特集/全予測「働き方、生き方、稼ぎ方」
PART1.仕事篇 - 12
一度叱っただけで出社拒否になった部下をどう扱うべきか
人格否定ではないことを伝えよ
上司が叱っただけで部下が会社に来なくなるようなケースでは、根本に上司・部下双方のコミュニケーションに問題があることが考えられます。
「正しいことを言って何が悪い!」
部下に非があるのは明らかだといって、こんな一方的な態度で開き直る上司をしばしば見かけます。しかし、仮に自分の言い分が100%正しくても、相手に伝わらなければまったく意味がありません。
そもそも、上司が普段から「この人はどういう価値観を重視しているか」を把握しておけば、“地雷”を踏まずに済んだはず。逆にその人の価値観を知っていれば、的確に動機付けを与えられるでしょう。そういったことを無視し、自分の正当性だけを振りかざすような上司は管理職失格と言わざるをえません。
部下を叱るというコミュニケーションの場で起こりがちな問題は、そこに上司の感情が入りすぎてしまうことです。
基本的に人は感情をぶつけられると苦しく感じるもの。ただし、受け取る側が理解し、コントロールできる範囲の感情であれば心地よく感じることもあります。体育会系で先輩に殴られても感謝しているような人はその極端な例でしょう。
つまり、上司のぶつける感情が受け取る側のヒットゾーンに入るかどうかで、部下の受け止め方は変わってきます。従って計算された演出として強く叱るのはアリだと思いますが、感情に流されるがまま叱りつけることは、特にデリケートな人が相手の場合、大問題です。
ところが感情そのものを消し去ることは非常に難しく、薬でも使わないかぎり、そんなことは不可能です。ではどうすればよいかというと、感情の背景にある自己の思考をコントロールするしかありません。相手が置かれている状況を冷静に情報収集しながらロジカルに考えられれば、感情の暴走は最小限に留められます。
また、腹式呼吸には感情を和らげる効果があります。感情が暴走しそうなときは、まず一呼吸置くことです。
表面ニコニコでも
腹の中はグラグラかも
一方、叱られる部下の側の問題として多いのは、極端な考え方をすることです。未熟な人は白か黒かの二分法で考えがちで、成熟した人のようにグレーな思考ができません。いきなり出社拒否する人は上司に自分の人格を全否定されたと極端に受け止めて、過剰反応した結果とも考えられます。
若い人を叱るときは極端な思考に走らないよう、その後のフォローが重要です。私たち精神科医も治療後に「あくまで私が注意したのは問題点であって、それはあなたに期待しているからなんですよ」と患者さんにフォローを入れたりします。
そして、お互いの言いたいことがちゃんと伝わっているか、細かく確認することが大切。若い人が黙って説教をニコニコ聞いていたとしても、本当ははらわたが煮えくり返り、コミュニケーションが断絶していることもあるのです。
ただ、すぐに出社拒否になってしまうようなケースでは、もともとメンタルの病気を持っていたり、なかにはパーソナリティ障害といって当たり前のことを言っても過剰反応する人だったりする場合があります。
具体的な対応としては、上司が本人に最低限の連絡を取りながら産業医に対応の仕方を相談するのがよいでしょう。最近は職場に産業医や非常勤の精神科医がいることが多いですから、そこに相談を持っていく。そのアドバイスに基づいて対応すれば上司が一人で悩みを抱え込まずに済み、仮に問題が起こっても「会社の問題」となり、上司が一人で責任を被るような事態も避けられるはずです。
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