特集/全予測「働き方、生き方、稼ぎ方」

PART1.仕事篇 - 24

仕事に「社会的意義がない」と感じたらどうすべきか

 
 
まずは自分の仕事を「楽しむ」。
窮屈に考える必要はない
 
 
シブサワ・アンド・カンパニー 代表

渋澤 健

Ken Shibusawa
1961年生まれ。渋沢栄一5代目子孫。83年テキサス大学、87年UCLA大学MBA経営大学院修了。外資系証券会社やヘッジファンドなどを経て2001年より現職。経済同友会幹事、渋沢栄一記念財団理事。
梶山寿子=構成
 
 

「論語と算盤」の一致とは
現代のサステナビリティ

 社会的意義というと堅苦しく感じますが、そう窮屈に捉える必要はないのではないでしょうか。どんな仕事にも社会的意義はあるし、人を雇用し、富を創出しているだけで、企業は社会に貢献している。もう少し気楽に考えて、まず自分の仕事を楽しむことをお勧めします。

 成功している人には「人生を楽しんでいる」というオーラを感じます。成功したから楽しそうに見えるのではなく、人生を楽しむために行動しているから、それが実績になる。“頭でっかち”にならずにとりあえず行動してみること。宝くじも買わなければ当たりませんからね。

『論語』にも「これを知る者は、これを好む者に如かず、これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」とあります。物事を知ることは大事だが、知るよりも好きであること、好きであることより楽しむことがもっと重要だと説いている。「知る」や「好む」は孤独な作業ですが、「楽しむ」ことの延長には社会との接点がある。楽しそうにしていると「何やってるの?」と人が集まってくるんです。

 私は「日本資本主義の父」と呼ばれた渋沢栄一の孫の孫にあたります。といっても、以前は「先祖に偉い人がいた」という程度の認識しかありませんでした。親戚の人から「渋沢家には『投機をしてはならない』という家訓があったらしい」と聞いて、「それは都合が悪いなあ」と思いました。独立するまで主に外資系で金融市場の仕事をしていたので(笑)。

 2001年に独立するにあたり、はじめて渋沢栄一が遺した言葉に興味を持ちました。驚いたのは、その思想が100年経ったいまも古びていないこと。彼の説いた「論語と算盤」の一致、倫理と経済の融合は、いまで言うサステナビリティ(持続可能性)のことですからね。

「楽しむ」ことに関して、渋沢栄一はこう述べています。

「たとえその事業が微々たるものであろうと、自分の利益は小額であるとしても、国家必要の事業を合理的に経営すれば、心は常に楽しんで事に任じられる」

 それが社会にとって必要な仕事だと信じて臨めば、心から楽しめるということ。「自分は社会の役に立っている」と信じることが重要なのです。

 知人に聞いた話ですが、あの鉄の女・マーガレット・サッチャーがこんなことを言ったそうです。「企業経営や政治、すべての仕事に共通することがある。それは社会を幸せにすることだ」。この言葉は私の胸にもずしりと響きました。

「このままでいいのか?」と悩んでいる人は、会社の人間関係を離れた場所から自身を眺め、自分の仕事を再評価してみてほしい。繰り返しますが、富を生み、そのお金を社会に循環させることには、すばらしい社会的意義があるのです。

 社会貢献活動やボランティアを“逃げ道”のように使うのはよくないと思います。そんなに無理をしなくとも、組織のしがらみを離れれば、自然と「いい社会をつくらねば」という気持ちになるんですよ。

 モノが一気に普及する臨界点は13%なのだとか。思想も同じでしょう。善意ある人を集めれば何かが起こる、臨界点を超えて世の中が変わる、との期待を込め、「プロジェクト13%」という活動をはじめました。

 メンバーには保守的な金融機関に勤める人も多いのですが、組織の枠に縛られない場で話すと、押さえ込んでいたピュアな思いが出てくる。料理も政治も「おまかせ」が好きで主体的に行動しない日本人も、気づきを得られれば動き出すのではないでしょうか。

 
 
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