ハーバード式仕事の道具箱 [145]
自分の中に眠る情熱を呼び覚ます方法
「弱点叩き」より「長所強化」のススメ
弱点を克服する努力をするだけでは成果は上がらない。
自分の強みを知り、仕事の中心に据える人こそが
爆発的なパフォーマンスを挙げるのだ。
自分の「強み」から
最大限の価値を発揮するには
仕事のパフォーマンスを向上させるということは、己の弱みを克服することではないのだろうか。『Go Put Your Strengths to Work: 6 Powerful Steps to Achieve Outstanding Performance』(2007)の著者、マーカス・バッキンガムによれば、その見解は正しくないようだ。優れたパフォーマンスを発揮する人は、自らの弱みではなく強みを見きわめて成長の土台とし、抜きん出るのだと彼は主張する。現在、バッキンガムは、カリフォルニア州で、強みを引き出すことをベースにしたコンサルティングやトレーニングを提供するマーカス・バッキンガム社を率いている。
では、強みとは具体的にどんなことをいうのか。自分がうまくやれることイコール強みではないと、バッキンガムは言う。「たまたま得意なことは、楽しんでいないかぎり消耗の原因になることがあり、ときに弱みとなってしまう」。
強みとは、自分に絶えず充実感とエネルギー、参加意識を与えてくれる労働活動のことをいう。バッキンガムが取り入れている調査によれば、強みを生かす仕事に就業時間のほとんどを使っている人たちのチームは、同じような仕事で、強みを生かしていない人たちのチームより高いパフォーマンスを発揮する。自分の強みから最大限の価値を生み出すためには、どうすればよいのだろう。
自らが生き生きする
活動とは何なのか
強みを見きわめることは、本人にしかできないと、バッキンガムは主張する。「自らを生き生きさせたり消耗させたりする活動が何なのか、最もよく知っているのは自分自身だ。他人の意見を聞く必要はない」。
まず、就業時間中のあらゆる活動について、遂行前、遂行中、および遂行後に自分がどのように感じるか書きとめよう。何かを始める前に、それを期待し、活動している間は集中でき、遂行後に充実感や高揚感を感じるなら、その活動はおそらく自分の強みといえるだろう。
バッキンガムは次のようなやり方を提案する。白紙のノートを用意し、最初の数ページの中央に縦線を引いて左右二つの欄に分ける。各ページの左欄の一番上に「楽しかった活動」と書き、右欄の一番上に「嫌だった活動」と書く。一週間、自分が職務の中で行うあらゆる活動を毎日、どちらかの欄に振り分けて書き込んでいくのだ。
自分が行うすべての活動とそれが引き起こす感情を、そのつどできるだけ具体的に記録しよう。たとえば、「照明部門の売り上げ数字を分析したとき、胸が弾むように感じた」「社内報のために新戦略についての記事を書いていたとき、不安な気持ちにかられた」という具合だ。
このリストを作成したら、「楽しかった活動」の中から、自分の中に最もプラスの感情を呼び起こす活動を三つ選ぼう。その三つこそが、あなたの最も大きな強みなのだ。
能力発揮のために
職責調整も必要
三つの強みを見きわめたら、次は、それらを生かせる仕事により多くの時間を使えるよう職責を調整することだ。バッキンガムは、それぞれの強みについて、次に記す四段階のアプローチを実行することを勧める。
(1)焦点を絞る
自分が今、強みをどのように、どれくらいの頻度で仕事に活用しているかを見きわめる。バッキンガムは、前述の著書で、ハイジというブランド・ディレクターの例を紹介している。ハイジは、自分の強みの一つを「優秀なホテルマネジャーのコンサルティングを手がけ、ナンバーワンにすること」だと見きわめていた。そして、リーダーシップ養成クラスで講義を行うときやコンサルティングの際に、この強みを活用するため、自分の時間の20%を関連する業務に割くことにした。
(2)強みを解き放つ
どのような状況で、どのような行動を取れば、強みを活用できるかを考えよう。たとえば前述のハイジは、ホテルのオーナーの要望を知るためにオーナー・グループと電話会議をすれば強みを生かせると気づいた。
(3)自己啓発する
強みをさらに生かすためのスキルやテクニックを身につける努力をしよう。ハイジの例で言うと、社内の別ブランドのブランド・ディレクターたちに、ホテルの業績向上のためにどのような取り組みをしているかを尋ねることにした。
(4)職務範囲を拡大する
強みに関する自分の事例を他人と共有するとともに、強みをさらに活用できるよう職務範囲を拡大するにはどうすればよいか考えよう。たとえばハイジは、次の週に別のブランド・ディレクターと会って、ホテルの実績を測定する方法について意見交換した。さらに、各マネジャーが属するホテルのコンサルティングを集中的に行うため職責をどう変えればよいか、上司と話し合った。
劇的に自分を変えるためには、仕事を強みのほうに徐々に押しやり、弱みから引き離すことだ。バッキンガムは「上司もおそらくそれを望んでいるだろう。それは成長のための責任を自分自身で引き受けるということなのだから」と語る。
では、自分を消耗させるが、職務にとってなくてはならない活動に関しては、どうすればよいのだろう。バッキンガムは次のような策を提案する。
まず、自分が弱みとする活動を強みとして代わりに引き受けてくれる人を探してみる。
アピール力で
新企画の女王に
さらに、強みをアピールし続けよう。それによって、弱みはどうでもいいことになるかもしれない。バッキンガムが挙げるのは、新しいプロジェクトやシステムを立ち上げるのは楽しいが、プロジェクト維持の仕事は退屈だと思っていたAT&Tの幹部の例だ。彼女は先に控える新プロジェクトや企画を尋ね回っては、進んで参加するという行動を取り続けた。その手法がきわめて上手くいったので、彼女の上司は、彼女が18カ月ごとに新しいプロジェクトを渡り歩く形でキャリアを築いていくことに同意した。今日、彼女は「新規プロジェクトの女王」と呼ばれているとバッキンガムは述べる。
自分の弱みは、強みを生かすための手段であるととらえ直すことも大切だ。たとえば、デザイン説明会は大嫌いだけれど、クライアントの力になるのが好きだという人の場合、説明会はクライアントをより効果的に手助けするための手段と考える努力をするとよい。「弱みは強みに変わることはないが、こうすることで弱みによる消耗を小さくしてくれる」と、バッキンガムは言う。
完璧な仕事はないという事実も受け入れよう。どんな職務にも、自分を消耗させるが、避けては通れない活動が含まれているものだ。弱みとする活動に使う時間を最小限に抑えることを目指そう。
自分の強みを実績への促進要因に変えるには時間がかかる。じっくり考えながら、自分の職責を必要に応じて変える勇気も必要だ。が、やるだけの価値はある。仕事時間の大部分を、自分の奥に眠る情熱を引き出す活動に使うことは、自分にとっても組織にとっても利益になることなのだから。










