特集/全予測「働き方、生き方、稼ぎ方」

PART1.仕事篇 - 19

注意しただけで社内の「セクハラ対策室」に駆け込まれたら

 
 
毅然とした態度で対応し、
過ちがあれば素直に謝罪する
 
 

弁護士
今津幸子
Yukiko Imazu
1968年、神奈川県生まれ。91年慶應義塾大学法学部卒。96年弁護士登録、アンダーソン・毛利・友常法律事務所に入所。労働案件を数多く手がけている。2005年同所パートナー就任。07年より慶應義塾大学法科大学院准教授を務める。


伊藤 晋(本誌編集部)=構成

 
 

ビジネスの現場に
容姿や下着の話は不要


 セクシャルハラスメント(セクハラ)とは、おおまかにいって「職場における相手方の意に反する性的な言動」です。対象となるのは「言動」ですので、行為を伴わない言葉だけのセクハラでも裁判で損害賠償を認められたケースがあります。

 セクハラについて非常に敏感に対応する企業が増えた一方で、残念なことに、今でも「その程度のことでうるさくいうなよ」と、職場の潤滑油といわんばかりにセクハラが横行している現場もまた少なくありません。

 注意しただけで社内のセクハラ対策室に駆け込まれたとなると、まずは注意した上司が性別による差別を意図して部下を男女で異なる取り扱いをしたことに対する苦情が考えられますが、その場合は、むしろ男女雇用機会均等法(均等法)の直接差別が問題となりうるでしょう。

 あるいは、服装を注意するなど性的なことに関係しそうな指摘を行ったとか、注意の際に相手に不必要に触れたり性的な発言をしたことなども考えられますが、この場合は注意の仕方そのものに問題があった可能性が高いでしょう。女性の服装等を注意することはセクハラになるのではないかと心配する方もいますが、あくまで論理的に、毅然としたビジネスライクな態度で注意をすればよいのです。

 男女の性差による役割分担とセクハラはまったく別個のもの。容姿や下着の話は職場に必要ありません。また「結婚はまだ?」といった話は均等法上はセクハラとはなりませんが、そういうことを悪気なくいいがちな人は要注意です。

 ところで、セクハラの被害者は女性だけではありません。昨年4月の均等法改正により、これまでは女性に対するセクハラしか想定されていなかったものが、男性に対するセクハラも均等法上の規制対象となりました。職場の懇親目的を理由に、上司が嫌がる男性部下をキャバクラのようなお店に無理矢理連れていくと、セクハラだ、と部下から苦情が出ることも今後は大いに考えられるでしょう。

 雇用主である企業の責任がより明確にされたのも均等法改正の大きなポイント。企業はセクハラ防止のための対策を講じる義務があり、セクハラを許さない方針の周知はもちろん、相談窓口の設置、相談に対する迅速な対応等が求められます。

 被害者がセクハラを受けたことを理由に慰謝料請求の裁判を提起した場合、ほぼすべてのケースで加害者とともに雇用主としての企業も提訴の対象とされ、加害者だけでなく企業に対しても慰謝料の支払いが命じられます。また、裁判が世間で報道されれば「○○会社事件」などと呼ばれ、レピュテーションリスク(否定的な評判が周知され企業のブランド価値が悪化するリスク)となります。会社は真摯に対応せざるをえません。

 部下にセクハラ対策室に駆け込まれたらどうすべきか。部下にセクハラと受け取られてもやむをえない言動があったのなら、事実を素直に認めて謝罪し、その後の言動を改める必要があるでしょう。

 仮に裁判となった場合、加害者側が「相手は嫌がっていなかった」と抗弁しても、加害者が上司という社会的に優越的な地位を背景に迫り、被害者が事実上拒絶できなかった、と認定される可能性は十分あります。

 また裁判を避けるために話し合いで解決しようとしても、その場合の解決金は裁判での損害賠償額以上となることも多く、こじれていいことは何もありません。

 セクハラの多くは、職場におけるコミュニケーション不足から生じる問題。職場でも性別を問わず、相手の立場を尊重する言動を常に心がけたいものです。

 
 
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