ハーバード式仕事の道具箱 [156]

新しい職場ですぐに尊敬される上司になるには

着任1カ月で成果を出す管理職の鉄則4

 
 

新しい部署に管理職として移ることが決まったら、
すぐに異動先について調査しよう。
それによって人より早いスタートを切ることができる。

 
 
ローレン・ケラー・ジョンソン=文
text by Lauren Keller Johnson

ディプロマット=翻訳
 
 

異動する前に
スタートダッシュ戦略を準備する


 多くのリーダーが、新しい仕事に移ることが決まったらただちにその準備にエネルギーと関心を注いでいる。いったん仕事が始まったら、早く成果を出すよう求める圧力が高まるに決まっているからだ。
「いわゆる蜜月期間は、かつては90日だったが今では30日になっている」と、コロラド州ゴールデンの幹部養成コンサルティング会社、マーケットワン・エグゼクティブの創業者、カレン・アーモンは語る。
 今日、職務変更がたびたび行われることを考えると、マネジャーは新しい仕事に移る前にスタートダッシュ戦略を用意しておかなければならない。最も成功しているやり方は、同僚や顧客との面談やいくつもの独自調査によってビジネス上の課題と文化的課題の両方を把握するというものだ。
「自分が直面することになる大きな戦略的構図を理解するよい機会にもなる」と、ボストンのリーダーシップ・戦略コンサルタント会社、ジェネシス・アドバイザーズの共同設立者、マイケル・ワトキンスは語る。
 新しい職務について事前に査定するためには、「あらゆる種類の証拠を見つけ出そうとする人類学者」のように行動しようと、サンフランシスコのコーチング会社、マリポサ・リーダーシップのCEO、スーザン・ベサニスはアドバイスする。


ビジネス状況を把握する


 新しい職務が企業の階層のどこに位置していようと、その職務に任命されたマネジャーは、状況を診断する必要がある。ワトキンスは4種類の状況を挙げる。

1.スタートアップ:新しい企業、製品、またはプロジェクトを順調にスタートさせる。
2.再建:苦境にある事業体を正常な軌道に戻す。
3.再編:企業、部署、製品、プロセス、またはプロジェクトに新たな活力を吹き込む。
4.成功を維持する:成功している事業体の繁栄を維持し、次のレベルへと押し上げる。

 たとえばスタートアップの状況では、リーダーはプロセスや組織をゼロから築かねばならない。だが、「社員がすでに持っている硬直した考え方」に対処する必要はないと、ワトキンスは指摘する。それに対し、再建をめざすリーダーは、厳しい時間的プレッシャーを受ける場合があるが、部下たちはおそらく変革の必要性を受け入れるはずだ。
 また、複数のレベルで診断作業を行う必要がある。たとえばマーケティング部門のリーダーは、一つの製品ラインについては再建の状況に、別の製品ラインについては成功を維持するシナリオに直面することになるかもしれない。「研究・開発グループを率いることになったマネジャーは、おそらく個々のプロジェクトの状況を査定するだろう」と、ワトキンスは言う。
 状況を診断したら、新しい職務への戦略を立てよう。テキサス州アーヴィングに本社を置くエンジニアリング・建設会社、フルオールでインフラ・グループの戦略・マーケティング担当上級副社長に任命されたボブ・プリートの例を紹介しよう。プリートはその新しいポジションで仕事を始める前に、それまでの仕事で友好関係を築いていたフルオールの顧客企業のリーダーに次のような質問をぶつけた。「異動する部署が現在直面している課題は何か。強みは何で、弱みは何か。私は何を持ち込むことができると思うか。どこで問題にぶつかる可能性があるか」。こうした質問に答えてもらっていたおかげで、彼はその職に就いたとき重要な変革構想を指揮して成功に導くことができた。


部内のカルチャーを見極めよう


 新しい部署で、決定はどのように下されるか、どのような行動や態度が賞賛され、また処罰されるか、社員間の協力はスムーズに行われるかといったことは、文化によって左右される。文化を把握するには、その会社の内外の幅広い人たちに会って、自分が行く予定の部署では実際はどのように仕事がなされているか、社員間のコミュニケーションや信頼関係はどうかを聞いてみることだ。
 誰に話を聞くかという選択も重要である。「私の経験では、すでにその会社を辞めている人間のほうが、文化その他の特徴について公正な見方をしていた」。ミルウォーキーに本社を置くジョンソン・コントロールズのオプティマ・バッテリー事業部ゼネラル・マネジャー、スティーブン・シャーンホーストは、その職を引き受ける前に行った聞き取り調査についてこう語る。
 シャーンホーストは元社員に加えて、その事業部の性格をよく知っているサプライヤーや他のビジネスパートナーからも話を聞いた。文化についてのこうした事前調査は、実際にその職に就いてから、彼が自分の開始したプロジェクトに支持を勝ち取るのに役立った。おかげで、彼は信用を築くことができた。
「カフェテリアで1時間観察すれば、ずいぶん多くのことがわかる」と、ロサンゼルスの幹部能力開発会社、マクレール・グループのトップ、チャーメイン・マクレールは言う。「彼らの会話は率直で遠慮がなさそうか。同じレベルや同じチームの人とだけ食事をしているか。それともレベルやチームに関係なくいろいろな人と交流しているかを観察しよう」。


誰が政治的影響力を持っているか把握


 部内の政治状況を把握することも、文化やビジネス状況を査定することに劣らず重要だ。従来型の組織図からは、会社の実際の権力力学は概してほとんどわからない。
「誰が政治力を持っているかを見極めるためには、会議に参加して誰の発言に耳が傾けられるかを観察することだ」と、マクレールは勧める。「影響力のある人物はどのような言葉を使い、他の出席者はそれらの言葉をどのように解釈しているかに注目しよう」。
 新設されたポジションには特に厄介な政治的挑戦が伴うことがある。新しいリーダーの前に政治的思惑を持った連中が立ちはだかる場合は特にそうだ。ピート・コナーは、カリフォルニア州サンノゼのエレクトロニクス会社、カデンス・デザイン・システムズに新設された業務グループのディレクターに任命されたとき、これを体験した。特定の製品ラインを監督していた同輩のマネジャーが、コナーがこのグループのリーダーになることに反対したのである。「彼は私の部下たちが私ではなく彼の指揮下に入るべきだと考えていたんだ」と、コナーは振り返る。「この点についてわれわれの意見が一致しないことは明白だったが、敵に回したら彼は多くのトラブルを引き起こしかねないということもわかっていた」。
 妥協策として、コナーは業務グループを自分の思い描いていた職能別の組織にするのではなく、製品ライン別の組織にすることに同意した。しばらくすると、新しいグループの価値が明白になり、彼はより自由に動けるようになって、自分の望むような組織構成に変えることができた。
 事前に何もかも知ることは不可能だ。が、多くの人に話を聞いて、たくさん質問すればするほど、そして鋭く観察すればするほど、新しいポジションで最初から成果をあげられる確率は高くなる。

 
 
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