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長い間、企業など組織の中で働き、そこから去る時をひとつの区切りとして、その前を仮にファーストライフとするなら、以後の時間を世間一般にはセカンドライフと呼んでいるのでしょう。しかし僕にはセカンドライフという概念がありません。僕はサラリーマンの時代は終わりを告げ、プロフェッショナルの時代が来ていると考えています。各人が自分のキャリアを積み重ねていく。それがプロフェッショナルです。生きていくためには何かのプロフェッショナルにならなければなりません。各人が企業に属しているか、いないかは重要な意味を持たない時代になったのです。僕は今後も生活スタイルや仕事のパターンを変えるつもりはないし、リタイアするつもりもありません。一生プロフェッショナルとして働きたいと思っています。 仕事を持つ人が将来の資金について自己の責任において運用することは、ひとりのプロフェッショナルとして当然やるべきことです。国の年金制度は破綻しているといって間違いない状況。となると民間の個人年金に加入するか、貯蓄するしか道はありません。国に頼っても国が何とかしてくれるといった期待は持たない方がいい。国が何とか年金制度を維持しようとすれば大増税をしなくてはならず、それは結局個人の負担となって返ってくるのですから。この意味でも個人の資産運用は重要になっています。
仕事を持つ人の資産運用はディフェンシブな方がいい、と僕は考えますね。保守的ですが預金などキャッシュに近い形で資産を持つ。そしてリスクを取る資産運用をする場合は、シェアを限定的にして中長期で運用するのがいいですね。株式投資も長期保有を原則として、それができないようなら株式投資はすべきではないと思います。僕は時間的な余裕もないので、あまりアクティブな資産運用はしていません。あくまでディフェンシブ。デイトレーディングをしたって、結局はプロのトレーダーには勝てないのですから。
リスク商品で資産運用するためには、情報をしっかり取ること、そして入手した情報を常にフォローすることが大切です。しかしこれがなかなか難しい。売る方は必ずしも情報をオープンにしてくれるとは限りませんし、テクニカルな用語が多く、一般の人にはすべて理解することは難しいときている。情報は時々刻々リアルタイムに変化し、一日で大きく状況が変わります。リスク管理が以前より難しくなっているのは事実で、株価や為替が乱高下している昨今の世界金融危機の状況であればなおさらです。
リスクはマーケットの近くに張りついていないと、その度合いは分かりません。マーケットが乱高下している状況では、証券会社の営業担当者も実際のリスクについて掴みきれていないんじゃないでしょうか。
資産運用の原則は欲張らないこと。欲張りな人ほど損をするのですから。そこそこのリターンがあり、最終的に元本が保証されればそれでよしとすべきでしょう。インフレ懸念も無いので、資産のかなりの部分を預金、国債、絶対倒産しない電力ほか優良企業の社債など、元本保証のものに入れておくのが安全だと思いますね。元本保証を念頭に置きながら、限定的な資産をリスク商品で運用するのが真っ当な方法。リスク商品で資産運用する場合は、それなりの覚悟が必要です。しっかりとした情報源を持ち、それをフォローすること。局面によっては「売りなさい」という助言をしてくれる信頼すべきアドバイザーを探せると心強いですね。本来は証券会社など金融商品を売る側が個人投資家に対してそうあるべきなんですがね。
日本人の投資パターンは「買い」が中心ですが、右肩上がりの相場を前提にしての投資はいけません。上がったものは下がるし、下がったものは上がる。右肩上がりを信じて「買い」ばかりやっていたのでは損をするのは当たり前。現在のような世界同時株安、円高の状況では「売り」から入り、あとで買い戻すのもひとつの方法です。
前FRB議長のアラン・グリーンスパンが言うように、今回の世界金融危機は百年に一度の危機であることは間違いありません。底が抜けて大恐慌になるのは防げても、信用の最たる存在とも言える銀行同士がお互いを信用せず、インターバンク取引がまともに成立していない状況は極めて深刻です。
今日の危機に至るプロセスをざっと振り返ってみると、1990年頃からインベストメントバンクやヘッジファンド、エクイティファンドなどが自己資金でリスクを大きく取った取引を拡大させました。一方、金融機関がCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を売ることにより、あたかもリスクが軽減されたかのような状況が生まれていました。このように異様に膨張した金融ピラミッドが形成されたのです。しかしそのピラミッドが崩壊して、クレジットがどんどん縮小しているのが今の状況です。あらゆる資産の価格は下落し、世界同時株安が起こっている。この状況は今後2年ほど続くと見ています。2年後には金融の世界の景色は現在とは違ったものになっているでしょう。また、金融監督体系も変わっているでしょう。09年にはどういう金融監督体系にするのかの具体的な議論も始まると思われます。「ウォールストリート型」金融マーケットの崩壊後は、従来の「日本型」に戻る可能性もあります。例えば日本の証券会社はブローカレッジとアンダーライティングが主な仕事です。金融機関が自己資金でレバレッジをかけたハイリスクな投資は行わないという保守的なスタイルに戻るのではないでしょうか。
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榊原英資●さかきばら・えいすけ 1941年、東京生まれ。東京大学経済学部卒業後、大蔵省へ。その後ミシガン大学で経済学博士号を取得、国際金融局長に就任。97~99年には財務官を務め、「ミスター円」と称される。現在は早稲田大学インド経済研究所所長。『経済の世界勢力図』(文藝春秋)、『強い円は日本の国益』(東洋経済新報社)など著書多数。 |
今回の世界同時金融不安の影響で、株式や投資信託で大きな損害を被っている個人投資家は少なくないはずです。ではこの状況にどう対処したらいいのでしょうか。損失が出ている資産を塩漬けにするのもひとつの方法。四~五年待つ覚悟があるのなら、いずれ戻る可能性はあります。待てないのであれば、早く損切りすべきでしょう。
これから投資を始めようという人は、極力リスクを取らないことです。現在の状況では「下がったら買う、上がったら売る」というレンジ取引の手法は通用しません。国際的な金融の世界が様変わりを始めようとしている今、従来の常識は通用しにくくなっているのです。外貨投資も円/米ドル以外のマーケットは流動性が低く、いわゆるクロス円取引の為替リスクは大きいことも知っておくべきです。
日本のアメリカ発の金融危機によって日本の企業収益が本格的に悪化していくのはこれから。仮に企業収益が40%下落すると、PERは大きく上がります。こうなるとこの企業の株式は売られるしかない。株価も下落すると見られますが、配当利回りを重視すれば株式投資にも活路はあります。収益悪化により配当を下げる企業もありますが、電力など絶対に潰れない企業などは、配当を一気に下げることはないでしょう。
株式相場はボラティリティ(価格変動率)が高く全体的には下げ基調。国の政策をもってしても、株価を戻すことはできません。現在の状況をシビアに見て、自分や家族を守るひとりのプロフェッショナルとして、リスクを十二分に理解した慎重な資産運用を心がけてほしいですね。 (談)▲▲








