って、長く付き合えるかを確認してみよう。

[成功の秘訣・第5条]長期的な視野で資金計画を

 マイホームの購入・新築時の資金は、住宅ローンの利用が一般的だ。借入限度額いっぱいまでローンを設定する人も少なくないが、購入価格の2~3割以上の自己資金を準備することが望ましい。引っ越し代やカーテンなどのインテリアにも意外に費用がかかるので、住み替え全体の資金計画をしっかりと立てておこう。
 また、将来のメンテナンスやリフォームの資金も考慮しなければならない。特にメンテナンスは、資産価値を維持し、将来の活用の可能性を高めるのに不可欠だ。最近はリフォームローンなど、200年住宅を視野に入れた金融商品も提供されている。しかしながら、購入時のローンを抱えたままでは、審査が厳しくなることは想像に難くない。繰り上げ返済を利用するなどして、生涯の住コストを圧縮する方策を考えたいものだ。

 
 
PRESIDENT 2008年11.17号
PRESIDENT 2008年11.17号
税込価格 650 円
売り切れ
 
PRESIDENT公式twitterアカウント

メールマガジン <プレジデントニュース>

 
 

「プレジデント」編集部員による取材現場でのこぼれ話やビジネスマンに役立つオリジナルコンテンツ、新刊書籍案内などを、週1回のペースでお送りいたします。

メールマガジン申込・登録変更