特集/全予測「働き方、生き方、稼ぎ方」

PART1.仕事篇 - 10

プレーイングマネジャーに仕事を抱え込ませないためにはどうすべきか

 
 
自分の能力を反省し、
上司の仕事ぶりを盗んで努力せよ
 
 

富士ゼロックス社長
山本忠人
Tadahito Yamamoto
1945年、神奈川県生まれ。山梨大学工学部機械工学科卒業後、68年同社に入社。商品開発センター長、 開発生産統括本部長などを経て、2007年 6月より同社社長兼富士フイルムホールディングス取締役。同社初の技術系社長である。


岡村繁雄=構成

 
 

名選手必ずしも名監督にあらず


 なぜ、古田敦也氏率いるヤクルトスワローズは、セリーグで最下位に終わったのか。選手兼監督としての手腕に期待を寄せるファンも多かったに違いない。

 もちろん、野球に勝ち負けはつきものだ。しかし、成績不振の裏には選手を適材適所に起用できなかったことや、ベテランに代わる若手が思うように伸びなかったことがあるのかもしれない。「名選手必ずしも名監督にあらず」といわれるが、名選手を現場の社員、名監督をマネジャーとして置き換えると、ビジネスの世界にも通じることではないか。

 一つの組織をまとめるマネジャーには、三つの能力が必要だと私は考える。

 まず、一つは目標構築力である。組織のリーダーとして実績をあげるためには、まずそれを取り巻く環境を知らなくてはならない。顧客が今求めていることは何か、ライバルはどのような戦略を持っているか、社内の組織とはどう連携すべきか……。こうしたことを理解してこそ、達成すべき目標を描くことができるのである。もし、組織のマネジャーが現場社員と同じような仕事を行っていては、周りの環境は見えなくなる。

 第二は組織連携力である。当社のマネジャーには、チーム長あるいはグループ長と呼ばれる層がある。チーム長はおおむね30代前半、グループ長は30代後半から40代前半で任命されることが多い。彼らに必要なのは、各プロジェクトにおいて組織横断的に集まったスタッフを束ね、臨機応変に運営していく力である。昨今、最も必要とされる役割だ。

 私は入社以来、技術畑を歩み、30代初めでプロジェクトマネジャーとして高速複写機の開発を任された。100人の社員を率いて2年半で製品化をめざすプロジェクトである。そこでの仕事は、顧客や営業部門の声を聞き出し、開発コンセプトをまとめることから始まる。プロジェクトを計画どおり推進していくには、まず自身が率先垂範して技術提案を行っていくリーダーシップが不可欠だったし、プロジェクトの進捗状況の「見える化」も必要だった。

 今や当社のプロジェクトは年々大型化してきている。関わる人数も延べ200〜300人にのぼり、その専門性も非常に多岐にわたる。また、従来なら開発に2年を費やしていたものも、1年に縮めるスピード、変革が要求される。社内だけでなく、社外とのコラボレーションを行う機会も増えた。主力商品である複合機の高速化・多機能化により、競争環境が激変したことがその一因だ。

 こうした背景もあり、マネジャーには、他の組織や企業との調整弁としての役割が求められるようになった。仕事を抱え込むわけにいかなくなったのである。

 もう一つは、部下育成力である。私の経験から言えば、こと技術者というのは、自身の技術の錬磨に力を注ぐあまり、後進を育てることに無関心な人が多い。組織として考えた場合、これは大いにマイナスだ。ある程度権限を譲渡することによって、部下は育つのである。

 では、マネジャーに仕事を抱え込ませないためには、どうすればよいか。

 トップマネジメントとしてできることは、人材リソースの配分を見直すことである。プロジェクトの途中でスタッフが入れ替わっても問題がないように、能力の標準化をしていくことも大切だろう。

 上司が仕事を抱え込んでいる場合、部下はまず自分の能力を反省すべきである。上司の仕事ぶりを盗み、彼に追いつくために努力をする。能力が備わってきたら、自分に仕事を任せてもらえるよう進言しなければならない。

 
 
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