人に教えたくない店 [393]
学校の調理実習で、どんな手を
使ってでも友達に勝ちたかった私は……
井上和香さん
女同士で、ガッツリと食べられるお店はいいですね。男性と一緒だと、「もう私、おなかいっぱ~い」と言わなくてはいけないタイミングでも、思う存分食べられるから。お店の主人に「まだ食うの?」と呆れられながらガツガツ食べてますよ(笑)。
焼き肉なら私に任せてください。2~3日なら連チャンで食べても平気です。女同士だと、逆にフレンチなんかは行きづらいんです。ナプキンを置かれて、イス引かれたりすると緊張しますよね。そういうところには男性に連れていってほしい。
中華は、大勢で行かないとたくさん食べられないイメージがあって、あまり足が向かなかったんですけど、「陳」の麻婆豆腐を食べてからは、時々食べずにはいられなくなってしまいました。花椒を大量にかけて、舌が痺れる辛さを味わいます。
「鳥岩楼」は、東映の京都撮影所で時代劇を撮っているときに教えてもらって行ったお店。鶏鍋の、あの白濁したコラーゲンたっぷりのスープを啜るのが幸せです。その数日後は、お昼に親子丼をいただきました。黄色い卵がトロトロで、少し甘味が強めだけど、それがごはんとぴったり合うし、名物のスープも付いてくる。私の父は昔、大阪で京料理の修業をしていた板前で、その手料理を子供のときから食べていたから、京都のごはんが余計においしかったのかもしれません。
板前の父のおかげで得したことはたくさんあります。まず、家の食事が豪華だった。店で余った中トロとかを子供のときから食べていましたし、料理のコツも教えてもらいました。ダシは、カスをちゃんと取るひと手間をかけるかどうかでガラッと味が変わるとか。作り方も、料理本のように「大さじ何杯」ではありません。たとえば醤油なら、垂らす速度と時間の目分量。味見をしながら、煮詰まる量も考えて作るから応用がきく。学校に持っていくお弁当で友達に絶対負けないのも自慢でしたね。
そう、私は負けず嫌いなんです。小学校6年生のとき、家庭科の調理実習が鯖の味噌煮で、班の対抗戦をする予定でした。どんな手を使っても勝ちたくて、前日父に聞いたら、「煮る前に一瞬魚をお湯にくぐらせて臭みを取って。生姜も多めに入れなさい」と言われてその通りにしたら、めでたく一番になりました。
これまでに食べた一番おいしい料理といえば、やはり父の作る料理、「里芋のあんかけ」です。里芋を茹でて裏ごししたものにウニを混ぜて、丸めて小麦粉をつけて揚げる。それにダシ入りのあんをかけて、ワサビをのせて食べます。ネットリした里芋の食感と、油の香ばしさといったら……。この味だけは、一度食べてもらわないことには伝えようがありません。
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