特集/全予測「働き方、生き方、稼ぎ方」

PART1.仕事篇 - 11

「○○さんみたいになりたくない」と面と向かって言われたら

 
 
「同感。俺も自分みたいには
なりたくねえや」って答えもいい
 
 

クリエーティブディレクター
箭内道彦
Michihiko Yanai
1964年、福島県生まれ。東京芸術大学美術学部デザイン科卒業後、博報堂に入社。2003年「風とロック」(www.kazetorock.co.jp)設立。主な仕事に、タワーレコード「NO MUSIC,NO LIFE.」キャンペーン、資生堂「uno」など。


荻野進介=構成

 
 

金髪に追いつくために
仕事をする!


 もしそう言われたら、速攻、謝るんじゃないでしょうか、「ゴメン」って(笑)。もしくは、聞こえなかったふりして、死んだような目で相手の顔を見つめる。「同感。俺も自分みたいにはなりたくねえや」っていう答えもいいですね。

「何で?」と聞き返したり、「俺は俺だ。そんなこと言われる筋合いはない」って怒ったりは絶対しないでしょう。人と衝突するのは面倒くさいし体力が要る。そのうえうまくいく仕事も、うまくいかなくなりますから。

 博報堂時代、頭を金髪にして、ど派手な服を着ていました。そんなふうにしたのは、弱い自分を隠すためです。金髪なのに、作っているものがつまらなかったら、かっこ悪いですよね。先に金髪にして、それに見合う面白いものを作らなきゃ、と自分を追い込もうと思ったのです。俺はそういう目的と戦略があったから、やったんであって、それがない人がいきなり金髪にするのは危険です(笑)。

 もうひとつ、金髪にすれば、「そんなかっこうだったら、クライアントにも連れていけないじゃないか」と上司に嫌われ、干され、結果的に放っておかれるのでは、とも思っていました。現実その通りになりました。会社の中で優等生にしていると、周囲から引っ張りだこで都合よく使われ、自分が本当にやりたい面白い仕事にありつけなくなるんです。それはどうしても避けたかった。

 金髪にしたのが入社八年目。それから、会社に頼み込んで、後輩もいなければ上司もいない社内フリーターの身分にしてもらいました。ほとんど出社せず、会議もよくサボっていました。社内ではなぜか私の机だけ、窓の方向を向いていました(笑)。今考えるとよく許してくれたなあ、と思います。

 そんな私がなぜサラリーマンをやってこられたか。仕事の成果を出さなければならないのはもちろんですが、それに加え、上司の上司である役員と親しかったのが功を奏しました。ちょうど『釣りバカ日誌』の社長とハマちゃんの関係です。実家の商店でずっと接客の手伝いをしていたり、寝たきりの祖父の介護をしていたりしたので、もともと年上の人と話すのは好きなんですが、そういう偉い人は本音で相手してくれる人が社内にいなくて、寂しい思いをしているので、うまくそこに付け入ったんです(笑)。

 たとえば、その人のいいところを正面からちゃんと褒めたりね。広告屋ですから、当然相手のいいところを見つけたり褒めたりするのはうまいんです。そして何よりこの金髪と派手服。役員さんたちは「こういう奴が社内にひとりくらいいてもいい」となるんです。異端児を理解し、庇護する自分が嬉しいのかもしれませんね。

 このときに肝心なのが腰の低さと礼儀正しさ。「こんな外見なのに、案外、しっかりしているんだな」と思ってくれること。第一印象と第二印象のギャップですね。こういう場合もこの外見が役立つんです。

 最近、若い人から「俺って箭内さんに似てるんです」ってよく言われます。誰もできなさそうなことをやっているからではなく、誰もができそうなことを先頭になってやっているからだと思います。なかには「箭内さんって俺みたい」っていう失礼な奴もいる。倍も年下の人間と今の自分が同じってことですよね。ちょっと前は、カチンときたりもしたんですけど、最近は「そうか。嬉しいよ」という言葉が自然に出てきます。俺も大人になったのかなあ。

 
 
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