特集/全予測「働き方、生き方、稼ぎ方」

PART1.仕事篇 - 15

競争力を失った商品で
売り上げを立てるためにはどうすべきか

 
 
商品に愛着を持ち、
その魅力をきちんと伝えていく
 
 

ホッピービバレッジ副社長
石渡美奈
Mina Ishiwatari
1968年、東京都生まれ。90年立教大学文学部卒業後、大手食品メーカー、アルバイト経験を経て、97年コクカ飲料(現ホッピービバレッジ)入社。著書に『社長が変われば会社は変わる!』(阪急コミュニケーションズ)がある。


斉藤栄一郎=構成

 
 

物流トラックを、
走る広告塔「ホピトラ」に


 私が家業のホッピービバレッジに入社した当時、看板商品のホッピーの売れ行きは、低迷していました。一度消費者を集めて調査したところ「古くさい」とか「暗い」などさんざんな結果が返ってきたのです。

 実は、ホッピーはもともと売れていた商品でした。ある有名な歌手が「苦しい時代を支えてくれた」思い出の飲み物と語ってくれたように、夢を語り合える飲み物、頑張っていた自分を思い出せる飲み物として、昔からのファンも多くいたのです。ところが、私が入社した1997〜98年頃、会社は壊死状態で、誰も夢を持って働いていませんでした。築き上げた財産を食い潰し、今が良ければいいという考えが蔓延していたのです。

 ヒット商品の成功体験にあぐらをかいてしまった典型例です。積極的な営業活動もなかった。本当にホッピーを愛してくれるお客様や飲食店があったにもかかわらず、そういう人々の顔をまったく見ようとしていなかった。せっかくブランド力があり、商品も陳腐化していないのに、売れない。原因を考えてみると二つの大きな阻害要因が見つかったのです。

 まず取り組んだのは、組織の再活性化です。現状維持派、やる気のない社員には辞めてもらい組織の“血の入れ替え”を図りました。ホッピーの魅力をみんなに知ってほしいという、トップの方針を理解し、共通の価値観と情熱を持って一緒にやってくれる人だけを雇い入れたのです。

 同時に着手したのは、ホッピーの売り方、営業面です。それまで「ホッピーの営業マンは、ちっとも顔を見せない」との声がかなりあったのですが、具体的な行動は起こしていません。顔の見えない営業で売れるわけはないのですが、現実として営業担当者の数は限られている。

 そこで思い切って、宣伝広告に手をつけてみたのです。しかし、巨額の広告宣伝費を投下する力はありません。そこでまず99年からWeb上でブログ日記を書き始めたところ、人気が出て多くの読者を集めたのです。

 ある日のことです。大阪にホッピーのおいしい店があるとの情報が読者からあり、早速足を運んだところ現地で大歓迎を受けたことは感動的でした。営業圏外の大阪にもホッピーを愛してくれている人々がたくさんいたのです。この経験に手応えを感じ、全国に営業マンを置くほどの余裕のないわが社に最適なWebを使った営業ツールを最大限利用することにしたのです。

 一方、テレビや雑誌の取材も積極的に受けました。とにかくホッピーの魅力、上手な飲み方、おいしい店などを伝えることに注力しました。ホッピーの三代目として私が広告塔になると腹をくくったのです。

 さらに新しい宣伝の可能性を探し続けたところ、目に留まったものがありました。車体を広告にしたラッピングバスです。早速、ホッピーの物流トラックを、走る広告塔「ホピトラ」に変えたところ、マスコミでも話題となり、ホッピーへの興味を高めることに成功したのです。

 たとえ熱烈なファンがいる商品でも、それにあぐらをかけば、たちまち売れなくなる。売れない商品を嘆いてばかりいても仕方がない。むしろ、売れない理由は、組織の硬直化にあったり、伝え方にあったりするのではないでしょうか。

 商品に愛情を持ち、その魅力をきちんと伝えていく。そしてもう一度自分の足元を、しっかり見つめ直してみる。そうした地道な毎日の積み重ねからしか、良い結果は生まれません。

 
 
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