特集/全予測「働き方、生き方、稼ぎ方」
PART1.仕事篇 - 21
勤務先が競合他社と合併した。どうやって仕事に取り組むべきか
絶対負けないで」と言われたものです
「野武士」と「次男坊」
なぜ一つになれたのか
よくJFEグループの統合は「幸福な合併」の代表のように言われますが、2001年の発表時はそれほど楽観的なムードはありませんでした。曰く、「野武士の川鉄」と「次男坊のNKK」とが足並みを揃えるのですから並大抵のことではない。実質的な統合までの2年間、将来のビジョン、戦略についての意思統一を図るため議論を重ねたものです。今でいうPMI(Post Merger Integration)の柱となったのは「収益第一主義=価値創造第一主義」という理念でした。すなわち、それまで所属していた会社の利害を超越し、新会社の利益・発展を第一に考え、合理的・公正な行動を取ることです。
旧聞に属しますが一例をあげましょう。02年、統合を目前に溶鉱炉の合理化案が俎上に載りました。旧川鉄は水島(倉敷市)に四基、千葉に二基、旧NKKは福山に四基、京浜に一基が稼働中でしたが、統合後の業務効率を最大限にあげるには二基を停止する必要があった。溶鉱炉は製鉄所のいわばシンボルです。やはり受け容れ難い気持ちがあったのか、両社が西と東に分かれ四つ巴となった揚げ句に暗礁に乗り上げてしまいました。しかしそこで留まるわけにはいかない。会社の収益をあげることを念頭に「川鉄が二基止める」と決断を下しました。もはや川鉄もNKKもない。あるのは新会社の収益、すなわち新しい価値の創造なのです。
統合発表直後は社員や社外OBが「NKKに絶対に負けないように(統合)してください」と訴えに訪れたものですが、新会社を作る傍から何の勝ち負けでしょうか。そんな拙い話はない。
合併という事態に直面した場合は決して旧来の手法や技術に拘泥するべきではありません。一般管理職、一社員にかかわらず、自分は新たに誕生する会社に再就職するのだと、そして新会社の収益と価値創造に自分は如何に貢献できるのかを考えるべきでしょう。
統合に際し経営陣は「万機公論に決すべし」を大原則として統合プロセスの基本理念や統合後のビジョンを明らかにし、全社員と共有する必要があります。JFEの場合は「オンリーワン商品、ナンバーワン商品の創造」「収益は必須欠くべからざる固定費」「ROS(売上高当期純利益率)=10%」など基盤となる収益=価値創造第一主義に加えて、コンストラクティブ・コンフリクト(創造的衝突)ということを日々、伝え続けてきました。
新しい価値観を新しい構成メンバーと共有するには、統合プロセスで生じる衝突を避けるのではなく、まず相手への尊敬を基本とし、長所を評価したうえで意思の伝達、すなわちコミュニケーションを図らねばなりません。最初から相手を侮るようでは誠実な話し合いなど論外です。その際には個人のアカウンタビリティが非常に重要になる。常に新会社の収益と自らの業務とを関連付けながら、合理的かつ論理的に説明する責任と能力。従来、こうした説明責任は経営者に求められるものでしたが、グローバル経済の中でM&Aに曝されている昨今、一サラリーマンにも必須の能力です。同業者、異業種間のM&Aだけではなく社内の統廃合という事態もありうる。職場内では「あうん」の呼吸で済んでも新局面では通用しません。相手の理解を尊重したねばり強いコミュニケーションが必要です。
合併の影響はそれぞれの立場で多種多様です。しかし新会社の収益に貢献するという一点において、全社員が非常にシンプルな基盤を共有できる。個々人が因習に囚われることなく価値創造へと自らを解放すること。それが第一でしょう。
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