ハーバード式 仕事の道具箱 [142]

“もの言う株主”の要求にどう対処するか

ヘッジファンドの攻撃をかわす策

 
 

企業の業績が低迷したとき、株主である
ヘッジファンドが経営介入する事例が増えている。
どう対処すべきか、そして幸せな介入はありえるのか。

 
 
ロビン・グリーンウッド、マイケル・ショア=文
text by Robin Greenwood and Michael Schor

 
 

投資家の介入は
株価に影響するか


 業績の悪い会社の経営陣に、ヘッジファンドが戦略転換を要求する可能性がかつてないほど高まっている。しかし、経営陣は必ずしも耳を傾ける必要はない。われわれの調査によると、こういった“もの言う株主”の要求に応えて戦略転換した企業は、他社に買収でもされないかぎり、おおむねマーケットを上回る株価上昇を実現することはできないものだ。
 ヘッジファンドは、同業他社より株価が低迷している企業を標的にする傾向がある。ファンドが投資したというだけで株価はある程度上昇するものだが、経営にもの申すことでさらに押し上げられると考えるファンドが増えている。
 1990年代半ば、ヘッジファンドは小規模な企業の経営にわずかに介入していただけだった。しかし、2006年には、経営介入事例の90%以上に絡んでおり、その対象の多くは大企業である。業績低迷によりヘッジファンドに標的にされる企業数そのものも増加、94年から06年の間に10倍以上になった。
 ヘッジファンドの経営介入は、株式の買い戻しや配当の増額要求から、取締役会の議席や戦略変更、事業部門の分割など、より難しい要求に及ぶことがある。標的にされた企業の経営陣は、そのようなことで株主価値は増大しないと主張し、こういった要求に抵抗することが多い。一方で一般投資家は、どちらの主張が正しいかと戸惑いながら傍観しているだけだ。
 われわれは、もの言う株主がアメリカ企業にかかわった94年から06年までのすべての事例についてデータを集めた。これらの事例における投資家の多くはヘッジファンドで、標的企業の株式の5%以上を取得して、その会社にいくつかの注文を突きつけていたのである。
 調査によると、こうした経営介入は、標的企業を他社に買収させた場合にのみ株主にとっての価値を生み出していた。買収を促すことができた場合、投資家はときに40%もの割増利益を手にしていたのだ。しかし、買い手を見つけられなかった場合、その会社の18カ月間の株価は、概してマーケットを上回っていない。失敗例の中には、株主が一方的な戦略改善を企業に押しつけたり、取締役会に議席を獲得しているケースも含まれている。
 たとえばパイレート・キャピタルは、ジェームズ・リバー・コールの株式の7・9%を取得、05年に株主価値を増大させるための「新戦略」を模索するため、投資銀行とコンサルタント契約を結ばせた。が、その後ジェームズ・リバーの株価は75%近く下落。結局、ファンドは06年末に持ち株比率を5%以下に減らすことになった。パイレート・キャピタルがジェームズ・リバーの取締役会で三議席も獲得していたにもかかわらず株価は下落したのだ。
 この結果は、驚くにはあたらないはずだ。“もの言う株主”は投資家であって経営者ではない。ヘッジファンドの真の能力は、過小評価されている資産を見つけることであって、その状態を正すことではない。標的企業を買収しようとする企業が現れなければ、もの言う株主は、その企業の経営のために必要な知識もさしてないまま、株だけを大量に抱えて困り果てるだろう。
 もちろん、ヘッジファンドの要求を頭から無視するべきだと言っているのではない。標的にされた企業の経営陣は、同意しがたい要求にしぶしぶ応じるか、それを拒否してカネがらみの泥沼の争いをするかという二者択一に直面する。場合によっては、何らかのかたちで譲歩することが最も賢明な選択かもしれない。
 さらに経営陣は、ヘッジファンドは株価が期待値より低迷しているときにやってくるということを忘れてはならない。その際、業績が期待を下回った理由や、株価が安値で取引されているのはなぜかといったことを、きちんと伝えることができない場合は、もの言う株主との対決を覚悟することになるだろう。そして、会社の支配権そのものが移転するかもしれない。

 
 
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