特集/全予測「働き方、生き方、稼ぎ方」

PART1.仕事篇 - 8

上司から消費期限の改ざんを命じられたらどうすべきか

 
 
「告発したら報復措置を受けるのでは」
という心配は無用
 
 

国広総合法律事務所
弁護士
國廣 正
Tadashi Kunihiro
1955年、大分県生まれ。東京大学法学部卒業。86年弁護士登録。94年に独立。企業の危機管理に関して厚い信頼を寄せられる。共著書に『なぜ企業不祥事は、なくならないのか』など。


岡村繁雄=構成

 
 

 毎日のように消費期限改ざんや製造日の偽装といった事件が、新聞やテレビをにぎわしている。それだけ多くの工場では、いまだに自社の偽装を放置しているのだろう。

 しかし、あなたが偽装の指示や圧力を受けたとしたら、勇気を持って「おかしい!」と声を上げてほしい。上司は「これまで問題になったことはないから」といいくるめようとするかもしれない。でも、時代は変わったのだ。

 上司の命令に抗しきれずに、その場では自分の意に反して不正に手を貸してしまうこともあるかもしれない。しかし、その後、すぐさま社長へ直訴してほしい。比較的大きな企業に勤めている人であれば、組織内部に通報窓口が設置されていたり、法律事務所と相談できるホットラインがあるだろうから、そこに不正の事実を伝えればよい。

 そうした勇気ある行為によって企業の偽装体質が改まるのがあるべき姿であるし、現にそのような例も多い。しかし、そうはいかない現実もある。「いつかわかってもらえるのではないか……」という期待は無惨にも裏切られることが意外と多い。そうなると、残された手段は官公庁やマスコミへの内部告発ということになる。


不利益処分は受けない
内部告発者


 そんな内部告発の窓口の一つが農林水産省の「食品表示110番」で、ここへの告発の件数は劇的に増加している。ただし、告発する社員にしても、最初は悩み、迷っているのだろう。不正を指示されたり、不正の事実を知ってから数カ月あるいは1年以上たってからの告発が多いようだ。

 でも、告発は一刻も早く行いたい。告発に踏み切るまで、おそらく、会社は消費者をごまかし続けるだろう。しかし、誰か関係者の告発などで、偽装はいつか必ず露見する。そして、ごまかしの期間が長いほど非難は強まり、消費者は急速に離れ、経営は行き詰まる。牛肉偽装事件で会社が消滅に追い込まれた雪印食品の例を想起すれば、容易に想像がつくはずである。

 社長に直訴したり、外部の窓口に告発したら、「左遷されたり、減給されるなど会社から何らかの報復措置を受けるのではないか」という心配は無用だ。なぜなら、2006年4月から施行されている「公益通報者保護法」によって守られているからである。会社側は、内部告発者に対して解雇や減給など不利益な処分はできないのだ。

 付言すれば、内部通報や告発をした一般の従業員が仮に上司の命令でやむなく不正に手を貸していたとしても、不正競争防止法や食品衛生法違反などで逮捕されることはまずない。

 規制緩和が進み自由競争の社会へシフトしていくなか、企業に最も強く求められているのは“ルール順守の精神”だ。簡単にいえば、企業は嘘をついてはならないということである。消費者が自己責任で商品を選択しようとしても、正しい情報が表示されていなければ誤った選択をしてしまう。だから、商品の虚偽表示は自由競争の前提を崩す悪質な行為と評価され、企業は厳しい制裁を受け、存続すらできなくなることも多い。

 消費者の信頼を失ってからでは手遅れである。できるだけ早く、膿は一気に出してしまったほうがいい。企業経営に完璧はなく、誤りはつきものだ。ミスや不正行為もゼロにすることは、おそらく不可能だろう。起きてしまったら、いち早く事実を公表して、謝罪をする。そして、企業の体質改善につなげるしか選択肢はないのだ。

 
 
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