人に教えたくない店 [402]

「清く正しく美しく」を落語家に
求めるなんて世の中おかしい

立川志の輔

 
 

立川志の輔

Shinosuke Tatekawa
1954年、富山県生まれ。83年、29歳で立川談志門下に入門。90年には文化庁芸術祭受賞、立川流真打ちに昇進する。2007年、文化庁芸術選奨の大衆芸能部門で文部科学大臣賞を受賞。当代きって“チケットが取れない噺家”。1カ月公演の渋谷「志の輔らくご in PARCO」(毎年1月)、新宿「志の輔らくご21世紀は21日」、横浜「志の輔 no にぎわい」、富山ではほぼ毎月、定例公演を行っている。また、14年目になるNHK「ためしてガッテン」の司会、ラジオのパーソナリティなど幅広く活躍中。

構成・文 斉藤由利子
撮影 川井 聡
 
 


 食べても何料理なのかよくわからないところがあるし、どこから集めてきたかわからない調度品が無造作に置かれているわ、色彩はめちゃくちゃだわ。そして流れる音楽はビートルズだったり。とにかくだだっ広くて仕切りも何もないのに、どこに座っていても落ち着く。そのうえ、何を出されてもおいしい。「開化亭」は、この程がよい感じが気に入っています。
 出会いは10年ほど前、「広告批評」にいらした天野祐吉さんに連れてきていただいたのがきっかけです。本当に旨いものをよく知っている人ですから、ありがたい引き合わせでした。

 この店でただ一つ決めていることは、落語を引きずらないということ。落語会の後は必ず打ち上げなので自由に飲める日はあまりないのですが、打ち上げには絶対に使いません。それでなくても四六時中が仕事。落語家には仕事でない時間はほぼありません。
 でも、365日落語をやっていたら頭がおかしくなってしまいます。落語は「やりたい」と思って臨むペースが大切で、趣味的感覚が重要だと思います。
 格好よくいえば落語家は芸術家。「芸」は才能などのことで、「術」は、いつも楽しい気分でしゃべれるように自分を調整する術に長けているという意味だと思っています。

 でも、摂生はしません。自堕落ですから、酒は好きだし、煙草も飲む。だから次のライブをどんな調子で迎えることになるのか、楽しみであり、悩みでもあり、実はワクワクしているんです。まれに体調がものすごく悪く、気分も乗らない日があって、「さて、今日はどう乗り切りますか」と自身に問いかける。その瞬間だけプロになります(笑)。
 ほんのちょっとでも戦っている姿は見せません。これも「術」。そのためにも、お客さんにはいい加減な商売だと思っていてほしいのですが、世の中のベクトルがおかしな方向に向かってしまい……落語家に清く正しく美しくを求めてくる。本来なら落語家が品行方正に生きているほうがニュースのハズ。世の中、清くなく美しくないニュースが多すぎるから、みんなくたびれて余裕がなくなっているのでしょう。痛し痒しの日本です。

 そんな鬱屈を吹き飛ばしてくれるのが、「はま作」で楽しめるわが地元の味です。富山の本店は実家と500メートルくらいしか離れていず、僕が18年間食べ続けた味がここにはあります。富山湾のキトキトの魚が直接届くので季節ごとに足が向きますし、イカが最高に旨い。僕にとっては、故郷が歌舞伎座の裏にやってきた感じ。
 贅沢でしょう。

 
 
中華料理
開化亭

摩可不思議
魅惑の「骨董品中華」へようこそ


●創業は1978年。骨董品店より中華料理店に転身した。レトロな店内に並ぶアンティークな調度品は、実はすべて売り物。酸辣湯麺、担担麺各1500円など、麺ファンも多い。「昔ながらの○○料理」という怪しい看板が目印。
●東京都港区南青山7-8-1 南青山ファーストビルB1F
TEL.03-3406-3657
営業時間/11:30~14:00(LO)、18:00~22:30頃(LO) 日曜定休・祝日不定休 カード不可


  • 1.名物の五目おこげ(3~4人分)2500円。店内に響く轟音もご馳走だ。和食に通じるさっぱりとした味わいでするする入る。
  • 2.“もんごういかのレタス包み”2800円。イカのおいしさもさることながら、特筆すべきは長ねぎダレ。「つくり置くとこの風味は出ない」と店主の町田博さんは混ぜたてに執着する。
  • 3.“黄ニラとアワビの炒め物”4000円。黄ニラのシャキシャキとアワビのむっちり。食感の妙味も魅力だ。志の輔さんはビールで喉を潤した後、「老ロック」と呼ぶレモンスライス入り老酒ロックに切り替える。
  • 4.“牛肉の紙包み揚げ”1個800円。肉に下味をつけるオイスターソースにはトウチをプラス。深みのある味わいが肉のやわらかさを引き出す。

和食
新湊 はま作

親から息子へ。
富山きっての海産美味が銀座に直送される


●射水市(旧・新湊市)にある「浜作」の長男、浜守淳さんが料亭などでの修業を終えて店を構えたのが9年ちょっと前。本店の目利きで届く鮮魚、女将さん手づくりの干物など、富山を愛する富山県人からも贔屓にされている。
●東京都中央区銀座3-13-6 銀座KIビル1F
TEL.03-3541-2209
営業時間/17:30~21:30(LO) 土曜は予約営業(3日前まで、コースのみ) 日祝定休 カード可 ※要予約


単品もあるが、おまかせのほうが北陸の味覚を堪能できる。写真は7500円のおまかせ料理より。冬場はぶりしゃぶコースなどの特別メニューも登場。
  • 1.富山県人は干物好き。本店の女将さんが北風が吹く日だけつくる干物の旨さは、鮮魚に勝るともいわれる。いまや高級魚のノドグロ、イカ、富山湾のゲンゲ。思わず地酒・立山に手が伸びる塩加減だ。
  • 2.紅ずわい蟹。本ずわい蟹より旬が長く、9月~翌5月上旬まで味わえる。蟹ミソをつけて味わえば、この世のものとは思えぬ絶品。
  • 3.本店譲りの名物わっぱ飯。酒の肴になる味わい。
  • 4.お造り2点盛りは、真鱈の昆布〆とバイ貝昆布〆は新湊の甘醤油で味わうのが志の輔流。
 
 

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