人に教えたくない店 [393]

学校の調理実習で、どんな手を
使ってでも友達に勝ちたかった私は……

井上和香さん

 
 
Waka Inoue
1980年、東京都生まれ。2002年に雑誌「BOMB」でデビュー後、バラエティ番組やドラマ、映画、舞台など多方面で活躍。08年7月11日から20日まで、新宿・紀伊國屋サザンシアターにて、同名のベストセラー小説を舞台化した「エブリ リトル シング」に出演中(詳細はインセントホームページhttp://www.incent.jp/を参照)。

構成・文/本誌編集部
撮影/大井一範(陳)、川島英嗣(鳥岩楼)
 
 

 女同士で、ガッツリと食べられるお店はいいですね。男性と一緒だと、「もう私、おなかいっぱ~い」と言わなくてはいけないタイミングでも、思う存分食べられるから。お店の主人に「まだ食うの?」と呆れられながらガツガツ食べてますよ(笑)。
 焼き肉なら私に任せてください。2~3日なら連チャンで食べても平気です。女同士だと、逆にフレンチなんかは行きづらいんです。ナプキンを置かれて、イス引かれたりすると緊張しますよね。そういうところには男性に連れていってほしい。
 中華は、大勢で行かないとたくさん食べられないイメージがあって、あまり足が向かなかったんですけど、「陳」の麻婆豆腐を食べてからは、時々食べずにはいられなくなってしまいました。花椒を大量にかけて、舌が痺れる辛さを味わいます。
「鳥岩楼」は、東映の京都撮影所で時代劇を撮っているときに教えてもらって行ったお店。鶏鍋の、あの白濁したコラーゲンたっぷりのスープを啜るのが幸せです。その数日後は、お昼に親子丼をいただきました。黄色い卵がトロトロで、少し甘味が強めだけど、それがごはんとぴったり合うし、名物のスープも付いてくる。私の父は昔、大阪で京料理の修業をしていた板前で、その手料理を子供のときから食べていたから、京都のごはんが余計においしかったのかもしれません。

 板前の父のおかげで得したことはたくさんあります。まず、家の食事が豪華だった。店で余った中トロとかを子供のときから食べていましたし、料理のコツも教えてもらいました。ダシは、カスをちゃんと取るひと手間をかけるかどうかでガラッと味が変わるとか。作り方も、料理本のように「大さじ何杯」ではありません。たとえば醤油なら、垂らす速度と時間の目分量。味見をしながら、煮詰まる量も考えて作るから応用がきく。学校に持っていくお弁当で友達に絶対負けないのも自慢でしたね。
 そう、私は負けず嫌いなんです。小学校6年生のとき、家庭科の調理実習が鯖の味噌煮で、班の対抗戦をする予定でした。どんな手を使っても勝ちたくて、前日父に聞いたら、「煮る前に一瞬魚をお湯にくぐらせて臭みを取って。生姜も多めに入れなさい」と言われてその通りにしたら、めでたく一番になりました。
 これまでに食べた一番おいしい料理といえば、やはり父の作る料理、「里芋のあんかけ」です。里芋を茹でて裏ごししたものにウニを混ぜて、丸めて小麦粉をつけて揚げる。それにダシ入りのあんをかけて、ワサビをのせて食べます。ネットリした里芋の食感と、油の香ばしさといったら……。この味だけは、一度食べてもらわないことには伝えようがありません。

 

 

四川料理
スーツァンレストラン

鉄人・陳建一氏がプロデュース
本場の味を守る創作料理の数々

●日本に四川料理を広めた陳建民氏の息子・陳建一氏がオーナーシェフを務める四川飯店グループの店として2001年に開店。本場・四川の味を大切にしつつ、日本人の味覚に合う新境地の料理をつくり出してきた開拓者精神は健在。
●東京都渋谷区桜丘町26-1セルリアンタワー東急ホテル2F
TEL.03-3476-3585
営業時間/11:30~14:00、17:30~23:00(LO 22:00) 無休 カード可 予約可 席数98(個室2)


  • 1.陳建一の麻婆豆腐2425円。豆板醤や香辛料は、オーナー自らが毎年四川省に赴き、製造工程を確認して空輸。豆腐は国産大豆を100%使用し、絹ごしでも木綿ごしでもない“麻婆豆腐専用”豆腐。山椒は痺れる赤(花椒・ホアジャオ)と香りが強い青(青花椒・チンホアジャオ)の2種類をお好みで。
  • 2.鱈場蟹のうま味たっぷりふかひれの姿煮7507円(100g)。コラーゲンに蟹の甘味が染み込んだ濃厚な味。鮮やかなオレンジ色の高級パーム油はビタミンも豊富。
  • 3.伊勢えびのチリソース(エシレバター包み)5313円。口に入れるとエビの中に包んであるエシレバター(発酵バター)が噴き出す。
  • 4.魅惑の黒酢スブタ2887円。柔らかい酸味と生野菜の取り合わせが絶妙な人気メニュー。

水炊き
鳥岩楼


町家風情たっぷり
水炊きのコクの深さに
酔いしれる

●店主・芝辻昭夫氏の義祖父が明治20年代に京都・祇園で創業。当初は鶏肉店だったことが鶏がらスープにつながったとか。昭和20年に現在の場所へ疎開した。
●京都府京都市上京区五辻通智恵光院西入ル五辻町75番地
TEL.075-441-4004
営業時間/12:00~14:00、17:00~20:00 木曜定休 カード可(親子丼のみの場合は不可)、水炊きは要予約、席数約30(個室あり)


  • 1.親子丼800円(ランチのみ)。やや小振りなどんぶりに、名物の鶏がらスープがつく。親子丼の肉はもも肉のみ。
  • 2.水炊き6000円。鳥の全身の肉と野菜などを煮る鍋に八寸がつく。コクとうま味たっぷりの乳白色のスープは、30kgの鶏がらを大鍋で5~6時間かけて煮出したもの。ポイントは、油とアクを丹念に取ること、途中で数回水を入れ替えることだとか。最後のおじやも楽しみ。磨き上げられた底厚の包金(銅製)鍋に歴史が感じられる。


 
 

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